リーマンショック以降、経済は急激に冷え込んだ。とりわけ製造業における投資抑制傾向は強烈で、ITシステムの保守さえ削ろうかという厳しい状況だったという。ただし、すべての企業が同じかというと、けっしてそうではないと、保々氏は語る。
「マーケット全体が投資抑制に走ると、優秀なコンサルタントやエンジニアを確保しやすいため、こういうときこそ、優秀な人材を、うまく安く活用しようと考える企業も少なくありません。まわりを見て何かを決めるのではなく、自分達に必要だと判断すれば、必要な投資は惜しまないというお客様がいるのも、また事実なのです。そういうお客様が、マーケットでリーダーシップをとっていかれるのだと思います」
また、保々氏は、リーマンショック以降の企業を取り巻く環境について、「ニューノーマル」という概念を使って、次のように説明する。
「リーマンショックによる落ち込みから回復しても、再びもとの状態に戻るわけではありません。リーマンショックのような異常な事態が次々に起き続ける時代、"ニューノーマルな時代"がすでに始まっているのです」
現実に、リーマンショックが一段落しそうだと思ったらギリシャ問題が発生し、ユーロ不安が広がっている。もともと、リーマンショック前は円安が心配されていたにもかかわらず、ドルとユーロが弱くなった結果、円高が進行する事態となっている。さらに、最近は中国の人民元切り上げへの懸念も台頭している。
以上は通貨の話だが、同様の変化が、企業を取り巻くあらゆる環境で発生し続ける。つまり、予測できない変化がおこり続ける時代=ニューノーマル時代が始まったのである。