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  • 2009/09/04 掲載

マーサー ジャパン 中島正樹 氏インタビュー:硬直的な日本企業の人事を改善する3つのポイント(後編)

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「かつてない厳しい時代」──組織・人事分野における世界最大級のコンサルティング会社であるマーサーは現在の景況感についてこう表現する。その厳しい経済環境のもと、各社は経営の最大のテーマのひとつである「人事」をどのように展開しようとしているのか、また展開するべきなのか。同社が2009年5月に行ったグローバルサーベイの結果を踏まえながら、マーサー ジャパンの組織・人事変革コンサルティング代表 中島正樹氏に伺った。

丸山隆平

丸山隆平

経済ジャーナリスト。1972年日刊工業新聞社入社、以降88年まで第一線の経済・産業記者として活躍。経団連、NTT、通産省、郵政省、労働省、東京商工会議所、各記者クラブ所属、米国特派員を経験。情報通信、コンピューター・ソフトウエア産業草創期から取材。コンピューター・OA、情報通信、経営問題関連の執筆・著作多数。1989年から投資家向け広報(IR)コンサルタントとして内外の企業IR・PRをサポートしている。


前編はこちら

マーサーによる調査の概要
2009年5月、マーサーは世界規模で現在の経済状況を背景とした人材・報酬等の面での課題についての調査を実施し、90カ国、約2,100社からの回答を得た。前回の2008年11月に実施した調査に比べ回答企業数は倍増し、この問題についての関心の高さを示すことになった。
回答企業の所在地は北米が64%、欧州が22%、アジア19%、ラテンアメリカが8%、オセアニア4%。業種では製造業が20%、ITが10%、化学・薬品が10%、金融が7%、ビジネスサービス5%、リテール5%。企業規模では、従業員1万人以上の企業が10%強を占め、5,000人~1万人が10%、500人~5,000人が最も多く、40%を占めている。
調査結果のポイントは
・各企業がコスト削減のために継続的に実施している施策(人員整理、給与凍結、退職金や増大する医療補助への拠出金削減など)の現状が判明
・回答企業の3分の2が調査前6カ月に人員削減を実施。その内訳は米国企業74%、欧州企業71%、アジア企業59%
・58%の企業が調査後6カ月の間に何らかの人員整理を計画。アジア企業は45%と低めの可能性
・大幅な人員削減(全社員の10%超)を計画している企業は減少の傾向

事業計画と要員計画をつなぐマネジメントが必要


マーサー ジャパン
組織・人事変革コンサルティング代表
中島正樹氏

国内外の幅広い業界の企業及び公的機関に対し、戦略・組織・人事の統合的な視点から組織・人材マネジメントを変革するコンサルティングプロジェクトをリード。組織マネジメントの診断、戦略を実現するためのマネジメントプロセスの再設計、コア人材育成や組織能力の向上等を通じ、組織・人材マネジメントのイノベーションを実現することを中心テーマとしている。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)、戦略系・人事系両方のコンサルティングファームを経て現職。一橋大学商学部卒、カリフォルニア大学ロスアンジェルス校(UCLA)経営大学院MBA

──そうした経験を経て、今、経営者ができることは何でしょうか?

中島 これまでも述べたとおり、現在は事業構造と要員計画のミスマッチがあります。事業が伸びているときはいいのですが、需要が減退してくると要員を減らさなければなりません。それも一度に行うのではなく、毎年毎年見直す必要があります。そうした事業計画と要員計画をつなぐマネジメントが必要になります。

 また、これまでは仕事と雇用形態の結びつきが極めてシンプルでした。たとえば非定型の仕事は正社員、定型の仕事は非正社員・派遣社員が行うと決めていましたが、本当にそれが最適でしょうか?たとえばサービス業では、会社のコアの部分が定型業務で、それを派遣社員が担っており、その人がいなくなったら仕事が回らなくなったというケースがありました。今後は定型か非定型かで雇用形態を決めるのでなく、その仕事の価値はどのようなものかを把握して、たとえ定型業務であっても「中長期的には企業が持っていなければならないものなので、正社員が担当する」など、その仕事の生み出す価値を見据えてアサインしなければなりません。

 さらに、配置と能力がミスマッチを起こしているために、正社員だが“使えない”人たちを切らざるを得ない現実があります。これまで正社員だからということで能力育成を怠ってきたツケが回ってきているわけです。一方、若手を育成するためにも新しいポジションにつける必要もあります。たとえば中国市場はどんどん伸びて変化し続けている市場にもかかわらず、従来通りの経歴を持った人が、慣例で中国担当のポストに就くことがあります。こうしたポストに若手を採用することも求められます。

 以上をまとめると、3つのことが言えると思います。

 1つは経営の方向を人・組織の部分まできちんと落とすということ。中期経営計画では、人員数だけで判断するのではなく、現在自社にはどういう能力の人がいて、新しい事業にはどういう能力が必要となるのか、またそれに伴って既存の事業はどういった人で回すのかを把握する必要があります。さらに、これを3年に1度でなく、少なくとも半年に1度は見直すことが必要でしょう。

 2つめは雇用形態です。仕事の価値を見ながら、柔軟な雇用形態を採用していくということ。

 3つめは、人のポテンシャルと仕事が今後どのように伸びて行くのか、そのポストがどのような可能性を持っているのかについて、適正なマッチングを図ることです。

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