- 会員限定
- 2010/07/15 掲載
プロジェクトステークホルダー:PMBOKと実例で学ぶプロジェクトマネジメント(2)
監修:東京農工大学 教授 中川正樹氏、編著:三菱総合研究所 飯尾 淳氏
まずは前回の練習問題の解答から確認しましょう。
次にあげる説明のうち、どれがプロジェクトに相当するでしょうか? また、プロジェクトではなく定常業務に相当するものはどれでしょうか?以下に挙げるものを、プロジェクトと定常業務に分けてみましょう。また、それぞれのプロジェクトで生成される成果物はなんでしょうか?
問1. 営業で得意先を訪問し、商品の売り込みを行う。
問2. 新規地域に営業所を設置し、新しい地域での市場開拓を行う。
問3. 人里離れた山奥にダムを構築し、新しく水力発電所を建設する。
問4. 皆のプロジェクト売上を集計して、会計報告書を作成する。
答1.「営業で得意先を訪問し、商品の売り込みを行う」
定常業務 ─ 継続的に行われる仕事です。ただし販売促進キャンペーンなど特別な営業を行う場合はプロジェクトになります。
答2.「新規地域に営業所を設置し、新しい地域での市場開拓を行う」
プロジェクト ─ 期間を定めて、市場開拓できなかったら撤退することもあるでしょう。開拓された新規市場が成果物に相当します。
答3.「人里離れた山奥にダムを構築し、新しく水力発電所を建設する」
プロジェクト ─ プロジェクトの成果物はダムや水力発電所です。
答4.「皆のプロジェクト売上を集計して会計報告書を作成する」
定常業務 ─ 会計報告書は日々の業務で作成すべきものです。
プロジェクトステークホルダー
本連載はソフトバンク クリエイティブ発刊の『演習と実例で学ぶ プロジェクトマネジメント入門』より一部を抜粋し、再編集したものです。本連載ではご紹介しない練習問題などについては書籍をご覧ください。
■ステークホルダーとは
辞書で「ステークホルダー」を引くと、次のような説明が出ています(三省堂、大辞林より引用)。
ステークホルダー【stakeholder】 企業に対して利害関係を持つ人。社員や消費者や株主だけでなく、地域社会までをも含めていう場合が多い。
もともとステークホルダーとはビジネス用語であり、辞書による定義の通り企業に対する利害関係者のことを指す用語です(注1)。
ただし、広義には金銭的な利害関係を持つ顧客や株主だけを指すのではなく、企業による活動を遂行する際に関係するすべての人々がステークホルダーにあたります。
経営者や従業員はもちろんのこと、取引先や関係会社、監督官庁などもステークホルダーです。競業他社やライバル会社がステークホルダーとされることもあります。さらには、地域住民や国際社会もステークホルダーたり得る存在です。
世間一般に向けて製品を製造、販売する会社であれば、消費者は重要なステークホルダーと考えるべきでしょう。
■プロジェクトのステークホルダーとは
では、プロジェクトのステークホルダーといったら誰のことを指すのでしょうか。PMBOKによるプロジェクトステークホルダーの定義を次に示します。
プロジェクトに積極的に関与しているか、プロジェクトの実施あるいは完了の結果から、自らの利益にプラスまたはマイナスの影響を受ける個人や組織
プロジェクトのステークホルダーを平たくいえば、「プロジェクトに関与している人すべて」です。企業のステークホルダーは、企業活動に関係するすべての人々のことでした。プロジェクトのステークホルダーは、プロジェクトの遂行活動に関係するすべての人々です。
とはいえ、さまざまなステークホルダーの関係は平等ではありません。それぞれのステークホルダーとプロジェクトの位置関係を正確に把握し、プロジェクトマネジメントを行ううえで適切な対応を心がけることが、プロジェクトを成功に導く秘訣です。
【次ページ】プロジェクトと定常業務の違い
注1 ステーク(stake)は、そもそも「賭け金」や「なんらかの結果により失う危険がある大切なもの」を意味する単語です。 転じて「利害関係」を表す意味になりました。ちなみに競馬の「○○ステークス」もここから来ています。
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR