多くのインド農家の月間平均収入は100ドル未満
都市部ではテクノロジーが多くのサクセスストーリーを残している一方で、インド13億の人口のおよそ70%が住む地方では農業が主要産業である。地方に暮らす人の58%以上が主な生計を農業に頼っている。あくまで概算だが、インド国民の少なくとも5億2000万人が農業に従事していることになる。そして彼らは、古い設備、質が劣っているインフラ、販路開拓が困難なことによる薄い利益といったさまざまな課題に苦しんできた。
インド農家の多く(実にその85%以上)の月間平均収入は100ドルに満たず、耕地面積も2ヘクタール以下にとどまっている。
インドの農業生産性が低い理由の1つに、テクノロジーの利用不足が挙げられる。他の要因としては、時折やってきては激しい雨を降らせるモンスーン、予想できない気候変動、耕地面積の減少、サプライチェーンの非効率性などが挙げられる。
世界のアグリテック投資の10%がインドに向けられている
しかし現在では、アグリテック(AgriTech)と呼ばれる農業テクノロジーが進展し、インドでは多くのスタートアップ企業が活躍している。
世界ではこれまでに、アグリテック企業に対して32億3,000万ドル以上が投資され、そのうちインドのアグリテックスタートアップ企業には少なくとも53社、3億1,300万ドルの投資がされている。
こうした全世界での投資の40%以上は食料品eコマースや食料品市場へ、それに次ぐ22%はバイオテクノロジー分野へ向けられている。農地・農作物の状態を良く観察し、きめ細かく制御し、その結果に基づき次年度の計画を立てる一連の農業管理コンセプト「精密農業」テクノロジーへの投資も4億500万ドルに上る。
4番目の投資対象には「ノベル・ファーミング・システム(Novel Farming Systems)」がある。これは、イノベーション技術を用いて土地・水・農薬の使用を最小限にし、環境保護を重視した農産品の生産を目指すもので、この分野には2億4,700万ドル以上が投資されている。
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