- 2025/12/05 掲載
【誰でもデータ職人】Excel・Slackが“チャットだけ”でプロ級「分析ツール」に激変(2/3)
VLOOKUPにさようなら、“チャットのみ”で操る新世代Excel
Slackがもたらす“即時アクセス型”のデータ活用が広がる一方で、個々の担当者が日常的に触れるツールとして最も影響が大きいのは、やはりExcelでの分析作業だ。「前年同期比で売上が伸びている商品は?」経営会議や上司から投げかけられるこの簡単な質問に対し、これまでは多くの労力と時間が費やされてきた。
販売データをシステムからExcelにダウンロードし、日付や商品コードを整形。前年と当年のデータを突き合わせ、VLOOKUP関数やピボットテーブルで集計して、伸び率を計算する。さらに条件付き書式やグラフで可視化し、PowerPointに貼り付けるといった具合だ。
この作業負荷が、現場の思考と意思決定の質を阻害してきたことは否めない。
しかし今、ExcelなどのデータツールとAIの統合が進んだことで、状況は変わりつつある。複雑な関数式や集計作業はAIに任せ、ビジネスパーソンは本来注力すべき「数字の意味を読み解く」作業に集中できる環境が実現しつつあるのだ。
たとえば、2024年11月に一般提供が開始されたCopilot in Excel(with Python)では、これまで専門知識がなければ扱えなかった高度な分析が、まるで隣にアナリストが座っているかのように、日本語で問いかけるだけで実行できる。
「相関関係を視覚的に見せて」と指示すると、ヒートマップ(データの分布や傾向を色で表したグラフ)やバイオリンプロット(データの分布状況を示すグラフ)といった複雑なグラフが自然言語だけで自動生成される。
さらに、データを集める手間もほぼ消えつつある。
「先月の営業実績をまとめて」と指示すれば、SharePoint上の関連ファイルから必要な情報を自動で収集し、整理された表として提示してくれる。Power Query(データ取得・整形のための機能)との連携により、複数のExcelファイルからデータを統合する作業も、ファイル名を伝えるだけで完了するようになった。
さらにExcel作業でよくある誤字脱字や半角・全角、表記のゆれなどいった“人手では気づきづらい細かなミス”にもAIが対応し始めている。
実際に住友商事の事業部署では、ExcelでCopilotを活用し、物件リストの物件名や住所の確認、半角・全角などの記入形式を正規化する作業を高速化。これまでは、社員が一項目ずつ確認していたという。
Tableau・Power BIもAIで大きく進化
ExcelやSlackでのAI活用に続き、より本格的なBI(ビジネスインテリジェンス:企業が持つ膨大なデータを収集・分析し、意思決定に役立てる手法や技術)ツールの世界でも革命が起きている。「売上推移を円グラフで」と自然言語で指示するだけで、TableauやPower BIが瞬時に美しいビジュアルを生成する時代が到来した。Power BIでは、MCPサーバ(Model Context Protocol)という新技術により、自然言語での対話型分析が劇的に進化している。「このダッシュボードの問題を診断して」と依頼すれば、AIがワークスペースを探索し、ビジュアルを検査して問題を特定。データセット内の列名のスペルミス(ReptitionsではなくRepetitions)まで発見するという精度の高さだ。
従来の「一問一答」型のAI分析とは異なり、MCPサーバを活用した新しいアプローチでは、AIが複数のクエリを実行して文脈を理解し、より深い洞察を提供する。誤った結果に遭遇した場合は代替アプローチを試み、Webサーチや文書情報など外部コンテキストも活用して回答を充実させる仕組みとなっている。
一方、TableauもAgentforceとの統合により「Tableau Next」として大きく進化を遂げた。特筆すべきは、事前構築された3つのAIスキルだ。「Data Pro」がデータの統合・クリーニング・可視化を担当し、「Concierge」が自然言語クエリを処理して根本原因や次のアクションを提案。「Inspector」はリアルタイムでデータを監視し、異常を検知して洞察を能動的に提示する。
さらに興味深いのは、分析から即座にアクションへ移行できる点だ。Tableau Nextでは洞察を得た瞬間に、組み込まれたワークフロー機能を通じて具体的な行動に移せる。
またSlack内でTableau Nextを使えば、チーム会話の中で権限を考慮したメトリクスやダッシュボードを共有し、自然言語でデータについて質問すると、Agentforceが即座に正確な回答を返してくれる。
予測分析の領域でも大きな進歩が見られる。専門知識がなくても、需要予測や離脱分析を実行することが可能になっており、営業やマーケティングの現場スタッフが、データを基にタイムリーな判断を下せるようになりつつある。 【次ページ】【AI分析実践編】営業部門、総務・人事部門編
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