- 2026/08/14 06:10 掲載
「分かってくれるのはChatGPTだけ…」なぜ人はAIに心を感じる? 脳科学者に聞いてみた
お茶の水女子大学ヒューマンライフサイエンス研究所助教。1984年、北海道生まれ。東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は神経生理学、生物物理学。脳科学に関する一般向け著作も多数執筆。
「相手はAIなのに…」相談するだけで心が軽くなるワケ
ChatGPTをはじめとする対話型のAIに、日常的な困りごとから恋愛、人間関係、人生についてまで相談し、「自分のことを分かってもらえた」という感情を抱く人が増えている。しかし、考えてみれば、不思議な現象である。私たちは、AIが本当の意味でこちらを心配しているわけではないと知っている。それでもなぜAIに「癒された」「救われた」と感じるのだろうか。
毛内氏が理由の1つとして挙げるのが、AIに問いかける際の「言語化プロセス」だ。頭がモヤモヤしているとき、自分の状況や感情を書き出すことで、問題点や解決方法が見えてくることは珍しくない。ChatGPTに相談する際にも、相談文を作る過程そのものが、悩みを整理する作業になっているという指摘だ。
「しかも、一方的に話して終わりではなくて、会話が続いていきます。私たちは相手が人間かAIかにかかわらず、『いま、こう考えているのだろう』と推測しながら会話するので、次第にAIを“心を持つ何か”のように感じ、それが『救われた』『癒された』といった感情になるのでしょう」(毛内氏)
ただし、感情を持たないはずのAIに、「心がある」「自分を分かってくれている」とまで感じる理由はそれだけでは説明できない。
毛内氏によれば、その答えは生成AIが登場するはるか以前から人間の脳に備わっていた、“ある性質”にあるという。そして、その仕組みをひも解くと、「心」の意外な正体だけでなく、AI時代に重要になる「人間ならではの価値」も見えてくる。
なぜChatGPTに「心」を感じるのか?
人間の脳に備わっている“ある性質”とは何なのか。毛内氏は「人間にはもともと、自分以外のものに心を見いだす性質がある」と語る。たとえば、三角形や円などの単純な図形が動くだけの映像を見ても、人は「追いかけている」「いじめている」といった意図や物語を読み取るという。
「人には、自分以外のものに心を感じる仕組みが備わっています。だから、ぬいぐるみやペットにも心を感じます」(毛内氏)
さらに、自分の言葉に対して応答があることも重要だという。自分の働きかけに応答があると、自分が状況に関与できているという感覚につながる。こうした感覚が、気持ちを整理したり、安心したりすることを助ける場合もあると毛内氏は語る。
「そう考えると、話し相手は必ずしも人間でなくてもよいのかもしれません。ペットや赤ちゃんに話しかけて癒されるのと同じように、AIも心地よい会話相手になり得るのだと思います」(毛内氏)
AIの回答は、現実の人間が返す言葉の並びに近く、ときには本人が望む言葉まで返してくれる。脳にとって言語は単なる記号ではなく、意味のあるものであり、現在のAIには、人が心を感じる条件が見事にそろっているのである。 【次ページ】「心は存在しない」の真意──心の正体は〇〇だった
AI・生成AIのおすすめコンテンツ
AI・生成AIの関連コンテンツ
PR
PR
PR