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- 2026/01/25 掲載
『サピエンス全史』ハラリ氏「AIは人類初の競合知性、100年後に種絶滅も」
AIを制御できねば、人類種は進化の岐路に立たされ、主役の座から降りる可能性を指摘
AIは道具ではなく、人類が初めて相対する競合知性
ハラリ氏が一貫して強調するのは、AIをこれまでの技術史の延長線で理解することの危うさである。印刷機や蒸気機関、原子爆弾はいずれも人間の意思を拡張する「道具」にすぎなかった。しかしAIは、自ら学習し、判断し、次の行動を選択する主体、すなわち「エージェント」として振る舞い始めている。
世界経済フォーラムでの対談でも、AIは人類史上初めて、人間以外が意思決定と創造を担う存在になったと指摘した。
ハラリ氏の著書『サピエンス全史』では、人類が他の動物を圧倒した理由として、虚構を共有し大規模協力を可能にした点が挙げられる。国家、宗教、貨幣といった仕組みは、現実というよりも人間が合意した物語だった。
だがAIは、その物語を理解し、再構成し、場合によっては人間以上の速度と規模で生成する。これは人類が独占してきた進化上の武器が、初めて別の知性に渡りつつあることを意味する。
なぜAIは人類種の脅威となりうるのか?
ハラリ氏はAIを「異質な知性」と呼ぶ。人間と同じ感情や意識を持たない一方で、目標達成能力や情報処理能力ではすでに人間を凌駕しつつあるからだ。問題は、AIが善悪や幸福を理解していなくても、人間社会の中枢に入り込める点にある。金融市場、行政、軍事、SNSといった領域は、意思決定がデータとアルゴリズムに依存するほど、AIに適した環境になる。
ハラリ氏によると情報の本質は「真実」ではなく「接続」にあると整理されている。人々を結びつける物語は、必ずしも正確である必要はなく、むしろ単純で感情に訴える方が拡散しやすい。
AIはこの特性を利用し、怒りや恐怖を刺激する情報を最適化して生成できる。民主主義が前提とする対話と信頼は、こうしたアルゴリズム的最適化によって容易に損なわれる。
AIが人類の敵意からではなく、効率追求の結果として社会基盤を破壊する点に、ハラリ氏は最大の脅威を見ている。
【次ページ】100年後、人類のホモ・サピエンス種は絶滅する可能性も
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