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  • 2012/07/27 掲載

【IT×ブランド戦略(1)】ブランドは作れるか?(2/3)

「どうして売れるルイ・ヴィトン」の著者が解説

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彼らとの違いは一体何なのか。

 多少なりともアップル製品を使ったことのある人やアップルに興味を持っている人ならば、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックという「2人のスティーブ」によって創業されたということを聞いたことがない、という人は少ないだろう。

 アップルが数々の成功を収めたにも関わらず低迷期に突入し、スティーブ・ジョブズが追放された話も聞いたことがあるかもしれない。あるいは、ジョブズが、ペプシコーラの事業担当社長をしていたジョン・スカリーに対して引き抜き工作を行った逸話も知っているかもしれない。「このまま一生、砂糖水を売りつづけるのか、それとも世界を変えるチャンスをつかんでみる気はないのか?」というロマンチックな口説き文句はとても有名だ。

 アップル製品を手に取る時、私達は少しだけ、その特別な物語の一端に自分も参加していることを誇りに感じている。その気持を含めた価値に対して商品代金を支払い、消費をしている。

 なぜ私たちはアップル製品だけは特別に、新製品をいち早く手に入れたことを得意になって見せびらかし、その長所と改善点を自発的に広め、宣伝活動の手伝いをしたくなるのか。それはアップルが掲げる理念に共感し、彼らの進める社会変革の一端を担う、担い手でありたいという気持ちがあるからだ。

 ブランドにとって、そのような物語は価値の源泉のようなものだ。この種の共感がなければ初期不良は不評や大量の在庫を生み出すだろうし、商品の宣伝活動においても、通常の企業と同じく大きな資金を投じて一か八かのキャンペーンをはることになる。

 では、アップルというブランドが成立している唯一の理由とは、感動的な創業物語、孤高の天才が人生をかけて注いだ情熱、天命によって導かれた運命の出会いがあったから、なのだろうか?もちろんそれはブランドの成立にとって重要な要素だが、決して必要十分条件ではないと考える。

 アップルのコンピュータと切っても切り離せないものの一つに、「Photoshop」というソフトウェアがある。アドビシステムズという会社が開発・販売している、とても有名な製品だ。グラフィックデザイナーや印刷物の編集・データ処理には欠かせない、画像処理ソフトである。機能的には誰でも使うようなものではないし、価格も高い、ハイエンドな製品だが、アップルコンピュータに準じる知名度を持っている。製品の機能に対する信頼も高く、愛用者も多い、やはりこれもブランドといえる存在だろう。

 しかしこの企業が、ジョン・ワーノックとチャールズ・ゲシキー によって1982年12月に設立されたということを知っている人は少ないだろう。ジョン・ワーノックにも学生時代の伝説がある。落ちこぼれた幼少時代、人生を変える恩師との出会い。そして大学時代、数学のある分野でなしとげた驚くべき業績。そこから情報技術と出会い、相棒と出会い、世界的な企業を作り上げていく過程はアップルに劣らず感動的で、カラフルだ。

 そのアドビシステムズでさえ、創業者という観点では、その知名度はスティーブ・ジョブズに遠く及ばない。もちろんアップルのコンピュータや携帯端末と比べると、Photoshopは対象とするユーザが圧倒的に限定的であり、単に同列に並べることはまったく意味がない。しかしそうだとしても、世の中に無数に存在する企業のなかで、アップルがあまりにも突出して「顔の見える経営者」であるということが、極めて異例のことだと思われる。

 このことを考えると、ブランドを作るという観点においては、その根拠を創業物語や創業者のカリスマ性に還元してしまうのは、いささか短慮というものである。

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