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- 2012/07/27 掲載
【IT×ブランド戦略(1)】ブランドは作れるか?
「どうして売れるルイ・ヴィトン」の著者が解説
経営課題としてのブランドとは
それは、「ブランドを作ることは可能か?」という問いである。つまり、「我々の商品はルイ・ヴィトンのように、一般大衆を対象として、高価でかつ大規模に販売が可能になるのだろうか」ということにつきる。
ルイ・ヴィトン ジャパンの公式サイトによると、2011年も2009年から引き続いて2ケタパーセント増の売上を記録したという。ルイ・ヴィトンが属するLVMHグループの売上高は、2011年下半期より計上されたブルガリの売上を含め、前年比16%増で23,659百万ユ-ロ(約2兆6,271億円、2011年平均換算レート=111.04円使用)、営業利益は、前年比22%増の5,236百万ユーロ(5,844億円)を計上した。近年では、日本よりも中国における成長が目覚しいが、相変わらず日本でも不動の地位を守っている。
あるいは、ブランドの威力を考えるにあたっては、アップルもまた今日において最も重要な存在だ。周知の通り、iPodの鮮烈なる発表以来、アップルが新製品を発表するたびにこぞってメディアは特集し、発売日には、直営店に行列が生まれてきた。商品の供給が不足して、すぐに手に入らないことがあったとしても、それはただちに不満にはつながらず、待つ一時すらもお楽しみ、あるいはエンターテインメントとなっている。
新製品にありがちな初期不良が見つかったとしてもすぐに致命的なクレームにいたることは少ない。時には前向きなフィードバックさえ与えてくれる。新製品の何が素晴らしかったのか、顧客自らが使徒となって広めてくれる。ブログ、ソーシャルメディア、その他のITツールを駆使して、より効果的に。そしてそれらの結果として、驚くべき利益率が発表され、株価は歴史的な時価総額を記録している。このような現象を目の前にして、今日最も力を持っているブランドのひとつがアップルであることに異論を唱える人は少ないだろう。
アップルというブランドは、ファッション界におけるブランドのアナロジーでは捉え切れない力を持ち始めている。来るべき社会のビジネススキームそのものを構築しつつある、と言っても良いかもしれない。
つまり、単に電子機器メーカーとして端末、つまりモノを販売するだけにとどまらず、それを通じたサービスやデータ販売事業モデル、さらにはそこでのアプリケーション市場を構築するなど、モノにとどまらず、急激に進化しつつあるIT環境を前提とした、複合的なサービスを提供しているからだ。
この動きに刺激されて、他のIT企業も同様の分野を市場ととらえ、こぞって参入を始めている。このようなあり方は「企業活動」として考えるだけでは狭すぎる。もはや「社会現象」の様相を呈していると言える。
経営者なら誰しもが考えるだろう。自分たちが日々生み出し、宣伝し、販売している商品はなぜそうならないのか?在庫管理や納期との戦い、クレームへの対応、顧客との価格交渉、競合との価格競争、なかなかヒットにつながらない新商品・・・。すべての企業活動においてルイ・ヴィトンやアップルのような華麗な展開とは程遠い。これは消費財メーカーに限った話ではない。例えば、人材サービスのような企業であっても、その業界なり業態で、そのような地位を勝ち取ることがなぜできないのか、という問いは成り立つ。
もちろんアップルにだって課題もあるし、程度の差こそあれ、同様の悩みもあるには違いない。しかしやはり、ブランドのある企業とそうでない企業は、社会におけるあり方がまったく違うのである。
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