- 2026/08/10 11:15 掲載
AI失業不安にシンガポールが先手──再教育を強化
背景には、AI投資が拡大する一方、雇用への影響を巡る懸念が強まっていることがある。ただ、現時点でシンガポール政府の統計は、大規模な雇用代替が起きていることを示していない。人材開発省が4月30日に公表した調査では、従業員10人以上の民間事業所の28.5%がAIを導入。AI導入企業のうち、人員削減を報告した企業は6.2%だった。これに対し、18.9%が職務を再設計し、13.9%が新たなAI関連職を創出した。さらに70.7%が労働者の生産性向上を報告したという。
8月4日に人材開発省が示した最新の内訳では、AI導入率は従業員200人未満の企業で27.2%、200~500人で54.8%、500人超では76.4%だった。企業規模による導入格差も鮮明になっている。同省は、AI導入企業では雇用削減よりも、職務再設計やAI関連職の新設、従業員の配置転換が目立つとしている。
ウォン氏は5月1日のメーデー集会でも、AIによって「仕事は変わり、一部は消える」と認める一方、「すべての仕事を守ることはできなくても、すべての労働者を守る」と強調していた。政府は技能訓練と職業紹介の連携を強化するほか、対象となるSkillsFutureのAI講座を受講するシンガポール国民に、プレミアム版AIツールを6カ月間無償提供する施策も進めている。
シンガポール経済は足元では堅調だ。貿易産業省が7月14日に公表した速報値によると、2026年4~6月期の実質GDPは前年同期比5.7%増だった。ウォン氏も今回のメッセージで、労働市場は安定し、新たな雇用が生まれていると説明。AIの急成長、とりわけ半導体分野から恩恵を受けているとの認識を示した。成長するAI産業を雇用不安の要因だけにせず、労働者の技能向上と「より良い仕事」につなげられるかが今後の焦点となる。
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