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2009年09月07日

九州大学大学院教授 篠ア彰彦氏

情報化社会論その1:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(10)

産業革命で農業中心の社会に工業化の波が押し寄せてから約200年、工業の時代を象徴するゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなどの経営が苦境にある中で、グーグルやアマゾンなど情報化の波に乗った新しい企業の存在感が増している。こうした経済社会の変貌については、実は50年ほど前から議論されはじめていた。それが情報化社会論だ。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠ア彰彦

Industrial AgeからInformation Ageへ

 18世紀から19世紀にかけてイギリスで起きた産業革命(Industrial Revolution)により、世界は大きく変貌した。フローニンゲン大学(オランダ)のマディソン名誉教授による長期経済統計で世界の経済史をふり返ると、産業革命による「工業化」を境に経済成長率が大きく高まったことがわかる(図1)。それ以前の世界は、一人当たりGDP(=生産性)の成長率がコンマ以下で、「2倍豊かな社会」の実現には数百年を要した。具体的に、西暦1500年から工業化が本格化しはじめた1820年までの世界をみると、一人当たりGDPの成長率は年率0.1%前後であり、「2倍豊かな社会」の実現には、西欧で462年、日本で770年の歳月が必要だった。これは、1世代を約30年とすれば、15世代から25世代という時間軸だ。

Source:Maddison (2001) 記載の統計資料をもとに作成。

図1 経済成長率の推移


 ところが1820年以降、産業革命で工業化の波に乗った日米欧では、一人当たりGDPが年率1%台半ばから2%程度成長し、「2倍豊かな社会」がおよそ1世代で達成されるようになった。つまり、子や孫という「生存の時間軸を共有できる世代間隔」で、ライフ・スタイルの伝統や習慣が大きく変化する時代を迎えたのだ。

 その「工業化」から約200年を経て、現在は「情報化」の渦中にある。経営史が専門のチャンドラー・ハーバード大学名誉教授は、20世紀最後の10年、つまり1990年代を「工業の時代(Industrial Age)」から「情報の時代(Information Age)」への転換期と位置づけた(※1)。英語のIndustryには「工業」や「製造業」の語意が備わるが、当初この変化を第3次産業革命 (The Third “Industrial” Revolution) と認識していたチャンドラーは、研究を進める過程で、こうしたとらえ方が適切ではないと考えるようになった。

 なぜなら、彼の考えによると、18世紀末から19世紀にかけて英国でみられた商業の時代 (Commercial Age)から工業の時代への転換、すなわち工業化が第1次産業革命、そして同じ工業化の枠組みの中で19世紀末から20世紀にかけて欧米で起きた転換が第2次産業革命であり、「情報の時代」への変貌は工業化の枠を超えた転換なので、第3次「産業」革命(“Industrial” Revolution)という表現はふさわしくないからである。

 実は「情報化」を「工業化」と区別する考えは、チャンドラーよりもかなり以前になされていた。そのひとりが、1960年代初頭に「情報産業論」を先駆的に提唱した梅棹忠夫 国立民俗学博物館名誉教授だ。研究の道を理学系の生態学・動物学から民俗学へと展開した梅棹氏は、約50年前の論文に「情報産業は工業ではない。それは工業の時代につづく、何らかの新しい時代を象徴するものなのである」と述べ、迎えつつある新しい時代を「情報産業の時代」と指摘していた(※2)。

注釈
(※1)Chandler (2000)参照。
(※2)梅棹(1963)参照。生態学(ecology)とは、生物と環境の間の相互作用を取り扱う研究分野で、生物界における「歴史学」が進化論なら、「経済学」にあたるのが生態学とされる。

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