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  • 2016/09/29

アニメ「攻殻機動隊」のAI搭載型戦車「タチコマ」の社会実装は可能なのか

#MakerFaireTokyo2016 レポート

SFにおけるロボットの存在は、これまで多くの人々に多大な影響を与えてきた。1990年代に人気を博し、現在も根強いファンをもつ日本のSF漫画・アニメ「攻殻機動隊」もその1つだ。現在ハリウッドで実写版映画も製作中で、予告のメイキング映像もネットで公開されて話題になっている。攻殻機動隊シリーズのなかには、小型多脚思考戦車「タチコマ」が登場する。「Maker Faire Tokyo 2016」では、このタチコマに関わるデザイン、ガレージキット、ロボットなどの製作に挑戦したメーカーズが集まり、SFを活用したモノづくりの現状と課題、さらに今後の展望について語り合った。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。


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(写真左から)むーすけ氏(原型師)、寺岡賢司 氏(アニメーションメカニックデザイナー)、松村礼央 氏(karakuri products 代表)

攻殻機動隊S.A.C.の「タチコマ」に関わるメーカーズ

 SFアニメのファンで「攻殻機動隊」をご存じない方は少ないだろう。本作品は1989年に士郎正宗氏が描いたSF漫画で、押井守 氏などによってアニメ化された。サイバーパンク的な世界観の近未来日本を舞台に、主人公の草薙素子 率いる公安警察組織「公安9課」の活躍を描いた物語だ。

 アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(以下、攻殻機動隊S.A.C.)に登場するタチコマは、ロボットのような自律型多脚戦車だが、「人間化する機械」を体現した存在でもある。人工知能を搭載した思考型コミュニケーションロボットとして多くのメーカーズに人気が高く、二次創作の対象にもなってきた。

 司会を務めたkarakuri products 代表の松村礼央 氏は、10年前に1/10スケールのタチコマを光造形によって製作し、それが公式プロモーション用ロボットに採用されたことで知られている。

 同氏が今年開始したのが、タチコマを題材にコミュニケーションロボットの社会実装を目指し、タチコマ・リアライズプロジェクトだ。現在DMM.com、海内工業らと1/2サイズのタチコマを制作中で、経済産業省の「平成28年度ロボット導入実証事業」にも採択されている。

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「攻殻機動隊」のタチコマを活用した創作活動と社会実装への試み

 アニメーション・メカニック・デザイナーとして、数多くの作品を手掛けてきた寺岡賢司 氏は、攻殻機動隊S.A.C.シリーズのタチコマや、機動戦士ガンダム00などのメカデザインを手掛けてきた人物として有名だ。またタチコマを初期からフルスクラッチし、ガレージキットなどを製作してきた原型師のむーすけ氏も、ホビー系雑誌でお馴染みの人物だ。

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チームPartmatonが製作した1/5スケールのタチコマ。人の追従やカメラによる顔認識などの機能も搭載していく予定
 学生と社会人の3名のメンバーのチームPartmatonは、タチコマに魅了され、二次創作として1/5スケールモデルを製作。このミニタチコマは内部の一部と外装を再現し、関節も稼働できて、原作に近い動きが可能だ。レーザーレンジファインダーによる追従、カメラによる顔認識、音声認識、WiFiでの遠隔操作機能なども搭載していく予定だ。

 高専ロボコン/ロボカップ経験者で大学院の同期二人組、チーム青葉山技研は、「攻殻機動隊ARISE」に登場する思考戦車「ロジコマ」を製作中。この二次創作モデルは、制御ボードにRaspberry Piを採用し、会話をしたり、脚を動かしたり、走行することが可能だ。現在はカメラやマイクの情報をベースに、ヘッドマウントディスプレイで操縦できるシステムの開発も進めているそうだ。

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チーム青葉山技研は「攻殻機動隊ARISE」に登場する「ロジコマ」を製作。HMDで操縦できるシステムの開発も進める

作家やデザイナーと、二次創作を試みるメーカーズの関係をどうすべき?

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 討論を始めるにあたって、松村氏は「オリジナル作家がSFを発信し、それを消費者が受け取っている。しかし、それを消費するだけなく、オリジナルからイメージを膨らませ、二次創作するメーカーズもいる。彼らのなかには、自身で情報を発信する人も多い」と現状を分析する。

 そのうえで同氏は「SFから具現化されたロボットの学びをメーカーズが共有することで、現在の課題が分かるかもしれない」とし、タチコマの製作において、空想の具現化の際に気をつけている点を登壇者に質問した。

 オリジナルアニメでは、実際にキャラクターの詳細について語られていない点も多い。そこでディテールを想像し、補完しながら造形する必要がある。たとえばタチコマのポッド(頭部)のつくり方に関していえば、オリジナルデザインに準拠しながら、実際の造形物としてつくり上げる工夫が求められる。

「メーカーズのモノの見方によって左右されるが、劇中のアニメを見て、できるだけファンの持つイメージを崩さないように、バランスをとっていくことが大事」という点が、登壇者の共通意見だ。

 個人的にイメージを補完し、二次創作する人が増えてくると、もっと多くのバリエーションが登場するだろう。それらがオリジナルにもよい影響を与えるようになれば、より面白い状況になるかもしれない。

 もう1つ避けて通れない問題が「オリジナルを創造した権利者と、二次創作をするメーカーズの関係や付き合い方だ」(松村氏)。むーすけ氏は「ワンフェスで売られるガレージキットなどは、主催者側の実行委員会から版元などに許諾してもらい、そこで販売ができるようにしてもらっている」と語る。

 この点について寺岡氏は「作り手としては、メーカーズが楽しんで二次創作してくれることはうれしい。営業妨害されるのは困るが、趣味の範囲でやるぶんには良いと思う。金銭授受が発生する際には、版元などにちゃんとコンタクトを取ることが大事」との見解を示した。

 そういったルールを守りながら、オリジナル作品をコミットしていけば、二次創作を行う人も増え、新しい作品を発信するメーカーズや、そのコミュニティも活性化していくだろう。それが業界を盛り上げ、作り手側にもよい影響を与え、全体として両者の関係性を良好にしていくヒントになりそうだ。

 また環境面の変化もある。昔は、作品を発表する場といえばごく一部の雑誌しかなかった。「しかし現在は、インターネットで誰もが手軽に発信することができる時代になった。自分もホームページで発信している」と、むーすけ氏は自身の活動について紹介する。

 かつて、むーすけ氏のホームページをリアルタイムで見て、その影響を受けた村松氏は「多くのメーカーズが、創作活動の情報を見ることによって、次の新しい攻殻機動隊のような作品が生まれる可能性もある」と期待する。

 チーム青葉山技研も「ロジコマの製作に合わせながらリアルタイムで動画を発信していた。公開の目的は、もちろん他人に知ってもらうことだが、発信することで多くのコメントがもらえて参考になり、次作品をつくるモチベーションも上がる」と説明する。

【次ページ】タチコマのようなロボットを社会実装するために

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