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  • 2018/05/10 掲載

どうすれば「職場のアホ」と戦わないですむのか? スタンフォード教授が真剣に考えた

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暴言を吐く、仲間をいたぶる、ミスを決して許さない、とんでもない制度を導入する。そんな意地悪な人があなたの職場にもいないだろうか? 経営科学・工学、組織行動論を専門とするスタンフォード大学 ロバート・サットン教授のもとには、世界中から毎日のようにそうした悩みのメールが届くという。サットン教授は、そうした害悪をまき散らす人を「アホ」と断言。「職場のアホ」と戦わないですむ方法を伝授してくれた。

スタンフォード大学教授 ロバート・I・サットン

スタンフォード大学教授 ロバート・I・サットン

スタンフォード大学教授。専門は経営科学・工学、組織行動論。ミシガン大学で組織心理学博士号を取得。スタンフォード大学内に職業・技術・組織研究センター、テクノロジー・ベンチャー・プログラム研究所、ハッソ・プラットナー・デザイン研究所を創設、牽引する。講演活動や企業へのコンサルティングにも積極的に携わり、2014年にはアメリカ経営者協会の「ビジネスに最も影響力のある30人」に選ばれる。主な著書に『あなたの職場のイヤな奴』(講談社)、『事実に基づいた経営』(東洋経済新報社)などがある。

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あなたの職場に「アホ」はいないだろうか?
(©maroke - Fotolia)

世界中に「アホ」はいる

 「職場に意地悪な人がいて、毎日心が折れそう。助けてください!」

 私はこれまで何千通とこんなメールを受け取ってきた。きっと今日も多くの人が、世界のどこかでひどい目に遭っている。

 参考までに私のところに寄せられたメールをいくつか紹介しよう。

「院長がことあるごとに暴言を吐くんです。毎日耐えて、患者さんの治療に精一杯取り組んではいます。でもゴミ扱いされたんじゃ、まったくやる気になりません。下っ端なんて、ゴミ同然ってことなんでしょうか」(世界一底意地の悪い院長の下で働く内科医)

「多くのスタートアップ企業では、経営経験もないベンチャー・キャピタリストが取締役の座にふんぞり返っています。こういう取締役や、人をこきおろすだけの腐った取締役会について、何か研究はないでしょうか」(シリコンバレーのCEO)

「同僚にいじめられ、身も心もボロボロです。助けてください……」(ワシントンDCの図書館司書)

 私が今回『スタンフォードの教授が教える 職場のアホと戦わない技術』を書いたのは、こういう人たちの声にこたえるためだ。

 暴言を吐くヤツ、仲間をいたぶるヤツ、卑劣なヤツ、人をこきおろすヤツ、他人をいじめて楽しむヤツ……。こういうクソみたいなヤツらをひとことで言い表すなら……。

「アホ」。

 そうだ。この言葉がふさわしい。

スタンフォードの研究をもとにしたアホ対策

 私はスタンフォード大学で、組織行動論や組織管理論を研究しているのだが、同時にこれらをベースとした「アホ」の研究も行っている。

 そのせいで最近は、すっかり「アホ先生」と呼ばれるのだが、私にはアホ問題以外の著作や研究もいろいろあるので、それはぜひ覚えていてほしい。

 それはともかく、人を人とも思わないこのアホどもをのさばらせると、まわりに害がまき散らされる。そこで私はアホに苦しむ人に向けて、これまでの研究をもとに本書を書くことで、性悪なアホどもにどう対処すればいいか、アドバイスをお伝えすることにした。

 アホはあなたの周りにだけいるわけじゃない。世界中にいるのだ。

悪いヤツほど出世する

 2010年、ある小さなスタートアップ企業の若きCEOが、こんな悩みを話してくれた。「自分は温厚すぎるから、成功しないのではないか。スティーブ・ジョブズのような“暴君”になれないと、会社は発展しないのではないか」と。

 実は彼のように「非情でないとビジネスで勝ち抜けない」と思っている人は多い。ニシキヘビとニワトリを同じカゴに入れたら、ニシキヘビはニワトリに勝つ、という理屈だ。実際、「悪いヤツほど出世する」と主張する学者もいて、スタンフォード大学の同僚、ジェフリー・フェファーも「他人をゴミ扱いする人間は成功しやすい」と言っている。


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 たしかにそれには一理ある。他人をおとしめてバカにするヤツ、まわりの気力を奪うヤツ。

 そういうアホが放置されている職場では、おとなしい人たちは虐げられ、非情なヤツらがのさばりやすい。そしてまわりもそんなアホをちやほやしやすい(ただし、それはアホに怒鳴られ、にらまれ、陰口を叩かれるのがいやだからへつらっているだけなのだが)。

 あるいは、やたらと競争をあおる職場では、他人をゴミ扱いして我が物顔でふるまう人間が勝利しやすい。

 しかし山のような文献を読むとわかるが、人を虐げるヤツや自分さえよければいいヤツを讃える研究者は、アホがあげた成果ばかりを大きく取り上げ、ダメージを過小評価している。とりわけ長期的なダメージを無視している。

 そもそも他人をゴミ扱いしなくても成功した勝者はたくさんいる。

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「非情でないとビジネスは勝ち抜けない」は大きな誤解だ
(©polkadot - Fotolia)

 アップルのCEOのティム・クックや投資の神様ウォーレン・バフェットなどがそうだ。そして、ジョブズのようになれないと悩んでいた若きCEOにも、実は後日談がある。5年後、再び会って話をしたとき、彼は相変わらず温厚だった。だが会社は千人以上の社員を抱える大企業になっており、彼は億万長者になっていた。

【次ページ】ジョブズはアホを卒業したから成功した

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