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  • 【鈴木茂氏インタビュー】身の丈に合った出版活動と経営――話題の本・雑誌を続々と出す版元の底力に迫る

  • 2012/02/15

【鈴木茂氏インタビュー】身の丈に合った出版活動と経営――話題の本・雑誌を続々と出す版元の底力に迫る

アルテスパブリッシング代表 鈴木茂氏インタビュー

元音楽之友社の編集者・鈴木茂、木村元両氏によって2007年に立ち上げられたアルテスパブリッシングは、“音楽を愛する人のための出版社”として、ジャンルを問わず音楽をテーマとした批評、ガイド、研究書などを50冊刊行している。小規模・少部数でありながらコンスタントにヒット作を生み、2011年末には初の雑誌、季刊『アルテス』を創刊。小さな出版社の生きる道とは――代表の鈴木氏にお話を伺った。

「自分で作って自分で売る」が出版の基本

――音楽之友社を辞められたとき、自ら出版社を立ち上げようというお気持ちはあったんですか?

 鈴木茂氏(以下、鈴木氏)■具体的なプランがあったわけではないのですが、会社員時代から、当時の同僚で僕と一緒にアルテスパブリッシングを立ち上げた木村元と「初版2000部でもコンスタントに売れる書籍をつくり続ければ、2人くらいなら食っていけるんじゃないか?」みたいな話はよくしていました。わりと安月給にも慣れていたので、そこまで高収入を望まなければ、と。

 とはいえ、2006年の1月に音楽之友社を退社してからはしばらくフリーで仕事をしながら、「これから何をしていこうかな……」と先行きを考えあぐねていました。そこへその年の暮れに木村から「僕も辞めることにしました」と連絡があって。

――あ、鈴木さんと木村さんとで、計画的に辞められたわけではなかったんですね。

 鈴木氏■はい、僕のほうは辞めるときなにも決めてなかったんです(笑)。それで、年明けの正月に木村とジュンク堂新宿店の喫茶室でお茶しているうちに、とりあえず出版社をやっていける可能性があるかどうか、具体的に考えてみようということになって。あれこれ資金や売上げの試算をしてみたり、あと流通関係に疎かったので、そこをどうしようかって話をしたり。1人では気力も体力も心もとないですが、2人ならやれるかも……という感じで、手探りで動き出しました。でも、その3か月後には登記していましたから、そこは早かったんですよ。登記してから最初の1冊(内田樹『村上春樹にご用心』)を出すまでに半年かかりましたけど。

――2007年の4月に会社を設立されて、2012年1月現在の発刊点数が50冊ですから、ほぼひと月に1冊のペースで出されていることになりますね。実質的にお2人で編集されて、かつ経営や流通のあれやこれやもこなしながらその刊行ペースを維持するというのは、結構すごいなと。

 鈴木氏■登記した時点で企画はすでにたくさんあったんです。音楽之友社でつくりきれなかったものや、話だけで具体化してなかったものが溜まってましたから。だから、とにかくそれらを早くカタチにしたいと、もどかしいぐらいでした。それに、これは前向きな言い方ではないのですが、一定のペースで出し続けていないと会社が回っていかないっていう(笑)。

 でも、たとえ自転車操業みたいではあっても、とにもかくにも食べていければ、こんなに楽しいことはないですよ。会社の規模を大きくするっていう発想はもともとないですし。もしも万が一、何かの拍子にドーンと売れて、大きな利益が出たとしても、それで人をどんどん増やしていこうとは考えないです。

――出版に限らず、調子に乗って人を増やしてコケるっていうのは、ありがちなパターンですよね。

 鈴木氏■むしろ僕らはどこかで常に撤退戦を考えているところもあるんですよ。借金は個人で返せる範囲で、とかね。いまは下北沢に事務所を借りていますが、会社を立ち上げてから2年間は、僕も木村もそれぞれ自宅で別々に仕事をしていました。だから、スタッフへの責任はもちろんありますけど、不必要に無理はせず、いざとなったらいつでもそこに戻ればいいと思ってるんです。そうはいっても、とにかくありがたいことに本の企画はたくさんあるので、今年も毎月1冊ないし2か月で3冊くらいのペースでどんどん出していく予定です。

――企画・編集以外にも、営業や販促イベントなどもご自身でなさっているわけですが、そのあたりの大変さというのはやはりありますか?

 鈴木氏■会社員時代は、何度か営業部の人にくっついて取次(本の問屋)や書店に挨拶しに行ったりしたことがあるぐらいで、編集以外の業務はごく大雑把にしか知らなかったんですね。その世界が、アルテスを始めてから急にリアルになりました。気が小さい性分なもので、書店に営業に出かけても「い、いま声かけていいのかな?」みたいな感じで恐る恐るだったんですが(笑)、実際にやってみたら、本をつくる人間と本を売る/宣伝する人間は同じほうが本来のあり方なんじゃないかと思うようになりました。

――編集の考える本と、営業の考える本は違うといいますか、編集の意図が、営業を通して書店に伝わっているかというと……

 鈴木氏■どうしても多少の齟齬は生じますよね。つくった人間が営業したほうが、話が早いっていうか。いままで、編集者は本をつくるほうに集中したほうがいいとか、自分は営業は苦手だとか思っていたんですけど、きちんと人間関係を作るっていう基本は同じですし、書店の方にどれだけ本を評価して売ろうと思ってもらえるか次第で、本の売れ行きがぜんぜん違うっていうことも、やってるうちにわかってきました。それを自分で体験できたっていうのは、大きいと思いますね。

――最近のヒット作の1つである『文化系のためのヒップホップ入門』(長谷川町蔵・大和田俊之著)は、ずばり名著ですね。

 鈴木氏■ありがとうございます。

――僕も、共著者のひとりである大和田俊之さんと同じく、ブラック・ミュージックはそれなりに聴いてきたもののヒップホップだけはどうも……というクチだったのですが、序盤から「ヒップホップは音楽ではない」「一定のルールのものとで参加者たちが優劣を競い合うゲームであり、コンペティションである」など、目からウロコなフレーズも多々あり、とりあえずヒップホップのおもしろがり方は心得たといいますか。

 鈴木氏■苦手な人にも親切な本なので、これはちょっと聴いてみようか、という気にさせてくれますよね。

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