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- 2017/11/20 掲載
インドア農業のPlenty(プレンティ)とは? ソフトバンクやベゾスから大型資金調達も
「インドア農業」が注目を浴びるワケ
FAO(国際連合食糧農業機関)の調査では、2050年に90億人に達する世界人口に必要な食糧を生産するためには、70%の生産性向上が必要とされる。
都市部への人口集中も食糧問題に影響を与える。国連が発表した「2016年の世界の都市」によると、世界人口の54.5%は都市部に住んでおり、その割合は2030年までには60%を超えると予測されている。
中でも東京圏は、世界で最も人口が集中したエリアだ。今後の人口減少が予想される日本にあっても東京圏に人口が集中し続け、その人口は2030年に3700万人を超える。農地の確保が難しい都市部で食糧生産を効率的に行うため、農法およびサプライチェーンの進化が求められている。
この世界的な食糧問題の解決策として期待されているのが「インドア農業」だ。その中の「垂直農法」という手法では、倉庫に積み上げられたコンテナのように、トレイを垂直に並べて作物を栽培する。温度を調節する空調機能と光源となるLED照明によって栽培するため、農薬も日光も必要ない。極めて小さな空間で作物が栽培できるので、生産性が飛躍的に向上する。また、消費者に近い立地で栽培できるため、新鮮な食材を素早く届けられるのも利点だ。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドらが出資する「プレンティ」とは?
インドア農業を手掛ける企業が増える中、今、最も注目されているのがシリコンバレーで創業されたプレンティだ。2017年7月には、ソフトバンクを含めた投資家から、農業ベンチャーとしては破格の2億ドルの資金を調達し、今月にはリクルートも出資したと発表された。プレンティの特徴は、最新技術をインドア農業に取り入れている点だ。センサーやLEDを駆使し、データ解析に基づいた最適な農法を採用している。農薬も遺伝子組み換え作物も使わず、水の使用量は99%削減できる。
プレンティの共同創業者 マット・バーナード(Matt Barnard)氏によると、多くの食料品店にある野菜や果物は、何日もかけて3000マイル(4828キロ)の距離を運ばれているという。しかし、場所を選ばないプレンティのインドア農業は、消費地に近い都市部で栽培できるため、50マイル(約80km)で届けられる。安全・安心な作物を少ない輸送コスト・時間で届けられるのは、大きなメリットとなる。そして、プレンティの生産性は従来の農法に比べて350倍に達するとされる。
プレンティのインドア農業では、複数の種類の野菜や果物を栽培できる。特に従来のサプライチェーンでは鮮度が落ちるため、一般的な食料品店には並ばなかったレッドリーフレタスやケール、水菜の一種などを栽培し、消費者へ届けられるようになった。
日本のインドア農業では「スプレッド」が注目されている
インドア農業、特にプレンティが採用する垂直農法は、2016年から2022年まで年率24.8%の急成長が期待され、2022年には市場規模は58億ドルに達すると予想されている。人口増加の影響により、アジア太平洋地域での成長率が高く、中国や日本での市場拡大が見込まれる。都市部での活用が増えるインドア農業は、世界的にも事例が増えてきた。ドイツ・ベルリンのスーパーマーケットでは、店内に栽培スペースを設置し、収穫した野菜を最も新鮮な状態で消費者へ提供できるような取り組みを行った。
ハリウッドにあるレストランでは、店の軒先に垂直農法で野菜や果物を栽培する仕組みを導入した。見栄えを良くするだけではなく、少ない水や電気で作った新鮮な作物を料理に取り入れている。
日本では、京都のスプレッドが開発したロボットが栽培するインドア農業が注目された。レタス栽培に必要なほとんどの作業をロボットが行い、生産性を2倍以上向上させたとされる。LEDの導入により、電気代はおよそ3分の1で、使用した水の98%は再利用が可能だという。
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