- 2026/02/16 掲載
五輪の開会式でも…世界に広がる「AIヘイト」、“大AI時代”の「新・価値基準」とは(2/2)
【分析】AIだけ特別ではない、“新技術反発”の歴史から見る今
現時点では、これまで人間がやってきたこと(特に創造的な営みに対して)をAIが代替することに対して反発が多い。しかし、それもいずれ薄れていくと考える。
たとえば、将棋や囲碁の世界でも、もはやトップの棋士でもAIに勝てなくなっているが、その一方で、棋士がAIを研究に活用したり、対局相手としたりすることで進化を遂げ、さらに強くなっていく──という現象が起きている。
AI時代に限らず、人工物の存在が人間の創造的な活動に影響を与えてきた。日本の伝統芸能である歌舞伎は、人形浄瑠璃を起源としており、歌舞伎役者が人形の動きを表現することから発展していった。
ストリートダンスの世界でも、アニメやSF映画で見られるようなコマ送りの動きやスローモーションの動きを取り入れることで「アニメーションダンス」の分野が発展していった。
現時点では、「人間が作る表現を生成AIが代替している」という要素が強いかもしれないが、いずれ「生成AIの表現を人間が真似る」という現象も起きてくるだろう。興味深いことだが、AIに勝てなくなっても将棋は依然として人気があるし、現在においては、人形浄瑠璃より歌舞伎の方が人気はある。
CGの活用について振り返ってみると、CGの黎明期には、制作側にも視聴者側にもCGに対する反発はあった。CGの表現力が向上すると同時に、CGの活用が浸透していくと、反発は弱まっていったし、CGと実写は共存し合っている。
上記のようなことを考えると、AIと人間は相互に影響を与え合い、シームレス化していくに違いない。
“大AI時代”に本当に評価されるのは?「新・作品価値の条件」
ハリウッド映画の話になるが、昨年に公開された『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では、一部のアクションシーンでCGやスタントマンを使わず、トム・クルーズ自身が実写で演じたことがアピールされ、称賛を浴びた。同年に公開された『F1/エフワン』においても、極力CGを使用せず、実際のサーキットで主演のブラッド・ピットらが実際にフォーミュラカーを運転して撮影したことがアピールされた。なお、本作は、作品賞、視覚効果賞を含む、米アカデミー賞4部門にノミネートされている。
これらの作品は、作品そのもののみならず、監督の思いや情熱、俳優のチャレンジ精神や体当たりの演技などが「サブストーリー」として語られている。メイキング映像も公開され、話題となっている。
ここで注目したいのは、CGを否定した結果でもなければ、単に「映像の完成度」だけを評価したものでもないという点だ。
AI動画についても、「AIを有効活用して時間やコストを削減した」、「映像制作のスキルがない素人でもハイクオリティの動画が作れた」といった話は、実践しようとしているビジネスパーソンには刺さるかもしれないが、視聴者からは必ずしも好意的に受け取られるとは限らない。
むしろ、完成度を語るのではなく「どのような創意工夫を凝らしたのか」、「いかに困難なことに挑戦したのか」ということがアピールポイントとなるということだ。
生成AIを活用した広告においても、黎明期の2023年頃は批判されることが少なかったが、人々が「新しいことにチャレンジした」という姿勢そのものが、肯定的に受け止められていたことも大きいように思う。
最近は「AIを使っていない」ことの証拠を示すために、イラストレーターが制作過程を公開したりしている。AI時代においては、作品だけでなく、過程を示していくことも重要になるだろう。
AIを使用した場合においても、そのことを明示した上で、「どのように使ったのか」という説明ができるようにすべきであるし、そうした過程を「ストーリー」として提示していくことが重要になるだろう。
AIの時代であるからこそ、ブラックボックス化されたAIの世界を可視化すること、AIの外にある人間の営みを並行してアピールすることが重要になる。
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