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- 2017/12/07 掲載
「ZOZOSUIT」やアマゾン「プライム・ワードローブ」がアパレル業界の常識を覆す
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

1万5000か所のサイズを瞬時に測定するZOZOSUIT
スタートトゥデイは11月22日、採寸専用のボディスーツZOZOSUITを無料配布(送料200円が別途必要)し、個人のサイズに合った洋服の生産を開始すると発表した。スタートトゥデイはかねてからプライベート・ブランド(PB)「ZOZO」を展開する方針を打ち出していたが、今回の採寸スーツはこのPBで活用される見込み。採寸スーツは、伸縮性のあるデザインとなっており、各部分の生地の伸び具合をセンサーが検出。約1万5000か所のサイズを瞬時に計測できるという。採寸データはスマホのアプリを経由してZOZOTOWNのクラウドに送られ、ZOZOTOWN側はそのデータを使ってサイズに合った洋服を提供していく。
ZOZOTOWNでは、PBとして展開する自社製品に加え、ECサイトに出店しているメーカーの洋服にも採寸データを活用するとしている。このデータがあれば、基本的にサイズの合わない洋服を買うことがなくなるので、利用者は服のサイズで悩む必要がなくなる。
一方、ZOZOTOWN側にとっては返品リスクが減るとともに、顧客の囲い込みにもつながってくる。行きつけのオーダーメード店の感覚に近くなるので、利用者はZOZOTOWNを通じて購入を続ける可能性が高い。
このスーツを開発したのは、センサー技術を得意とするニュージーランドのベンチャー企業ストレッチセンス社である。スタートトゥデイは昨年6月に同社に出資。さらに今年の11月には将来的に同社を100%子会社にするためのコールオプション(株式を購入できる権利)を取得している。
完全子会社にするためのオプション取得と、同社製の採寸スーツ提供が同じタイミングなのは偶然ではないだろう。両社の関係がより密接になることを見越した措置であり、ZOZOSUITが今後の戦略を左右する重要な製品であることをうかがわせる。
アマゾンは試着無料の新サービスをAI連携でスタート
似たようなアプローチはすでに米国のアマゾンが実施している。同社は今年6月、「プライム・ワードローブ」という新しいサービスを開始した。これは有料会員であるプライム会員を対象に、購入前の服を自宅で試着できるというもの(日本でのサービス提供は未定)。アマゾンのサイトでアパレル商品を3点以上を選択すると、専用ボックスで商品が送られてくる。利用者は自由に試着し、気に入らなかったものは同じボックスに入れて返送すればよい。返送料は無料で、気に入った商品はそのまま購入できる。
プライム・ワードローブの紹介動画
無料で試着・返品できるというサービスはすでに存在しているが、このサービスが画期的なのはAIとの連携が前提になっている点である。
ファッションに関するアドバイス機能も搭載しており、2種類の写真をアップすると、AIが色やデザインを解析し、どちらの洋服が似合うのかアドバイスしてくれる。
エコールックとアマゾンワードローブのサービスが普及すれば、自分に似合うサイズやスタイルをAIに提案してもらい、該当する商品をネットで購入するという一連の流れが成立する。エコールックには直接サイズを測定する機能はないが、大量の全身写真のデータ蓄積されてくるので、使えば使うほどサイズは最適化されてくるはずだ。
【次ページ】両社に共通するコンセプトは? 数年後にはアパレル業界の常識が一変している可能性も
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