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  • 2017/10/02 掲載

独自のエリアターゲティング技術で起業、元自衛官が語る「勝算までの道のり」

Geolocation Technology 山本敬介社長に聞く

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IPアドレスによるマーケティングの可能性に気づき、2000年に起業して国内唯一無二の企業に成長したGeolocation Technology。インターネットを利用するユーザーの位置情報を、IPアドレスから特定する独自技術が大いに評価された。同技術を導入する企業は、約3000社に上る。元自衛隊基地通信隊の駐屯地で、通信業務を一手に引き受ける部隊に所属していた経歴を持つ代表取締役社長の山本 敬介氏。起業の経緯から、独自技術の特徴、ユースケースなどについて聞いた。
(聞き手/構成:編集部中島正頼、執筆:井上猛雄)

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Geolocation Technology 代表取締役社長
山本 敬介氏

自衛隊の通信基地でネットワークに興味

――自衛隊ご出身とのことで、かなり珍しい経歴かと思うのですが、ネットの世界に入った契機を教えてください。

山本氏:子供のころからコンピュータが好きで、MSXのゲームで遊んでいましたね。そのため将来はコンピュータの勉強をしたいという希望がありました。しかし、1990年前後はコンピュータが今ほど一般的ではなくて、なかなか希望するような仕事、学べる場所がないなと困っていたところ、「自衛隊にもコンピュータを扱う部門がある」と勧誘されたのです。それが基地通信隊で駐屯地どうしを結ぶ部隊で、1992年に入隊しました。主に無線が中心の業務ですが、コンピュータと電話の部門があり、それらを経験しながら4年間を過ごしました。

 自衛隊は独自ネットワークを運用していたため、その流れで自然とネットワークにも興味を持ちました。個人的にニフティサーブに入り、パソコン通信も始めました。インターネットの黎明期でしたが、Macユーザーだったので比較的簡単にインターネットへ接続でき、静岡県で第一号となるプロバイダー(静岡インターネット)に加入し、ネットの世界を知りました。そうなると自衛隊のネットワークが古めかしく感じてしまいまして…(笑)。本格的にネットの仕事をやりたいと思い始めたところ、静岡インターネットの人材募集を知り、飛び込むことにしたのです。

 自衛隊の任期を満了し、ネット業界に入ったのが1996年のことです。当時はまだダイヤルアップで、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)もこれから普及するという頃でした。どの地域プロバイダーもAP(アクセスポイント)を増設していた時代です。毎日の仕事が楽しく、4年間で本当にいろいろなことを学びました。

――そのような状況で起業されることになったのは、どんな理由があったのでしょう?

山本氏:2000年2月にサイバーエリアリサーチ(現Geolocation Technology)を立ち上げました。起業のきっかけとなったのは、静岡インターネットで営業していたときに経験した出来事が大きかったと思います。あるとき、Webにアクセスする県民の割合を教えてほしいというリクエストが静岡県庁からありました。当時はそういう技術がなく、難しいとお断りしていました。また地元のFM放送局がWebにバナーを掲載していたのですが、静岡県を東部・中部・西部に分けて広告を出したいという要望をいただきました。そのとき、「地域ごとに異なる広告を出したい」というニーズがあることを知りました。

 もう1つ、印象に残っている出来事があります。地域でネットの使い方を教えるセミナーを開催していたときのことです。Yahoo!の天気情報にアクセスする方法を説明していると、「新聞を見たほうが早い」と言われてしまいました。これはショックでした。自分ではインターネットが大変便利だと思っていたのですが、まだ地方の人にとってはインターネットは使いにくいものだったのです。その原因を突き詰めると、最終的に「インターネットユーザーの位置情報がわからないからだ」という理由に突き当たりました。

IPアドレスから位置を特定するオンリーワン技術を開発

――早い段階からエリアマーケティングに着目していたのですね。そのとき、すでに可能性を感じていたのですか?

山本氏:はい。プロバイダーがAPを拡張するときは、APに対してIPアドレスの範囲を決めて設計します。あるとき自分たちのIPが、すべて静岡県内で消費されていることに気づきました。全国どの地域でも事情は同じですから、これをちゃんと調べれば、IPアドレスで位置を特定できると閃いたのです。それでアイデアとして特許を出願し、現在の「どこどこJP」をスタートしました。当初から位置特定によるマーケティングを考え、Webアクセス解析、インターネット広告のターゲティング、地域ごとのエリアターゲティングの3本柱で事業を進めていくことにしたのです。

 最近、社名をGeolocation Technologyに変更しました。その主な理由は、リサーチよりもテクノロジーを強調したほうがよいと考え、自社技術を押し出したほうがよいと判断したからです。エンジニアも技術押しであることを再認識したようです。最近ではサイバーセキュリティ関連にも我々の技術が活用されており、結果的に現社名のほうがよい印象になりました。

――なるほど。ではIP Geolocation技術について、詳しく教えてください。

山本氏:まず前提として、IPv4アドレスをリサーチの対象としています。IPv4アドレス空間は約43億個ですが、国内では現在2億個のIPアドレスが消費されています。次にIPアドレスから位置を特定する方法ですが、インターネットではルータを経由して情報がやり取りされます。そこでIPアドレスが経由するルータの位置がわかれば、そのIPアドレスが使われている場所も推定できるのです。



 われわれは、専任スタッフによる複数の調査手法も併用しながら、全国のIPアドレスと位置情報・接続環境・所属地域などを紐づけたIPアドレスデータベース「SURFPOINT」を構築しています。同データベースには、43億のIPアドレスデータが格納されています。今後もデータベースをさらに充実させることで、精度の向上に努めます。

 精度については、GIS(Geographic Information System)のメッシュ(対象地域を区切る格子状データ)のうち、第4次メッシュにIPアドレスを対応させ、位置分解能は500m四方まで可能です。ただし、その粒度(レベル)はマチマチです。企業ならば何丁目何番地まで特定できますが、一般家庭ユーザーはメッシュ単位、市町村単位(15%)、都道府県単位(70%)のほか、西日本・東日本しかわからないケースもあります。特に4GやLTE経由のモバイルアクセスだと特定が難しいですね。ただしWi-Fi経由からのアクセスならば、APから位置を捕捉できます。

【次ページ】 警視庁にも採用され、セキュリティ企業からもラブコール

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