- 2026/08/09 07:10 掲載
提案を断られても「終わり」ではない──元キーエンス営業が明かす“逆転”の一手(2/3)
「NO」を突きつけられた後にこそ訪れるチャンス
誰もが「顧客の潜在ニーズを見つけることが重要だ」と、頭ではわかりつつも肝心の顧客自身がそのニーズの存在にまったく気づいていないケースは少なくありません。本人に自覚がないのですから、私たちががいくら探ろうとしてもすぐには見つかりません。では、そこで引き下がるのがプロとして正しい選択なのでしょうか? いいえ、断じて違います。そこでどうするか。エレガントな言葉で飾る必要はありません。答えは、実にシンプルかつ本質的です。
足掻くのです。
誤解しないでいただきたいのですが、ここで言う足掻くとは、決して見込みのない相手の迷惑を顧みず、しつこく食い下がるといった自己満足な行為とはまったく異なります。
むしろこれは「お客様自身もまだ言葉にできていない、より本質的な課題解決に貢献したい」という、まるで顧客企業の外部顧問になったかのような、プロフェッショナルとして極めて誠実で知的な探求活動なのです。
それは顧客にとっても「自社だけでは気づけなかった新たな視点や改善のヒントを得られるまたとない機会」となり得るのです。
顧客自身も知らない「未認知の課題」とは
私たちが顧客の本当に欲しいものを知らないことがあるのと同様に、顧客も自分が心の底から何を必要としているかを明確に把握できていないことが往々にしてあります。顧客が口にする課題は巨大な氷山の一角、水面から顔を出したほんのわずかな「顕在層」に過ぎません。その下には、顧客自身もぼんやりとしか感じていない「潜在層」が広がっています。
しかも、さらにその下に、顧客自身がまったく想像もしていない「未認知層」とも呼ぶべき巨大で根深い領域が存在するのです。その顧客という名の「氷山」を根底から揺さぶり、水面下に隠された巨大な本体を露わにするためのいわば地殻変動を起こすドリル──それこそが、キーエンスで徹底的に叩き込まれた営業手法、ワンモアなのです。
キーエンス流「ワンモア」とは何か
これは、メインで提案した製品が響かなかったとしても決して諦めずに、「ありがとうございます。ちなみに、もう1つ(ワンモア)、こういった製品はいかがでしょう?」と、「コレはどうですか」「アレはどうでしょう」と他製品も見せていく、極めてシンプルかつ強力なアプローチです。一見すると非効率で「数撃ちゃ当たる作戦」に見えるかもしれませんが、これは顧客の凝り固まった思考の枠組みを一度リセットし、新たな視点を提供するための計算され尽くした知的揺さぶりなのです。 【次ページ】次の一手は「似た提案」ではない──成否を分ける準備
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