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  • 2012/07/27 掲載

【IT×ブランド戦略(1)】ブランドは作れるか?(3/3)

「どうして売れるルイ・ヴィトン」の著者が解説

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ブランドを、工学的な観点で考える

 ルイ・ヴィトンやアップルがその地位を築くために、その創業者の人格や才能、経営途上での幸運は、なければならい不可欠なものだっただろう。しかし、それが必要十分条件ではない。逆に、それ以外の要素こそが重要だ。つまり、ブランドを作りたいと思うすべての経営者にとって、再利用可能な、再現性のあるノウハウ、一定の方法論を見出すことは可能なはずだ。

 「人工物工学」という概念がある。「工学」=「エンジニアリング」とは、人がいかにしてモノを制御し、効率的に、正確に作り出すかを追求する学問だ。そして、それによって生み出されたものは「人工物」と呼ばれている。 そのなかで「人工物工学」とは、人工物を生み出すプロセスも含めて工学の対象としよう、という、工学のなかでもメタな視点の学問だ。

 例えば、モノを作るときには設計という行為が不可欠だが、その設計行為を研究の対象とするのである。寸法を決め、材料を選定し、製造プロセスを規定する。それは高い品質と効率性の高い生産性を実現することが求められる、高度な行いだ。長年の経験に裏付けられた勘によって、上手に素早くそれができる人もいれば、そうではない人もいる。困難に直面した際には、ひらめきや、偶然の要素で実現されることもある。

 うまくいく場合とそうでない場合の違いはいったい何なのか。どのような方法論を構築すれば、初心者でも熟練者と同じようなパフォーマンスを発揮できるのか。これを明らかにするのが人工物工学のスタンスだ。当然、人に依存する要素もあるが、方法論として体系化できる部分もある。さらにはITを使ってツール化することもできる。

 設計とはきわめて職人的な、属人的な行為だが、そこには知見が存在し、ノウハウが存在する。これまでなされてきたいい設計は、多くが天才的な職人の手や幸運なひらめきによるものである。しかしその人の頭の中に暗黙知として眠っているそのノウハウをつまびらかにし、形式知化することでより多くの人がそれを応用できるようになる。そこに対して再現性のある、制御可能な方法論を確立するためのアプローチをしよう、というのが人工物工学の考え方なのだ。

 私はブランドを考えるうえでも、同様に捉えたい。私たちの社会に存在しているブランドの多くは天才や偶然の産物であるかもしれない。しかしそこから知見を得ることで、次なるブランドを生み出すための道具やヒントは必ず抽出できるはずである、と。

 とはいえ実際のところ、ブランドは、商品の販売購入に限らず企業活動のあらゆる側面で力を発揮するため、ブランドという言葉そのものは非常に幅広い捉えられ方をしている。当然、一定の戦略立案の方法論が確立されているわけではなく、様々な取り組みがなされているのが現状だ。

 例えば、ある場合はデザイン・ディレクションやプロダクトデザインにおける主義、スタンスの問題として、ある場合は広告宣伝戦略、またある場合は事業展開における戦略立案の問題として語られる。違う場合には企業と消費者の間のコミュニケーションの問題である、と新たな視点で語ることもできるし、さらには、企業の組織戦略における切り口としてのブランド、ということも論じることは可能だろう。

 どの切り口も間違いではないし、有効だ。しかし、というか、だからこそ、と言うべきか、「ブランドそのもの」を総体として一言でくくってしまえるような理論はまだない。

 そこで、本連載では、今日の社会においてブランドがどのようなものとして捉えられているか、その諸相をケースごとに描き出した上で、その本質に迫るというアプローチをとりたい。その上で、今日の社会のなかで、ブランド戦略の立案、あるいはブランディングがどのような観点で考えられるべきか、ということを明らかにしたい。

 その前準備として、次回は日本におけるブランドの歴史を概観し、今日におけるブランドの発展段階をモデル化することを試みたい。

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