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  • 2014/09/29 掲載

nanapi けんすう氏とfreee 佐々木 大輔氏らが語る、いま起業家とVCが挑戦すべきこと

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意外に思われるかもしれないが、日本は、スタートアップ企業育成に力を入れている国だ。2013年以降、産業革新機構をはじめとする官民ファンドが数千億円規模の資金をつかって企業支援を進めるなど、近年スタートアップ周辺はバブル化しているといってもよい。先日開催されたイベント「Startup Asia Tokyo 2014」では、ベンチャーキャピタリストと若手CEOのパネルディスカッションが行われ、それぞれの抱える課題と、スタートアップ企業がさらなる高みを目指すための建設的な議論がなされた。

執筆:フリーランスライター 吉田育代

執筆:フリーランスライター 吉田育代

企業情報システムや学生プログラミングコンテストなど、主にIT分野で活動を行っているライター。著書に「日本オラクル伝」(ソフトバンクパブリッシング)、「バックヤードの戦士たち―ソニーe調達プロジェクト激動の一一〇〇日 」(ソフトバンクパブリッシング)、「まるごと図解 最新ASPがわかる」(技術評論社)、「データベース 新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」(共著、英治出版)がある。全国高等専門学校プログラミングコンテスト審査員。趣味は語学。英語と韓国語に加えて、今はカンボジア語を学習中。

スタートアップ周辺は再びバブル化している

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(写真左から)モデレーター 本間 真彦氏、古川 健介氏、佐々木 大輔氏、小林 雅氏、高宮 慎一氏

 今回、パネリストには、CEO側からSaaSで会計ソフトを提供するfreee 代表取締役の佐々木 大輔氏、メディアとコミュニティサービスを展開するnanapi 代表取締役の古川 健介氏(けんすう氏)が登場した。

 一方、ベンチャーキャピタリスト側から参加したのはインフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナーの小林 雅氏、グロービス・キャピタル・パートナーズ チーフ・ストラテジー・オフィサーの高宮 慎一氏である。

 モデレーターであるインキュベイトファンド代表パートナー 本間 真彦氏は、冒頭から本題に入った。「バブルと思うか」とパネリストに尋ねたところ、小林氏は「バブルといっていいでしょう」と迷わず答え、以下のように続けた。

「日本の場合、国がスタートアップ企業育成に力を入れており、産業革新機構に代表される組織が数千億円規模の政府出資金で企業支援を行っています。そのボリュームはスタートアップ企業支援全体の1/3に上り、国と民間の力が共存しているのが日本の状況です」(小林氏)

 つづいて高宮氏は「バブルはバブルだが、“Web2.0”の頃とは違う」と補足した。当時はスタートアップ企業が見えない実体なきバブルだった。当時と違って、今は実際にモノやサービスの存在が確かな企業がある。ただその一方でそうでない企業もあり、その両方にお金が回っている。玉石混交の感があるという。

 企業側の佐々木氏からすると、資金調達しやすくなった現在の環境がおかしいという感覚はないようだ。「freeeはSaaS企業だが、米国ではこのジャンルはすでに投資の一分野でスタートアップ企業もひしめいているが、日本はまだまだ少ない。これは“とりあえずタンクに水はたまったけれど、その流れ先がない”という状況である」と佐々木氏は表現した。

 しかし、nanapiのけんすう氏はこの現状に「正直、怖さも感じる」という。

 nanapiが2010年に資金調達した際に周囲からは「すごく高い」と非難されたのに、今は同じ金額で「安すぎる。なぜあんな金額を提示したのか」とまったく異なるコメントが返ってくるという。ただ、集められる今にできるだけ資金を集めておけば、あとでつらくなったときに、それでしばらく息継ぎができるのでありがたくもあると起業家らしい意見を述べた。

起業家、ベンチャーキャピタルが挑戦すべきこと

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 志あるスタートアップ企業にとって、10億、20億という資金なら調達しやすくなってきている今の日本だが、シリコンバレーとは違い、まだまだ課題があると当事者は実感している。

 高宮氏が指摘した課題は、投資サイクルの形成である。資金調達できたスタートアップ企業がそれを使って“骨太のエグジット”を成し遂げ、そのお金がまた次世代のスタートアップ企業に回るというサイクルを作らなければならない、それが次のチャレンジだという。

「また、日本には非常に上場しやすいマザーズという市場が存在することも、ある意味問題です。上場しさえすればいいのであれば簡単にかなうという恵まれた環境は、逆に起業家を小さな夢で満足する誘惑にさそっています」(高宮氏)

 同氏はまず最初はマザーズ上場を目指すでもいいが、そこで得られた資産をうまく使って、さらに上をめざす企業成長モデルの確立も必要であると強調した。

 佐々木氏は、この資金循環という点に関して一つのアイデアを出した。そのアイデアとは「上場して成功した起業家は早々に引退する」というものだ。

【次ページ】レッドブル、ロクシタンはなぜグローバルで成功したのか?

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