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  • 2016/11/18 掲載

日本ヒューレット・パッカード 田中氏は「安定的なだけ」のネットワークを評価しない

連載:「デジタル革新」実践企業のノウハウ

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2015年3月の、米Hewlett Packard Enterprise(HPE)による、米Aruba Networks買収で、日本においても日本ヒューレット・パッカードとアルバネットワークス(以下、Aruba)が統合された。HPEが、無線ネットワーク技術で知られるArubaを買収した狙いは何か。そこには、企業がグローバルなデジタル革新競争に勝つための重要な戦略がある。統合前はArubaのカントリージェネラルマネージャーをつとめ、現在は日本ヒューレット・パッカード Aruba事業統括本部 事業統括本部長をつとめる田中 泰光氏に話を聞いた。
(聞き手:アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰)

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日本ヒューレット・パッカード
Aruba事業統括本部 事業統括本部長
田中 泰光氏

なぜHPEはArubaを買収したのか?

野間氏:昨年、米Hewlett Packardは、PCやプリンタを扱うHPと、エンタープライズ事業を手がけるHewlett Packard Enterprise(HPE)に分社化しました*1。そして、HPEがArubaを買収されたわけですが、まずはその背景についてお聞かせください。

*1:これを受け、日本においてはPC・プリンティング事業が日本HPに、エンタープライズ事業が日本ヒューレット・パッカードに分社化した。

田中氏:HPEは、4つのエリアでお客様のデジタルトランスフォーメーションの推進をお手伝いしようとしています。 4つのエリアとは「ハイブリッド・インフラへの変革」「デジタル・エンタープライズの保護」「データ指向経営の推進」「ワークプレイスの生産性向上」です。

 「ハイブリッド・インフラへの変革」はクラウドとオンプレミスの両方を推進するという意味であり、「デジタル・エンタープライズの保護」は企業のデジタルデータの保護を意味します。そして、「データ指向経営の推進」がビッグデータを経営資源として活用することであり、「ワークプレイスの生産性向上」が、働き方改革を含めた従業員の生産性向上を意味します。この4つのエリアでのデジタルトランスフォーメーションを、HPEは基盤を提供することで支援していきます。その第一歩が、Arubaとの統合です。

野間氏:Arubaというと、無線LANの会社というイメージが強いですね。

田中氏:はい。そのため「HPは無線LAN技術が欲しかった」と思われがちですが、決してそれだけではありません。

 実はIoTが進展すると、これまで従業員1人あたり3~4つだった端末が、数百という単位に増加します。それを確実にネットワーク接続し、セキュリティポリシーを適用するのに、マニュアルではとても追いつきません。

 そもそも大手企業で無線LANが導入されるようになったのは、インテルのCentrino*2が登場してからです。企業内に無線ネットワークが張り巡らされるようになると、セキュリティが重要になりますが、Arubaは、認証サーバと連携したロールベースの無線ネットワーク構築をずっとやってきた実績があります。そして、先ほど申し上げたIoTの時代に対応するため、SDN(Software Defined Network:ネットワーク構成をソフトウェアで動的に制御する技術)のような考え方が出てきたわけですが、Arubaでは、SDN以前から同様な取り組みを続けていました。それが、HPEがArubaを買収した理由です。

*2:インテルのブランドの1つで、CPU、チップセット、無線LANモジュールで構成されたモバイルPC向けプラットフォームのこと。

スタジアムの自席からホットドッグやビールを注文

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アクト・コンサルティング
取締役 経営コンサルタント
野間 彰氏

野間氏:御社が関わったデジタルトランスフォーメーションの事例を、いくつか教えてください。

田中氏:NFLの人気チームであるサンフランシスコ・49ers(フォーティナイナーズ)は、2015年にカリフォルニア州サンタクララにあるリーバイス・スタジアムに本拠地を移転しました。このリーバイス・スタジアムは、おそらくスタジアムのデジタルトランスフォーメーションに取り組んだ最初の事例だと思います。具体的には、ITを活用してスタジアムにおける顧客のエクスペリエンスを向上させるとともに、利益もしっかりと上げる取り組みを行いました。

 スタジアムには2000個のビーコンと1200か所のWi-Fiスポットから構成された、我々が構築した無線LAN環境が整備されています。そして、VentureNextというベンチャー企業が開発したモバイルアプリを使って、できるだけ長時間、観客にスタジアムで過ごしてもらうさまざまな仕掛けを作りました。たとえば、一人一人の予定に合わせてイベントの案内をしたり、余っている席を無駄なく販売したりする機能を提供しました。さらに、購入した席までの道案内、ホットドッグやビールの注文、混雑具合を瞬時に判断して、空いているトイレまで道案内してくれる機能まで提供しています。この取り組みにより、リーバイス・スタジアムは大幅な売上増とコスト削減を実現し、その利益は約2億ドルに達しました。

野間氏:それを御社の無線LAN技術が支えたわけですね。日本でも、スタジアムにかぎらす、アイデアはたくさん出てきそうです。

田中氏:2016年夏季オリンピック・パラリンピックの公式空港であるリオ・ガレオン国際空港でも、将来的に予測される年間約3000万人の空港利用者に対応するため、弊社のネットワークインフラが採用されました。さらに、同空港専用のモバイルアプリを開発し、発着時刻や利用するゲートが変わっても自動的に案内する機能、利用者同士で待ち合わせする機能なども提供しています。

 また、商業施設で人の流れを分析し、その多寡に応じてテナントの賃料を変える取り組みもあります。さらに、米国の軍関係の組織でも弊社の無線ソリューションが導入されています。セキュリティの観点から、我々のソリューションしか選択肢がなかったと聞いています。

【次ページ】 そのインフラはデジタルトランスフォーメーションを支えられるのか?

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