- 2026/08/31 07:10 掲載
「ポリコレでつまらなくなった」は本当?電通クリエイターが断言、AI時代最も必要な力
AI時代だからこそ問われる「創造の倫理」
橋口氏はまず、スマートニュースのキャンペーン「スマニューAI計画」(2026年3月より展開)を例に挙げた。人気作品『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』とコラボレーションしたこの広告では、サイボーグの主人公・草薙素子が「それでAIを使いこなしたつもり?」と鋭く問いかける。橋口氏がこの企画に込めたのは、単なる風刺ではない。AIと向き合う私たちの姿勢そのものへの問題提起だった。
「AIを活用すれば、すごいことができると話題になっていますが、僕を含め多くの人はまだ大した使い方をしていないのではないか。せっかく大量の資源を使って動かしている最先端の技術なのだから、もっと大事なことに使いたい。そう考えたのが出発点でした」(橋口氏)
では、その「大事なこと」を見極める基準はどこにあるのか。橋口氏が指針として提示するのが、クリエイター自身が持つべき「クリエイティブ・エシックス(創造の倫理)」である。
ただし、それは炎上を避けるための消極的なルールではない。人権やジェンダー、多様性に向き合うことが、広告の表現力を高め、企業やブランドの価値を押し上げることもあると言う。
では、倫理への取り組みを「配慮」で終わらせず、強い広告やビジネスの成果につなげた企業は、何をしていたのか。反対に、なぜ倫理を掲げながら、消費者の支持を得られない広告も生まれるのか。
数々の広告制作に携わってきた橋口氏が挙げた国内外の事例をたどると、AI時代に企業とクリエイターが選ぶべき表現の条件が見えてくる。
AI時代の「プロの価値」はどこへ? 電通クリエイターの答え
AIなどの技術が民主化した現代だからこそ、何を形にし、社会に何を届けるのかを選択する「倫理」が個々に求められていると言う。この倫理の重要性が増している背景には、社会構造の変化がある。少子高齢化や労働力不足により、公共サービスやインフラを国家の力だけで支えることが難しくなり、企業やブランドにも社会課題の解決が期待されるようになった。
橋口氏は、世界の主役が「国家」から「ブランド企業」へとシフトしつつある現状を指摘する。イーロン・マスク氏を筆頭に、1人の起業家や一企業の決断が、国家レベルの社会インフラや世論を左右することも珍しくない。
こうした潮流の先駆けとして挙げられたのが、米ドミノ・ピザによる「Paving for Pizza(ピザのための舗装、2018年)」の取り組みだ。
同社は自治体とタッグを組み、自ら道路の穴を補修するプロモーションを展開。このアクションは大きな称賛を浴び、社会課題の解決とビジネスの成長が両立し得ることを証明した。
企業が社会で果たす役割が大きくなるほど、その行動や発信に対しても、より厳しい倫理的視線が注がれるのは当然と言えるだろう。 【次ページ】「倫理とビジネスの融合は可能」アップルが示した逆転の発想
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