2012年は、日本におけるNFCの胎動の年
2000年代から、RFIDや非接触ICカードのような近距離無線通信技術が普及しはじめた。これらは、利用者やサービスごとに異なる仕様の規格であった。それがNFCの時代になり、どのように変わったのだろう?野村総合研究所の藤吉栄二氏は「NFCには、狭義(無線通信の部分)と広義の(推進団体が策定する仕様)において2つの定義がある」と説明する。
まず狭義の意味では「NFCは国際標準規格として承認された、13.56MHzの近距離無線通信技術である」ということだ。一方、広義の意味は、狭義のNFCを用いたシステム構築に必要な機能や仕組み全般を示すものであり、「NFCフォーラムなどの推進団体が策定するプロトコルやデータフォーマットも含めた仕様」ということになる。
NFCは、技術的な黎明期を経て、いよいよビジネスへの検討段階に入ったといえる。この9月にはJALが“おサイフケータイ/NFC”に対応した「JALタッチ&ゴー」をスタートし、また10月にはNTTドコモとマスターカードが世界41ヵ国でNFC決済サービスに向けた業務提携に合意した。
藤吉氏は「2012年は、日本におけるNFCの胎動の年になるだろう。この動きは日本に限ったものではない。世界では2015年までに、30%以上の携帯電話にNFCが搭載され、決済や交通乗車券、電子チケット、クーポン、アクセスコントロールなど、従来のおサイフケータイのようなサービスが可能になる」と説明する。
今後は、世界の主要スマートフォンにもNFCが搭載される予定で、ガートナーは2015年に全世界のスマートフォンの50%程度がNFC搭載機になると報告している。そしてNFC搭載スマートフォンでは、SNSとの連携サービスや、M2Mを利用した機器コントロールなども大いに期待されるところだ。
実際の企業利用も広がっている。藤吉氏は、NFC搭載スマートフォンによる最新の活用事例として、期間限定のカフェ「REVLON Beauty & Love Museum」で実施されたイベントについて紹介した。この来場者は、会場で配布されたNFCタグ内蔵リストバンドを装着する。もし、お気に入りの展示物があれば、その横にあるNFCスマートフォンにリストバンドをかざす。するとFacebook上のREVLONページに「いいね!」がカウントされ、個人ページにもコメントが投稿される仕組みだ。これにより、通常よりも「いいね」が10倍も増え、Facebookのリーチも23万人弱まで伸びたという。
もう1つの事例は、NFCを利用した海外での決済サービスだ。米国、英国、オーストラリア、シンガポール、ポーランドなど、全世界でサービスが拡大しているという。
ただし、決済サービスは「NFCのキラーコンテンツになるかもしれないが、まだ普及というところまでは至っていない。今後、本格的な普及となるか、注視していく必要がある」(藤吉氏)とした。
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