- 2026/09/02 06:10 掲載
ディズニー「若者離れ」はウソ?10月に1万2,400円へ値上げでも…20年データが覆す定説(2/2)
連載:テーマパーク経済学
本当に人気は下がっているのか? 20年のデータが覆した定説
そこで、TDR来園者に占める若年層の割合を、日本の人口に占める若年層の割合と比べてみたい。オリエンタルランドが発表しているファクトブックのうち、最も古い情報は2003年から見ることができる。そこで、2003年から5年ごとに4~17歳がTDR来園者に占める割合を調べてみる。
すると、2003年が31.0%、2008年が31.2%、2013年が30.5%、2018年が29.0%、2023年が26.1%である。なるほど、数字だけを並べれば、ここ20年で約5ポイントの減少であり、若者の存在感は薄くなっている。
一方、日本の総人口に占める同じ年代の人口の推移はどうなっているか。総務省が統計を出している「人口推計」で比較してみたい。
なお、オリエンタルランドのファクトブックと人口推計では、年齢の区分に若干の違いがあるが、ここでは人口推計から割り出せるうち、4~17歳の範囲に最も近い5~19歳の割合で考える。
すると、おおよそ2003年が14.9%、2008年が14.0%、2013年が13.5%、2018年が13.04%、2023年が12.53%となっている。
年齢区分が完全には一致しないため参考値だが、TDRの若年層比率を人口比率で割ると、2003年は2.08、2023年も2.08となる。
つまり、日本社会に存在する若者の割合に対して、TDRに若者が来ている割合は、20年前とほとんど変わらずに、2倍の割合を維持しているのである。
もちろん、若年層の比率がずっと一定だったわけではない。TDRの若年層比率を人口比率で割った数値は、2003年の2.08から、2008年に2.23、2013年に2.26まで上昇した後、2018年に2.22、2023年には2.08へ戻っている。ここだけを見れば、2010年代後半から若年層の相対的な来園傾向が低下したのは事実である。
しかし、それでもなお日本の人口比の2倍という水準を保ち続けていること、むしろ2010年代前半に人口比以上に高まっていた来園傾向が、2003年の水準へ戻ったと見るべきだろう。
その意味では、少子化に伴う若者の自然減に伴う形で、TDRへの来場者も減っているだけであり「若者が意識的にディズニーを選ばなくなった」というのは、少なくともデータからは読み取れないことが理解できよう。「若者のディズニー離れ」は、状況をやや誇張している表現だと言えそうだ。
「ディズニー離れ」言説は、なぜここまで流行するのか
日本リサーチセンターが2025年に行った調査では、インターネットのニュースWebサイトやニュースアプリを毎日利用する割合は、40代を頂点とする山形になっている。
また、NTTドコモ・モバイル社会研究所の2025年の調査では、10~20代がニュースを得る手段として最も多いのはSNSであり、Webサイトやアプリが中心になるのは30~40代だった。
つまり、長いテキストのネット記事で語られる「若者のディズニー離れ」は、必ずしも若者自身が語っているわけではない。主に若者より上の世代が読み、若者について語る言葉なのである。
そうした読者にとって、ディズニーは格好の題材だ。かつては今よりチケットが安く、年間パスポートもあり、ファストパスは無料だった。若い頃の思い出と現在のディズニーを比べれば、「昔は気軽に行けたのに、今は違う」という感覚が生まれる。
その変化を「若者のディズニー離れ」と表現すれば、自らの懐かしさと現在への違和感がうまく言葉にできたように感じられる。
もちろん、読者の年齢だけで記事の内容が決まるわけではない。しかし、「若者の○○離れ」は、上の世代が若者を一つの集団として分類し、社会の変化を説明するために繰り返し使ってきた言葉でもある。そこでは若者の実態より、「最近の若者は以前と違う」という説明の分かりやすさが優先されやすい。
若者の来園者数が減っているのは事実である。近年、人口比で見ても若年層の存在感がやや弱まっていることも否定できない。それでも、20年前と比べた若者の相対的な来園傾向は変わっていない。
少なくとも若者がディズニーを見限り、集団で去っているかのような「若者のディズニー離れ」は、(表面上の)データと大人たちのノスタルジーから作られたストーリーにすぎない──というのは、言い過ぎだろうか?
今後もテーマパークが値上げされるたびに、「若者のテーマパーク離れ」は語られるだろう。しかし、そのとき問うべきなのは若者が本当に離れたのか、それとも昔のディズニーを懐かしむ大人がそう見たがっているだけなのか、ということである。
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