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- 2017/03/10 掲載
メルカリ、SmartHRに続け――日本は本当に「起業大国」になれるか
日本政府の起業支援策で起こった変化
日本政府はアベノミクス第3の矢として「成長戦略」を掲げているが、その最重要項目として起業支援を前面に打ち出し、国内における起業のハードルを下げるべく数々の施策を実行に移している。この取り組みが目に見える成果を上げるにはまだ時間を要するだろうが、スタンフォード大学の櫛田健児氏はジャーナル「Asian Research Policy」の中で、「日本政府の起業支援策により、日本国内に活発な起業エコシステムが誕生しようとしている」と述べている。
たとえば、トヨタ、キヤノン、住友商事などが出資して設立された政府主導の投資ファンド「産業革新機構(INCJ)」は、多種多様な業界や業種に対して2兆円を超える投資を行っている。
特にフィンテック、バイオテクノロジー、ゲーム、人工知能など、急速な技術革新が期待される業界の活性化を積極的に支援している。
全体の投資額よりも「変動」に注目せよ
一般的に、日本国内のスタートアップ企業に対する投資額は米国に比べ非常に少ないと言われている。しかし、起業や投資の機運を判断する際には、全体の投資額よりも、「毎年の投資額の変動」にこそ注目すべきだ。ベンチャー企業を支援するジャパンベンチャーリサーチの報告書によると、2016年は前年に比べ投資が顕著に活発化しており、投資額は上半期だけで988億円に達している。
また早稲田大学の報告書によれば、日本国内の投資額は2008年にいったん減少したものの、その後は起業の件数と共に投資額も堅調な増加傾向にある。
これは、日本国内で「ベンチャーロジック」と呼ばれる新しい思考プロセスが生まれたと考えられる。
起業のエコシステムを好循環させるためには
その一方で、懸念材料もある。スタートアップ企業への投資額はたしかに増加しているが、その大半は事業拡大の段階に入ったスタートアップ企業に集中しており、起業準備段階または起業直後のスタートアップ企業に流入する資金は、全体のわずか31%に過ぎないのだ。
そのため、多くのスタートアップ企業が、起業当初は創設者の自己資金に依存しているのが現状である。
とはいえ、これをもって悲観的になる必要はない。現在では大手企業の多くが独自のベンチャーキャピタルを運営し、革新的なビジネスアイデアの起業支援に積極的な姿勢を見せはじめている。
これらの大手企業は、スタートアップ企業への投資を繰り返すことで貴重なノウハウを蓄積し、有望なビジネスアイデアの選択眼を養い、より自信を持った投資を行えるようになる。そうした経験を蓄積した企業系のベンチャーキャピタルから、自信をつけた投資家がスピンアウトして独立するケースもある。
つまり、ベンチャーキャピタルの数が増えれば、成功するスタートアップ企業の数が増え、活況を呈する投資業界に新規参入するベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の数も増えるという、好循環の起業エコシステムが生まれるのだ。
【次ページ】起業支援のポイントは「大学生」と「中高年」の登用
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