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- 2018/07/13 掲載
MBO(目標管理制度)運用の基礎、なぜコミュニケーションが重要なのか
詳細は記事↓をチェック!記事では、MBOのデメリットや「SMARTの原則」なども説明しています。
MBO(目標管理制度)とは何か
MBO(目標管理制度)はManagement By Objectiveの略で直訳すると「目標によるマネジメント」となります。「目標によるマネジメント」と聞くとノルマ管理のようなイメージがありますが、MBOの本来の趣旨はそうではありません。
MBOでは、個々の社員は自分で目標を設定して進捗や実行も主体的に管理します。これにより、本人の自律性が尊重された上で主体性が発揮されて大きな成果が出る、という考え方に基づいています。トップダウンで目標を課す、ノルマ管理とは相反するものなのです。
MBO運用の流れとしては、まず上司と部下は密にコミュニケーションを取りながら組織の目標と個人の目標の方向性をすり合わせます。その次に、上司合意の下で部下は目標とその評価基準(A~C、1~3、など)を決定して文書化します。
たとえば営業職であれば以下のような目標が考えられます。
目標1:半期で個人売上◯億円/評価基準:A(難しい)
目標2:後輩の□□を指導し、チームとしての営業力を向上/C(易しい)
目標3:拡販に向け、△△市場のニーズを調査/評価基準:B(普通)
期末には上司と部下で話し合いの場を持ち、目標の達成度合いに応じて評価を行い、給与に反映させるのです。
また、MBOは組織全体の目標に紐づくものですので、従業員一人ひとりの目標設定や達成度を見て、経営層は定期的に組織目標を再評価することも必要となります。
この過程で重要になるのは、「ノルマで従業員を管理する」のではなく「密なコミュニケーションで従業員のモチベーションを高める」ことがMBOの本質だということです。
経営学者ドラッカーがMBOの起源
MBOは、経営学者ピーター・ドラッカーが1954年に刊行した著書『The Practice of Management(現代の経営)』において「Management By Objectives and Self Control(目標と自己統制による経営)」というフレーズで紹介されました。その後、ドラッカーを含む経営学者によってMBOの概念が固められ、1960年代半ばには米国の最新のマネジメントツールとしてMBOは日本に入ってきました。ただし、当時の日本においてMBOは定着にはいたりませんでした。
それから時を経てバブル経済崩壊後の1990年代後半。日本企業の成果主義の導入に伴い、再びMBOに注目が集まることとなります。
元々、日本企業は職務遂行能力に基づいて等級を定め格付けし賃金管理を行う「職能資格制度」が人事制度の主流でした。「職能資格制度」では成果だけでなく従業員個々のスキル、職務態度、行動を評価していました。
しかし日本経済が低迷する中で、日本企業はコストダウンに迫られ、人件費をかけずに業績を向上させることが求められるようになりました。そこで、成果を出す従業員に高い報酬を支払うことで従業員が納得感を得やすくし生産性を高める成果主義に着目。従業員の成果を評価するためのツールとして、MBOを運用することとなったのです。
ただし、当初ドラッカーが提唱したMBOは部下のモチベーションを高め生産性を高めるマネジメントツールでしたが、日本企業では成果を評価するためだけのツールとして運用している側面もあります。
MBOの2つのメリット
MBOのメリットは大きく分けて「従業員のモチベーションを高める」「人材育成に役立つ」の2つです。1.従業員のモチベーションを高める
MBOは従業員の内発的動機付けを促進し、モチベーションを高めます。内発的動機付けとは人が人の内面から沸き出る興味・関心に動機づけられている状態のことです。この反対の言葉として、金銭や名誉など外的な報酬を目的に動機づけられる「外発的動機付け」があります。
心理学者のマーク・レッパー、デイヴィッド・グリーン、リチャード・ニスベットによる実験で内発的動機付けが人の活動のパフォーマンスを継続的に高めるのに有効だと証明されています。
従業員は押し付けられたノルマよりもモチベーション高く、目標達成に向けて仕事に取り組むことができます。
2.人材育成に役立つ
MBOは人材育成にも役立ちます。従業員は少し高めの目標を設定し、上司は必要に応じて部下が目標を達成できるように助言し支援していきます。
このサイクルを繰り返すことによって部下は自分の能力を向上させ、パフォーマンスを高めていくことが可能になるのです。
また、MBOで上司と密にコミュニケーションを取りながら自ら目標を設定し仕事に取り組み評価するプロセス自体が「コミュニケーション力」「情報収集力」「課題発見力」「自己統制力」「判断力」といった能力を育成することにつながります。
人材不足が懸念されている中で限られた人材の育成ができるかどうかは企業の競争力を保つ上で非常に重要です。MBOを上手く運用できれば、企業の競争力に直結する人材育成にも役立ちます。
MBOのデメリットは?
MBOの運用では上司と部下との間で密なコミュニケーションが求められます。その密なコミュニケーションを経て、組織の目標と従業員の目標を近づけ内発的動機付けをして従業員のモチベーションを高めるのです。しかし、上司と部下との密なコミュニケーションが不十分な企業においてMBOは単なるルーチン作業になりがちです。往々にして組織の目標を細分化したものを個人目標にして部下に押しつける状態が発生していることが多く見られます。
これは、MBOを単にノルマを押し付け、管理するためのツールに成り下がっている例です。これでは部下の内発的動機付けもままならずモチベーションを高めるどころか不満を招いてしまいます。
また当然のことながら、上司と部下の間での話し合いが多くなる分、ノルマを上司が一方的に設定するよりも時間はかかります。ただし、日々の業務に忙殺されこの時間を取ることを惜しめば、お互いに納得感のない目標設定となる恐れがあります。
従業員のモチベーション醸成のためのMBOですが、運用を誤ると、逆に従業員のモチベーションを損なう可能性があることを忘れてはいけません。
【次ページ】MBOの基本原則や運用のコツは?
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