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- 2010/01/21 掲載
従業員数16人、自己資金のみで数百万ドルの利益をあげる37signalsの哲学【○○はビジネスになるか(6)】
37signalsは1999年創業。オープンソースのWebアプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails」を開発したことで知られる。もともとWebデザインの会社だったが、2004年にWebベースのプロジェクト管理ツール「Basecamp」を公開して以降、Webアプリサービスがメインビジネスとなった。
従業員数は16人(2009年夏現在)と小粒ながら、独特の存在感を持っており、「Web 2.0」企業として脚光を浴びたが、創業10年を迎えたいまも株式は公開はしていない。
「Basecamp」は37signalsの最初のWebアプリ製品で、フラッグシップ製品でもある。一般的なプロジェクト管理製品につきものの「ガントチャート」は持たないが、文書や作業を共有するためのWiki、ファイル共有、ToDo管理など、共同作業のための必要・最低限の機能をそろえている。逆に余分なものをそぎ落とし、チームのメンバーが直感的に使えるのが売り物だ。
このほかの製品も、個人向けタスク管理の「Backpack」、CRM・コンタクト管理の「Highrise」、グループチャット・コミュニケーションの「Campfire」など、シンプルさと使いやさで、ユーザーを増やしてきた。
「Basecamp」「Backpack」「Highrise」「Campfire」の各サービスは現在、有料で、30日間の無料トライアルが利用できる。料金は、たとえばBasecampでは、15プロジェクト制限でストレージ5GBの「Basic」が月額24ドル。プロジェクト数無制限でストレージが75GBの「Max」は同149ドルといった具合で、いずれもユーザー数は無制限だ。
また、有料サービスの機能を一部を切り出したToDoリストサービス「Ta-da List」や、リッチテキストに対応した共有掲示板サービス「Writeboard」などは、無料で利用できる。
同社は売上を公表していないが、Basecampだけで300万以上のユーザーを獲得しており、共同創業者でCEOのジェイソン・フライド氏によると、「売上、利益とも“数百万ドルの域”に達している」という。
37signalsは自己資本で運営し、負債もないのが特徴だ。フライド氏は、資金調達は必要なく、30ものベンチャーキャピタルの出資申し出を断ったと述べている。唯一、外部から出資を受け入れたのは2006年に、米アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏から受けた分だけだ。これは、ベゾス氏のような経験を持つ人物のアドバイスと指導が欲しかったためだという。
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37signalsのサービスのターゲットは、“ニッチな小規模マーケット”で、顧客にはスモールビジネスと個人が多い。同社は、こうした小規模企業のことを、世界の大企業を指す「フォーチュン500」にならって「フォーチュン500万」と呼んでいる。その一方で、従業員5,000人の企業にも利用されており、広い範囲のユーザーに受け入れられている。
こうした37signalsのサービスを貫いているのは「Getting Real」(現実的になる)と呼ぶ独自の開発哲学だ。そのキ-ワードは「less(より少ない)」である。
「Getting Real」という開発哲学は、より小さく、より速くソフトウェアを構築するのに適した方法で、多くのビジネス・クリエイティビティの現場でも採用できるアプローチだという。具体的な項目を挙げると、「機能で競争相手と無駄に争わない」「アプリケーションの最初のバージョンは3人だけで始める」「自分の手の中にあるお金でできることを始めよう」など、無駄をなくし、シンプルに徹することを勧めている。
フライド氏は「名言」が多いベンチャー経営者としても知られる。最近では、ベンチャーキャピタル「Y-Combinator」が2009年10月に開いたイベントで講演した。スタートアップの成功の秘訣を伝授した興味深い内容である。いくつか紹介しよう。
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