- 2026/09/25 06:10 掲載
「またAI飯か…」叩かれても企業が使うワケ、AIが進化するほど起きる“逆転”とは(3/3)
広告史が示す「揺り戻し」、なぜ“リアル”に回帰する?
こうした現象は、生成AIによって初めて起きたわけではない。表現が過度に作為的、人工的になると、その反動として「リアル」や「素朴さ」が評価される現象は、広告の歴史でも繰り返されてきた。2010年、米国のドミノ・ピザは「Show Us Your Pizza」という取り組みを展開し、消費者に自分が購入したピザを自然な状態で撮影して投稿してもらった。
人工的に商品を操作しないという「photo promise」も掲げ、優れた写真を広告に使う可能性まで示した。広告写真を完璧に作り込むのではなく、消費者が目にする実物に近い姿を見せることを価値に変えたのである。
2012年には、マクドナルド・カナダが「Our Food. Your Questions.」を展開した。「なぜ広告の食べ物は店で出てくるものと違って見えるのか」という消費者の質問に対し、実際の広告撮影の舞台裏を動画で公開。フードスタイリングやレタッチのプロセスを隠すのではなく、むしろ見せることで透明性を訴えた。
芸能人の結婚報告でも、デジタルで整った文章を作れる時代に、あえて手書きの署名やメッセージが用いられることが多い。そこには「本人が書いた」という身体性や真正性を感じさせる効果がある。
テクノロジーが進化すると、表現も一直線に「高度化」すると思いがちだ。しかし実際には、高度な表現が一般化すると、その反対側にある素朴さや不完全さが新鮮に映る。表現の世界は、直線的な進歩が起きるのではなく、揺り戻しを繰り返しながら選択肢を増やしていくという変化を遂げるのが実情だ。
最後に問われる企業のセンスとは
食品のように実物への期待が重要なカテゴリーでは、AIによる過度な加工は逆効果になりやすい。一方、現実には存在しない世界観を提示する広告や、短期間で大量のバリエーションを必要とするデジタル広告では、AIのメリットは大きい。逆に、企業の温度感や人間味を伝えたい場面では、手書きや手作りのほうが強いこともある。
生成AI時代のクリエイティブで必要なのは、「AIを使うべきか否か」という思想的な2択ではない。「ここではAIを使う」「ここでは人間が作る」「ここでは、あえてチープにする」と、目的に応じて表現手段を選択することだ。
AIが上手な画像を大量に作れるようになるほど、人間が作った不完全な表現、あるいは精緻な表現の価値も高まる。技術が進化したからといって、表現まで直線的に進化するわけではない。
生成AIはクリエイティブを1つの方向へ収斂させるのではなく、むしろ表現の選択肢を増やす。そうした中で「何を選択するのか」「どのような表現を生み出すのか」ということが問われる。これまで以上に、企業とクリエイターのセンスが問われる時代になっていくのだ。
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