- 2026/09/02 14:30 掲載
アップル新CEOジョン・ターナスとは何者か?なぜハード技術者が新トップなのか?(2/2)
実は絶好調? 新CEOが引き継ぐアップルの「現在地」
アップルによると2026年度第3四半期の売上高は1,094億ドルで、前年同期比16%増となった。iPhone、Mac、サービスの売上高はいずれも4~6月期として過去最高。本業の稼ぐ力を示す粗利益率も50.1%に達した。当時CEOだったクック氏は「iPhone、Mac、サービス、すべての地域で2桁の売上成長を達成した」と説明している。
さらに強烈なのが、利用者との接点だ。2026年度第1四半期時点で、世界で稼働しているアップルのアクティブデバイスは25億台を突破した。サービス事業も年間売上高1,000億ドルを超える規模まで拡大している。2011年度に1,080億ドルだったアップル全体の年間売上高は、2025年度には4,160億ドル超へと約4倍に増えたという。
つまりクック氏が残した最大の遺産は、iPhoneだけではない。25億台を超える端末に、App Store、iCloud、Apple Music、Apple Payなどのサービスを重ね、端末を販売した後も継続的に収益を得られる巨大な経済圏である。
一方、巨大になったからこその難しさもある。2026年にはAI向けデータセンター需要によるメモリー価格上昇を背景に、製品価格への影響も表面化した。
ターナス氏に求められるのは、この巨大な収益基盤を守りながら、新しい成長源を作ること。経営再建より難しい仕事とも言える。
ターナス氏は何を変える? AI時代アップル「次の15年」
そこで最大の焦点になるのがAIだ。アップルは2026年6月、Apple Intelligenceを土台にSiriを全面的に再設計した「Siri AI」を発表した。メッセージ、メール、写真などにまたがる個人情報を理解し、画面に表示されている内容も認識。Web上の最新情報にもアクセスしながら回答する仕組みで、iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、Apple Vision Proへ深く組み込む計画である。アップルは2026年内のベータ提供を予定している。ここに、ターナス氏をCEOに据えた意味が見えてくる。OpenAIやグーグルのように「最も高性能なAIモデル」を競うだけなら、ハードウェア技術者をトップに置く必然性は薄い。一方、アップルが25億台を超える巨大なアクティブデバイス基盤を抱え、その中の対応端末へAIを組み込み、プロセッサ、端末、OS、アプリ、クラウドを一体化していくのであれば、話は違ってくる。
アップルはすでに、Apple Foundation ModelをオンデバイスとPrivate Cloud Computeの双方で動かす設計を進めている。次世代のApple Intelligenceも、AIを単独の商品として販売するというより、iPhoneやMacなど既存製品の体験そのものへ溶け込ませる思想が色濃い。
だとすれば、ターナス時代の勝敗を測るべきポイントも「独自の巨大AIモデルを作ったか」だけではない。AIによってiPhoneやMacの買い替え理由を作れるのか、新しいデバイスカテゴリーを生み出せるのか、そして25億台の端末をサービス収益へつなげられるのか。この3点が重要になる。
ジョブズ氏は新しい市場を生み、クック氏はそこから世界最大級の経済圏を作り上げた。その巨大な資産を受け継いだターナス氏に問われるのは、過去の2人を再現することではない。AIがコンピューターの使い方そのものを変えようとしている今、「アップル製品でなければできない体験」をもう一度作れるか。新CEOの本当の評価は、そこにかかっている。
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