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  • 2009/07/07

【ITが実現するノウハウマネジメント:第5回】「ノウハウ展開の全社活動」による組織力強化

ノウハウは、人・モノ・金・情報に次ぐ、経営の第5のリソースである。ノウハウをマネジメントすることで、経営革新の新しい扉を開くことができる。先行企業では、ITを用いてノウハウマネジメントを支援し、革新を進めている。本連載では、ノウハウマネジメントとこれを支援するシステムの事例、背景にあるノウハウマネジメントの考え方を紹介していく。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

<ノウハウ継承宣言の例 (担当役員が事業部長に継承するノウハウの事例)>

■ノウハウⅠ: 遠慮しないでグループベストを進める
【1】効果を得る方法
(300字以内で、どのような効果が何故得られるか、そのために自分の何を変えるか示す)


 買収先企業、海外法人に遠慮してはならない。これまで、自主性尊重という名の無責任で、グローバル・マネジメントを行っていない事業部が多い。これでは、グローバル・マネジメントに長けた海外の競争相手に勝てない。異文化との折衝を恐れてはならない。重要なのは、グループの総合力を高めるために必要なことを、胸を張って主張することだ。反論も受けるだろう。それこそが、多様性という強みを引き出すチャンスだ。同じグループ同士、腹を割って主張し合い、納得し合うことだ。しかし忘れてはならない。個別最適の前に、まずグループ全体最適がある。最後は、事業責任者として、しっかりと決断する。

【2】自分自身の実践体験
(本ノウハウの実践体験を示す。聞いた人間がやる気になる事例とする。字数制限はない)


 5年前に買収した**社は、当社が買収する前に、欧州と北米で5つの企業を買収してきた。彼らは買収後、すぐに自社のグローバル・マネジメント体系の中に買収先企業を加え、グループ全体の力を最大にするマネジメントを進めていた。その当時本部内では、買収企業の自主性を保つというパラダイムが支配していた。そのためこの方法は、当時の自分にとって、目からうろこだった。

 たとえば生産では、工場の生産効率を3段階で評価し、c評価の工場は1年以内にb評価に浮上できなければつぶされる。これによって、グローバルな工場間競争と工場統廃合を進めていた。また、各国の管理職は四半期ごとに本社に集められ、グループ全体の課題を解決する短期間のプログラムに参加する。本プログラムは、管理職のグループ一体感の醸成、グループ全体最適化の方法創造、将来の幹部候補者の早期発見のために有効である。

 そこで、++事業部の事業部長の時代に、**社のグローバル・マネジメントの仕組みを導入、改善しながら仕組みを完成させた。実践してみて重要なのは、遠慮しないことだと気が付いた。仕組み確立までには、いろいろな議論があったが、全員当社グループ社員だ。話し合ってアイデアを高めあい、合意を得ることができた。

【3】実践フォローの質問:
(実践状況をフォローするために行う3つの質問)


1)事業連結会社で、グローバルグループとしてどのような総合力を、いつまでに出すか
2)そのために、どのようなグローバル・マネジメントを、いつから実施するか
3)グループ企業をどのように方向付ける計画を持ち、どこまで進めたか

 ノウハウの継承は、月次のノウハウ実践フォロー会議で行う。この会議では、ノウハウを教える側が座長となり、修得する側の部下の実践結果を「実践フォローの質問」を使って確認する。そこで、座長の名前をとり、**道場と呼んでいる。道場では、各自の進捗、課題の指摘とアドバイスを行う。特に重要なアドバイスは、ノウハウの達成水準と、ノウハウ実践に必要なノウハウ(サブノウハウと呼ぶ)についてである。

 たとえば、担当役員の道場で、事業部長の「遠慮しないでグループベストを進める」の実践状況をフォローしている場面を考えよう。新任の事業部長は、買収した企業のオーナー経営者が日本を無視して、独自路線に走っている場合、説得することだけ考え、やめさせる選択肢を持っていなかった。そこで、「甘い」と達成水準を指導しなければならない。また、強行に日本の言い分を押し通そうとする事業部長に、「日本のいうことを聞いてメリットがあることを相手の会社に体感させる」というサブノウハウをアドバイスする。

 道場は、部下にノウハウを継承させる指導の場である。同時に、指導者自身が自分のノウハウを深く理解し、以降より積極的に活用するという、自分自身のレベルアップの場にもなっている。

 この活動の推進には、情報システムが貢献している。1つは、継承するノウハウの宣言を、グループ内の情報システムで共有したことだ。これによって、社員はだれでも、役員以下すべての管理職のノウハウを、実践事例と共に学ぶことができる。また管理職は、公開されることが牽制機能となって、しっかりとノウハウの中身を吟味して宣言するようになった。このシステムには、月次のノウハウ実践フォロー会議(道場)の様子が、動画で登録できるようになっている。


※クリックで拡大
図2:継承を宣言したノウハウ、道場におけるノウハウ指導状況の
情報システムによる共有


 道場の指導はOJTであり、多くの部下を一気に指導することは難しい。そこで、道場の様子を動画で登録し、自分が任された組織のすべての社員に参照させることで、ノウハウをより多くの人間に理解させ、社員自ら実践したり、上司の実践の支援を的確に行わせたりすることができる。


≪次回へつづく≫

(撮影:郡川正次)



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