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  • 2015/06/24 掲載

古川 裕倫氏に聞く、優秀・平凡・ダメ部下を適切に動かすノウハウ

優れたリーダーになるための条件とは?

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古川 裕倫氏は、商社が世界を駆け巡った全盛時代、1977年から23年間にわたって三井物産のエネルギー部門や情報産業部門で活躍してきた人物だ。その後、畑のまったく異なるホリプロの取締役として転身。現在は大手企業の社外取締役を務め、多久案の代表や、世田谷ビジネス塾の私塾も主宰し、ビジネスの講演活動を精力的にこなしている。先ごろ『部下を動かし、成果を上げる! リーダーになったら必ず読む「任せ方」の教科書』(以下、『任せ方の教科書』)を先ごろ上梓した同氏に、優れたリーダーになるための心構えなどについて話をうかがった。
(聞き手は編集部)

部下に仕事を任せて、リーダーは自身の仕事に専念すべし

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多久案 代表、世田谷ビジネス塾主宰
古川 裕倫氏

──まず、『任せ方の教科書』を執筆しようと思ったキッカケは何でしょうか?

古川氏:若手社員に「どういうときにモチベーションが上がるのか?」と質問すると、「仕事を任せてもらえたとき」と答える人が多いのですが、その一方で中間管理職に「部下に仕事を任せているか?」と訊くと、「あまり任せていない」という回答が返ってきます。なぜ、そんなギャップが起きるか。そのギャップを埋めて、部下に仕事を任せると、良いことがあるということをお知らせしたいと思いました。

 ただし仕事を任せると言っても、すぐには難しいかもしれません。私も三井物産に勤めていた時代、若手に多くの仕事を任せてきましたが、まずコーチングよりもティーチングが先だと思います。新入社員の場合は、いろいろと厳しく教えたあとに、仕事を任せればよいということです。失敗もするでしょうが、それでも長い目でみれば仕事を任せて育てていくことが重要ですね。

──リーダーの視点から、なぜ仕事を任せなければいけないのでしょうか?

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『部下を動かし、成果を上げる! リーダーになったら必ず読む「任せ方」の教科書』

古川氏:リーダーの仕事は、目標を明確にして成果を出すことです。しかし「リーダーが朝から晩までブルドーザーのように働いていてよいのか?」というと、それは違います。成果を出すには組織力やチームワークが必要です。リーダーが仕事を抱えるのではなく、組織として部下に任せていくことが大事。それにより、目先のことでなく、自分がすべき中長期的な戦略を錬る余裕が生まれます。船で島を目指すときに、風向を読んで考えるのがリーダーの役割で、食糧をチマチマ積むことはリーダの仕事ではありません。

──ご著書に「できない部下こそ仕事を任せるべき」とあります。普通逆のように思えるのですが、その理由を教えてください。

古川氏:仕事ができないからといって、上司が諦めてしまってはいけません。一般的に部下には「何も言わなくても勝手にどんどん仕事をする人」「指示すれば自分で考えて仕事をする人」「指示してもなかなか仕事をしない人」という3つに分類できます。できない部下は最後のパターンです。だからこそ中間管理職は、その部下ができそうなことを見つけて、的確に指示を出し、少しでも仕事をしてもらわねばなりません。

 ただし、会議や研修などでは、下のレべルに合わせると他の者が飽きてしまい、全体のモチベーションが下がってしまうこともあります。そのため、どこをターゲットにするのか明確にしておく必要があります。事業でみれば強いところを伸ばすほうが効率的であり、人材面でも同様のことが言えるでしょう。

仕事を上手く任せられるようになれば、リーダーとして成長した証

──なるほど。では逆にリーダーがやってはいけないことはありますか?

古川氏:能動的に仕事のできる部下に「ああしろ、こうしろ」とうるさく言うのはよくありません。レベルに合わせて指示する必要があります。「親バカはよいが、バカ親はダメ」ということですね。部下を伸ばしていくときは、ある程度の失敗も考慮しながら「とにかくやってみろ」と後押しする度量も求められます。部下の能力や成長に合わせながら、仕事を任せていくわけです。

 肩を叩いても進まない人は、前に押すしかありません。逆にどんどん先に進んでしまう人には、地雷を踏まないように止めなければいけません。そういう判断は、相手によって変わってくると思います。もちろん部下だけでなく、リーダーも成長するものです。松下 幸之助が創業したとき、あれだけリーダーシップがあったかというと、そうではないと思います。やはりリーダーが部下に仕事を上手く任せられるようになることが、自分自身の成長の証左でもあるわけです。

──仕事を任せるときは、丸投げはいけないと言われますが、その違いとは何ですか?

古川氏:「任せる」というのは、相手の成長を考えて、スケジューリングしながら仕事を与えることです。「丸投げ」は自分が嫌なこと、やりたくないことを、そのまま投げること。あるいは部下の成長や経験の具合を加味せず、とにかく仕事を投げることです。それでは部下がつぶれてしまいます。最も良い方法は、部下に達成感を持たせるようにすることです。10mしか泳げない子供に、いきなり100m泳げと言っても嫌になるだけです。まず15mの地点に立ち、ここまで来なさいと。次に25mまで来なさいというように、達成感を与えながら仕事をさせる、それが「任せる」ということです。

──リーダーが、部下を褒める際の方法も重要だとお聞きしています。

古川氏:そもそも日本人は相手を褒めることが苦手です。しかし、相手の成長のためにはちゃんと表現したほうが良いでしょう。ただし、褒め方にもひと工夫があります。

 たとえば「キミの行動はよい」と言ってしまうと、他の部下との比較になってしまいます。しかし「私は、それが気に入った」と言えば、上司が気に入ったことで、他人との比較になりません。褒めるときは、「自分」や「会社」を主語にするとよいでしょう。それから人前で褒める際は部分否定を入れること。「彼は生意気ですが、やる気があります」「おっちょこちょいですが、お客様を一番に思っています」というように、ダメな点も入れながら、ほめてやることがコツです。

 また自分の上司にも、部下が頑張っていることをアピールしましょう。そうすると、そのことが必ず部下にも伝わり、彼らのモチベーションも上がります。逆にできないことも、きちんと伝えなければなりません。そのときは「ここまでは達成できた。これからはこの分野もやろう」というと、期待されているから頑張ろうという気になります。「これから」という言葉には新規という意味も含まれており、決して悪い言葉ではありません。

【次ページ】 部下に仕事に任せる前に、全体像が分かる「完成形」を見せる

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