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  • 2016/08/25 掲載

ファブラボが「STEM教育」に「IoT」と「3Dプリンタ」で取り組む理由

#MakerFaireTokyo2016 レポート

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米国政府は「Science」「Technology」「Engineering」「Math」という4つの頭文字からとった「STEM(教育)」分野に対して、2016年に約3700億円の予算を計上するほど力を入れている。経済発展や国際競争力を強化するために、教育現場で重きを置きたい領域であるSTEM教育だが、日本国内でもこれを推進する動きがある。メーカームーブメントをけん引するファブラボ鎌倉 代表 渡辺ゆうか氏が、民間と教育を結ぶSTEMへの取り組みについて語った。
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未来のモノづくり人材を支えるSTEM教育とファブラボの取り組み


STEM教育に必要な3つの技術とは

 「STEM」とは「Science」「Technology」「Engineering」「Math」という4つの頭文字からとった略語だ。 STEM教育は、言葉が意味するところの科学・技術・工学・数学のみならず、各分野を横断した教育分野になっており、「音楽」や「図工」などの分野を統合しつつ、新しい学びへと発展が期待できるとされている。

 欧米を中心に、グローバルではSTEMに関して力を入れており、この領域が重要であることは間違いのだが、日本におけるSTEM教育の予算は減る方向にあるという。科学と数学に関する学力面で見れば、日本の平均的な中学生(15歳)は世界のトップレベルに入っているが、大学での世界ランキングは落ちてしまっている。このような状況のなかで、どうやってSTEM教育を展開していけばよいのだろうか。

 メーカームーブメントの祭典「Maker Faire Tokyo 2016」のセミナーに登壇したファブラボ鎌倉 代表 渡辺ゆうか氏は「議論が先にあって学ぶのでなく、実際に自分でつくったモノの中に、結果としてSTEM教育の要素が入っている形のほうがよいと考えている。3Dプリンタやレーザーカッターを使って、アイデアからモノをつくる『ファブリケーション』や、コンピュータと実世界をつなぐIoTで実現するフィジカル・コンピューティング、さらに個人のアイデアを増幅するプログラミングという3つの技術が重要になるだろう」と説く。

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ファブラボ鎌倉
代表 Co-Founder
渡辺ゆうか氏

 もちろん、これらの技術を習得したからといって、STEM教育の領域を網羅しているわけではない。まだ日本の教育ではサイエンス分野が弱く、特に今後はバイオ系の教育が強く求められていくだろう。渡辺氏は次のように続ける。

「技術も常に進歩している。大事なことは技術は目的でなく、あくまで手段であること。学ぶ行為や姿勢も必要だ。モノをいじくって試行錯誤する『ティンカリング』や、協働しながらの創造、コミュニティでの学び合い、知識やノウハウを場所や時間を問わずにシェアすることも大切だ。いずれにしても学習のアプローチは1つではない。学校では教えてくれない自身の学びのスタイルに、いかに気づけるかということが重要だ」(渡辺氏)

ファブラボが取り組むSTEM教育とメーカーズ育成

 ファブラボは「Fabreication」(製造)と「Fabulous」(素晴らしい)という言葉の造語だ。ファブラボと呼ばれる施設は、渡辺氏が代表を務めるファブラボ鎌倉をはじめ現在全世界89か国に1000拠点ほどあり、各拠点でネットワークが組まれ、交流が図られている。さまざまなデジタル工作機器を取り揃え、「MAKE」「LEARN」「SHARE」のコンセプトのもとに、個人の自由なアイデアに基づくモノづくりを支援している一般市民向けのモノづくり工房となっている。

 モノづくりと一口にいっても、教育現場で一体何から始めたらよいのか分からないといった声を聞く。そのような状況で、ファブラボを中心とするメーカーズ・スペースの人々は、モノづくりを積極的に行ってきた。そこで渡辺氏は「学校教育とメーカーズを合わせていけばよいのではないか?」と考えたという。

 渡辺氏は「20年後の将来を見据え、どのような社会が求められるのか? という点を念頭におきながら、エネルギーの供給や、資源の循環、人々の活動などを考えて、教育を進めていくほうが自然だろう。その中でテクノロジーが重要になってくるが、社会全体で変えるべき点は変革し、変えずに済む点はそのまま継続するという判断が必要になる」と説く。

【次ページ】STEM教育に関心のある人は、ファブラボにも関心がある

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