- 2026/06/28 掲載
変化が速すぎるAI時代でも裏切らない…武器になる「低周波帯のスキル」とは何か(2/2)
プロンプト知識より、問いを立てる“正拳突き”が武器になる
この「低周波帯を磨く」ということを、僕は武道の「正拳突き」にたとえて説明することがあります。格闘技において、派手な必殺技やトリッキーなコンビネーションは、いわば高周波帯の技術です。もちろん状況によっては有効です。しかし、基準となる正拳突きやガードが1万回、10万回と繰り返され、身体の芯まで染みついていれば、見かけの派手な連続技よりもはるかに頼りになります。
生成AIの使い方も、それに近いところがあります。最新モデルが出るたびに、そのつど「使いこなし術」という高周波帯の波を追いかけるのは疲れますし、その知識は数カ月で古くなることも珍しくありません。けれども、「この問題の本質は何か」「この構造をどう分解すればAIで扱えるか」という基本の技を自分の中に持っていれば、道具が入れ替わっても、大きくは困りません。
表面的なプロンプト・テクニックを100個覚えるよりも、本質的な「問いを立てる力」「構造化する力」という正拳突きを、自分の身体の一部になるまで繰り返すこと。一見地味で、遠回りに見えるかもしれません。けれども、この基礎の鍛錬こそが、変化の速いAI時代において最も裏切られにくい武器になります。
「10人に1人」の掛け算で「1000人に1人」の希少人材に
汎用的な知識やスキルを身につける、もう1つの大きなメリットは、特定の専門領域に閉じこもることなく、複数の領域をまたいだ「掛け算(注)」ができることです。たとえば1つの領域で1000人に1人の逸材を目指すのは、天賦の才能や運にも左右されるかなり厳しい戦いです。しかし、「10人に1人」程度の能力であれば、正しい方向に努力を積めば多くの人に手が届きます。「10人に1人のエンジニア知識」に、「10人に1人のUI・デザインの視点」と、「10人に1人の経営・ディレクション能力」を掛け合わせれば、それだけで「1000人に1人」の希少な存在になれます。
大事なのは、プログラミングという手段そのものに閉じこもることではなく、そこから得た構造化のノウハウを別の領域に移し替えていくことです。
この掛け算による希少性の構築こそが、特定の技術トレンドと共倒れになるリスクを避けながら、変化し続ける時代の中で自分の価値を構造的に守っていく、最も合理的な生存戦略の1つだと思います。
構造が見えるようになると、これまで見えていなかったものが見えてきます。
単なるプレイヤーとして動くだけでなく、ゲームそのものを設計する側にも回れるようになります。そして何より仕組みを作ること自体がだんだん面白くなってきます。
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