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  • 2013/03/27 掲載

「AWSのビジネスが8倍に」「引き合いの過半数がクラウド」クラウドでSIはどう変わるか

クラウドはビジネスの変革

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クラウドに積極的に取り組んでいるシステムインテグレータ(以下、SIer)たちは、お客さまの声をどう聞き、どのような戦略で望もうとしているのか。3月15日に都内で行われたAmazonクラウドのイベント「JAWS DAYS 2013」では、クラウドにフォーカスしたSIを展開する3社の代表が登壇し、「クラウドファースト時代に求められるシステムインテグレータ像とは?」というテーマでディスカッションを行いました。

Publickey 新野淳一

Publickey 新野淳一

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。大学でUNIXを学び、株式会社アスキーに入社。データベースのテクニカルサポート、月刊アスキーNT編集部 副編集長などを経て1998年退社、フリーランスライターに。2000年、株式会社アットマーク・アイティ設立に参画、オンラインメディア部門の役員として2007年にIPOを実現、2008年に退社。再びフリーランスとして独立し、2009年にブログメディアPublickeyを開始。現在に至る。

 パネラーの大石氏はAmazonクラウド専業のSIerであるサーバーワークスの社長、瀧澤氏はSCSKのクラウド事業の中心人物、日立製作所の中村氏はクラウド事業の責任者です。

 ディスカッションの内容をかいつまんで紹介しましょう。

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左から、司会のアマゾンデータサービスジャパン ソリューションアーキテクト 片山暁雄氏、サーバーワークス 代表取締役 大石良氏、SCSK クラウド事業本部 瀧澤与一氏、日立製作所 情報・通信システム社 クラウド担当本部長 中村輝雄氏

社内の軋轢(あつれき)があっても黙らせる(笑)

片山氏:今日はシステムインテグレータの3社に来ていただきました。私はモデレータの片山です。最近、エンタープライズソリューション部というのができまして、その部長になりました。

 まずは3社のみなさまに、それぞれクラウドへの取り組みを始めた理由をお伺いします。

大石氏:最初にAWSに触ったのは2007年でした。私たちは大学向けに合格発表のシステムを提供していました。合格発表というのは発表の日の朝10時から11時のためだけにWebサーバを200台くらい必要でした。

 これをどうにかしようとエンジニアが見つけたのがAWSで、これはすごいと。で、2008年には社内でサーバ購入禁止令を出して、社内のシステムやサービスをどんどんAWSに乗せていきました。これがうまくいって、ビジネスになると。そこで2009年からAWS一本でビジネスをしようということにしました。

瀧澤氏:私は2009年頃に技術開発部にいまして、クラウドでこれからITが変わっていくと、5年以内にクラウドがITの中核になるのではないかと予想していました。そこで、我々自身もデータセンターを持っていて、AWSのようなパブリッククラウドとのハイブリッドになるのではないかと。なので両方の管理や移行することを考えたツールを作ったり、社内の説得などをしてきました。

中村氏:僕は日立の中でエマージングなテクノロジーをやる人に結果的になっていまして、90年代はWideをやったり、Javaは94年から始めていたり。クラウドも、クラウドという言葉がなかった2006年あたりから自前でやり始めていました。

 日立としてはいろんなお客さまがいらっしゃるので、我々の得意なところは自社でやりますが、スケーラブルなところやグローバルなところはAWSを使うとか、ハイブリッドでやればいいと思っています。

片山氏:たとえば、既存のデータセンターがあるとクラウドビジネスとぶつかるといった心配があると思いますが、そういう声はないのですか?

中村氏:社内にはそういう意見も多いですが、私が4月からクラウドの責任者なので、あっても黙らせてやろうと思います(笑)。

AWSのビジネスが8倍に(大石)、引き合いの過半数がクラウド(瀧澤)

片山氏:そもそもこのパネルをやろうとした理由は、日経コンピュータで「クラウドファースト」という特集が先日組まれまして、ユーザー企業が「クラウドを使いたい」というような時代になってきたと。

 そういう意味でエンドユーザーの動向をみなさんにお伺いしたいのですが。

大石氏:弊社の2012年のAWS事業は、2011年の8倍になったんですね。それだけ2012年はインパクトがあったんです。「AWSを使いたいので、できる会社を探している」というお客さまが増えています。

 いままではインダストリーカットで流通業や製造業といった業種がクラウドに積極的だと言われていましたが、2012年はもうインダストリーカットではありません。共通しているのは「新しい技術を使って、やりたいものを実現しよう。運用で苦しんでいた部分をAWSで削減し、その分新しいチャレンジをしよう」というお客さまがクラウドを使い始めています。

瀧澤氏:流通、製造、サービス業などはクラウドに積極的だと思います。金融や文教は自分でデータセンターを持っていることが多く、クラウドに積極的ではないと思われてきましたが、そういうところでもAWSを使うとメリットがあるのではないかと模索し始めているようです。

 IR的に明確に数字は出せないのですが、私たちは2009年ぐらいからAWSのビジネスを始めていて、また自分たちのデータセンターでもサービスを提供しています。実は2009年からずっとAWSを含む共有型クラウドの引き合いの比率は上昇し続けていて、ついに半数以上になりました。引き合いの時点でこれくらい数が増えているというのを実感しています。

中村氏:去年の夏くらいに潮目が変わったと思っています。それまではプライベートクラウドで仮想化しましょう、というのがほとんど。大手のお客さまはそうでした。それと、パブリッククラウドではセールスフォース・ドットコム。このどちらかでした。

 しかし去年の夏あたりからパブリッククラウドを本当に真剣に考えるお客さまが非常に増えてきた。比率で言うと全体の売り上げのだいたい半分くらいが本番システム、基幹システムでクラウドを使っておられます。残りの半分が開発環境で、残りがデスクトップ仮想化のDaaSで使われている。この一年で様変わりしています。

片山氏:原因だと思い当たることはありますか?

中村氏:たぶんAWSにしても社内で試しに使っていたんだと思います。それが結構使えるじゃないかという評価が去年の夏くらいにあったのかなと。それからゴーがかかって引き合いが増えているのかなと思います。

片山氏:私も一昨年の頃はまだ案件の種まきをしていて、去年半年くらいかけて検証して、使えるようになったと考えるお客さまが多いと感じています。

中村氏:あと最近多いのはSAP on AWSで、SAPの開発環境にトライしようというのが増え始めたようですね。

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