• 2026/01/26 掲載

AI推論とは?「40兆円市場」の勝者は?エヌビディアやグーグル「AIの主戦場」徹底解説(2/2)

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日本のAI推論戦略は? 押さえておきたい「ABCI 3.0」とは?

 ここまでは、AI推論市場の全体像を見てきましたが、次に日本におけるAI推論をめぐる動きを整理します。日本は現在、AI推論を支える計算基盤について、国内での運用(ローカライズ)と大規模化(スケールアップ)のために計画的な取り組みを進めています。

 その象徴的な事例が、2024年4月にエヌビディアと経済産業省(METI)が発表した戦略的パートナーシップです。エヌビディアは推論処理を優先するAIスーパーコンピューティング構想の支援を表明し、その中核となるのが「AI Bridging Cloud Infrastructure 3.0(ABCI 3.0)」です。

 ABCI 3.0は、ヒューレット・パッカード・エンタープライズが構築し、Quantum-2 InfiniBandネットワークを備えた数千のNVIDIA H200 GPUを搭載した大規模システムです。産業技術総合研究所(AIST)が中心となって開発を進め、経済産業省の経済安全保障基金を通じて支援されたABCI 3.0は、言わば日本の「ソブリンAI」プロジェクトの主柱です。

 ABCI 3.0のスペックは、AI演算性能で6エクサフロップス、一般的な計算性能で410ペタフロップス(注1)を誇り、超効率的なアーキテクチャーを備えています。将来的にはこのシステムが、日本の学術界、産業界、そして政府機関におけるAI研究開発を大幅に加速させるでしょう。この取り組みは、ローカライズされたインフラ、エネルギー効率の高い性能、主権的なデータ処理能力を通じて、AIの未来をコントロールするという日本の戦略的ビジョンを明確に示すものです。

注1:エクサ=10の18乗、ペタ=10の15乗(テラ=10の12乗)、フロップス=1秒間に浮動小数点演算を何回できるかというコンピューターの処理能力単位

富士通・NEC・ソフトバンク…国内大手はどう動く?

 国内大手企業の動向も見てみましょう。

 富士通やNECは、高度な推論エンジンを製品ラインに組み込んでおり、その活用例は工場の予測自動化から、金融におけるリアルタイムの不正検知まで多岐にわたります。

 ソフトバンクは、通信や小売全体で低遅延AI推論の実現を目指し、5Gとエッジコンピューティングのインフラを強化しています。特に自動運転や公共安全といった、リアルタイム性が求められる分野においては、クラウド中心処理への依存を減らすため、エッジベースの推論ソリューションへの投資を進めています。

 日本マイクロソフトは、高性能なAI推論フレームワークをAzure製品に組み込んでおり、生成AIやコンピュータービジョンモデルを効率的に運用したい企業を主なターゲットとしています。同社が進めている300万人のAI人材育成プログラムは、日本各地の開発者や企業における推論ツールの導入を促進し、イノベーションをさらに加速させるでしょう。

 これらの動きに共通しているのは、単なるAI導入にとどまらず、拡張性のあるAI推論の実装に向けた計算基盤と組織体制を構築しようとしている点です。高性能ハードウェア、ローカライズされたフレームワーク、次世代エッジの展開、いずれもAI推論競争において重要な要素です。日本はこれらに注力しながら、産業や政府における多様なユースケースに対応し、迅速かつ安全で効率的な推論処理を支える強固なエコシステムの構築を進めています。

「AIサーバ」「GPUaaS」…AI推論とともに成長する領域は?

 AI推論ベンダーは、AIチップやAIインフラなどの隣接市場から、新たな収益機会を見いだしつつあります。下表は、隣接市場の世界市場規模と年平均成長率を示したものです。

隣接市場の世界市場規模と成長率
隣接市場 2024年市場規模
(10億米ドル)
年平均成長率
AIチップ市場 123.16 20.4%(2024-2029)
AIインフラ市場 135.81 19.4%(2024-2030)
AIサーバ市場 142.88 34.3%(2024-2030)
GPUaaS(GPU as a Service)市場 6.54 26.5%(2025-2030)
(出典:二次調査、専門家へのインタビュー、MarketsandMarketsの分析)

 特にAIサーバ市場は、世界的には年平均成長率34.3%で拡大する見通しです。こうした市場において、国内の強固なデータセンター・インフラとAIワークロードを支えるハイパフォーマンス・コンピューティングの需要があり、日本には大きな可能性が秘められています。実際、富士通やNECのような企業は、増加する企業ニーズに対応するため、AI最適化サーバに積極的に投資しています。

 一方、GPUaaS(GPU as a Service)市場も26.5%で成長し、日本企業がコストと拡張性の観点からクラウドベースのAI推論にシフトするにつれて、けん引力を増すと予想されています。2024年春には、さくらインターネットがスタートアップや学術機関からの需要増加に応えるため、GPUクラウドサービスの拡大計画を発表しました。

 さらに、AIインフラとAIチップ市場も、日本が半導体の自給自足に戦略的に重点を置いていることや、国内のAIコンピューティング能力強化に向けて世界のプレーヤーと継続的なパートナーシップを結んでいることから、恩恵を受けることになるでしょう。こうした動きは、AIバリューチェーン全体における日本のポジションを強く固めるものとして期待されています。

この記事は、インドの市場調査会社MarketsandMarkets(マーケッツアンドマーケッツ)社の市場調査レポート「AI Inference Market by Compute (GPU, CPU, FPGA), Memory (DDR, HBM), Network (NIC/Network Adapters, Interconnect), Deployment (On-premises, Cloud, Edge), Application (Generative AI, Machine Learning, NLP, Computer Vision) - Global Forecast to 2030(AI推論の世界市場:コンピュート別、メモリ別、ネットワーク別、展開別、用途別、エンドユーザー別、地域別 - 2030年までの予測)」を基に同社が執筆した記事を株式会社グローバルインフォメーションが翻訳の上、再構成しています。

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