• 2026/01/27 掲載

なぜトランプはここまで踏み込むのか、ベネズエラ政変の裏にある「米国の経済戦略」(2/2)

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

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日米の「ここまで違う」エネルギー経済姿勢

 ひるがえって、わが国・日本の経済状態はどうだろう。

 まず、トランプ政権が目指すゴールと日本の現状を見比べてみよう。トランプが掲げたスローガンは「Make America Affordable And Energy Dominant Again」。つまり「アメリカを再び、手頃で、エネルギー支配的な国にする」だ。ここで重要なのは「dominant(支配)」という言葉である。彼らは、他国に頼らずに自国でエネルギーをまかなう「自立」の段階をとうに超え、世界中にエネルギーを売りつけてコントロールする「支配側」に回ろうとしている。

 そのために、米国はアラスカの自然保護区だろうが構わずドリルで穴を開け、一度は「オワコン」扱いされた石炭産業さえも「美しいクリーン・コール」と呼んで復活させた。さらに、世界の国々が結んだ約束事である「パリ協定」や国連の枠組みからも脱退した。世界中から「自分勝手だ」と後ろ指を指されようとも、自国の経済と国民の生活を守るためならアクセルを全開にする。それがトランプ政権における米国の選択だ。

 一方の日本は、エネルギー自給率が、2026年現在でわずか12.6%程度である。これは先進国クラブであるOECD加盟国の中でも最低レベルだ。

 食料自給率の低さはよくニュースになるが、国家の血液であるエネルギーが9割近く海外頼みという現状は、安全保障上の致命的な弱点と言っていい。

 また、前述したように、米国はパリ協定を脱退し、なりふり構わず「環境よりも経済と覇権」を追求しているが、日本は「2050年カーボンニュートラル(脱炭素)」という国際公約を今も守り続けている。もちろん、脱炭素は立派な目標であることはいまさら言うまでもない。ただ、資源を持たない国である日本にとっては、その過程で経済成長とエネルギーの安定供給を犠牲にしてしまわないように、細心の注意を払う必要があるだろう。

「AI時代」にエネルギー不足は“致命的”と言えるワケ

 さらに深刻なのが、AI(人工知能)時代への備えである。これからの世界では、AIとデータセンターが爆発的に普及し、電気の消費量が桁違いに増える。トランプ政権はこの未来を見据え、原子力発電所の安全ルールを見直し、新しいタイプの原子炉をどんどん作ろうとしている。電気がなければ、AI覇権争いに負けることを知っているからだ。

 しかし日本は、東日本大震災による原発事故を経験したこともあり、原発の再稼働にいまだに慎重な姿勢を崩さない。審査に膨大な時間をかけている間に、欧州では原子力回帰の動きが広まるなど、世界ははるか先へと行ってしまう。電力不足でデータセンターが建てられない国で、未来の産業が育つのは難しい。

 現代の社会において、エネルギーは人間の体における血液と同じだ。その血液の流れを自由にコントロールできる者が、世界の心臓を握ることになる。

なぜ「今こそ」エネルギー経済の“再考”なのか

 トランプ政権の手法は、ときとして強引であり、他国との争いを生むこともあるだろう。

 環境への配慮が足りないという指摘も、科学的には正しいのかもしれない。

 その手法の是非はともかく1つ言えるのは、トランプ政権は、「綺麗事」や「理想」とは異なる観点から、国民に「安いガソリン」と「豊かな暮らし」という目に見える経済的な利益を届けようとすることに、どの主要国以上に力を入れているということだろう。

 ベネズエラの油田に立つ巨大な掘削リグと、日本の省庁で積み上げられる「脱炭素」の資料。この対照的な風景が、エネルギーを持たざる国として、将来的に世界の荒波に飲み込まれていくことにつながってしまうのは避けたい。AI時代の「次の世界」への切符は、きれいな言葉ではなく、莫大なエネルギーによって買えるのだ。日本のエネルギー経済をどうかじ取りしていくのか。今回のベネズエラをめぐる出来事は、この問いと真剣に向き合う時期が到来していることを突き付けているのかもしれない。

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