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  • 2018/08/02 掲載

トヨタ生産方式はまずこれだけ押さえる!2本の柱と4つの仕組み

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「トヨタ生産方式」(トヨタ式)と聞いてピンとくる人はどれだけいるでしょうか。ものづくりに携わっていない人にとって「トヨタ生産方式」は遠い存在かもしれませんが、「“なぜ”を5回繰り返す」「改善」など、どの業界にも通じるノウハウが詰まっています。戦後、トヨタ自動車(以下「トヨタ」)で生まれ、「世界のものづくりを変えた」といわれたトヨタ生産方式。その「キホンのキ」を解説します。

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。主な著書に『世界最高峰CEO 43人の問題解決術』(KADOKAWA)『難局に打ち勝った100人に学ぶ 乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)『大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ』(ビジネス+IT BOOKS)などがある。

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・著者:桑原 晃弥
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トヨタ生産方式を支える2本の柱「自働化」「ジャスト・イン・タイム」

 まず「トヨタ生産方式とは何か」を一言でいうと「自働化とジャスト・イン・タイムという2本の柱が人間の知恵の上に立っている」ことです。

画像
トヨタ生産方式を支える2本の柱

 トヨタが本格的にトヨタ生産方式への取り組みを始めるのは第二次世界大戦後のことです。ベースとなったのはトヨタグループの始祖・豊田佐吉氏考案の「自働化」と、トヨタの創業者・豊田喜一郎氏考案の「ジャスト・イン・タイム」という考え方です。

 「自働化」はトヨタ生産方式の基礎を築いた大野耐一氏の造語で、単純な機械化(自動化)と区別して「人間の知恵を付与することで、不良品を生産しない」仕組みのことを指します。

 豊田佐吉氏が創業した豊田自動織機(トヨタの源流)では、織機の縦糸や横糸が切れたりなくなったりしたとき、機械が自動的に止まって不良品を「つくらない」仕組みが組み込まれていました。

 そのことにヒントを得た大野氏がこの考えをトヨタで使う機械だけでなく、人間が作業を行うラインにも拡大して、「問題があれば機械を止めて、問題の原因を調べて改善する」ことにしたのです。

 つまり、不良品を検査で発見するのではなく、そもそも不良品をつくらないようにするというのがトヨタ生産方式の発想です。

 もう1つの「ジャスト・イン・タイム」もまた豊田喜一郎氏の考案によるもので、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」手に入れることができれば、生産現場の「ムラ・ムリ・ムダ」(トヨタ生産方式ではこの順番が大切になります)がなくなり、生産効率が上がるという考え方に基づくものです。

 この方式は、フォード以来の大量生産方式とは違って、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」届け、作業の中で余分なものを持たない、余分なものをつくらないことを基本にした生産・運搬の仕組みです。

 これを実現するための手段として、情報伝達と生産指示の役割を果たすために生まれたのが「かんばん」です。一時は「かんばん」が大いに注目されたことで「トヨタ生産方式」ではなく「かんばん方式」と呼ばれた時期もあります。

トヨタ生産方式を代表する4つの仕組み

1.改善(カイゼン、Kaizen)

 海外では「Kaizen」とも表現されています。トヨタ生産方式のものづくりが目指すのは「より良いものを、より早く、より安く」です。そのためには現状に満足することなく、より良いものを絶えず追及する姿勢が求められます。

 仕事をしていれば日々問題やムダに気づいたり、やりにくさやしんどさを感じることがあるはずです。これらをそのままにするのではなく、常に「もっと良い方法はないか、もっと楽なやり方はないか、ムダを省けないか」などと考え続けることで「今よりも良いやり方」を見つけることが「改善」の基本です。その際、お金よりも知恵を使って解決するのがトヨタ生産方式改善の基本となります。

2.見える化

 問題を解決するためには問題を隠すのではなく、みんなに見えるようにすることが大切だというのがトヨタ生産方式の考え方です。

 問題があれば機械を止めるのもそのためです。機械を止めれば、問題が起きたことがみんなに見えますが、たとえ不良品が出ても脇に置いてそのまま機械を動かせば誰にも問題が起きたことは見えません。これでは問題を解決するための知恵が出ることはありません。

 つまり、見える化というのは問題をみんなに見えるようにして、みんなで知恵を出し、みんなで解決するための仕組みといます。

 見える化にはこうした「現場の見える化」「問題の見える化」とは別に、「思いの見える化」「原価の見える化」「能力の見える化」「進捗状況の見える化」などたくさんの「見える化」があります。いずれも問題解決に向けてみんなの知恵を引き出すための仕組みといます。

3.「なぜ」を5回繰り返す

 問題が起きた時、責任追及よりも原因追究を重視するのがトヨタ生産方式の考え方です。その際、「なぜこの問題が起きたのか?」に対する「なぜ」の追求が甘いと、表面的な原因を「真因」と思い込んで対策をとることになります。しかしそれでは本当の原因をつぶしていないために同じような問題が再び起きてしまいます。

 そこで「なぜ」をとことん繰り返して「真因」を見つけ、真因をつぶす改善をしなければならないというのがトヨタ生産方式の考え方です。

4.ムダどり

 トヨタ生産方式は通常みんなが仕事と思ってやっていることの中には「ムダ」と「付随作業」(本来はムダだが、現状ではやらなければならないもの)、「正味作業」があり、ムダを省き、付随作業を改善して可能な限り正味作業の比率を高めていかなければならないと考えています。

 ちなみにここでいう「ムダ」は生産現場では「付加価値を生まない作業」を指し、間接部門やサービス業では「お客さまの役に立たない作業」などを指しています。

 生産現場には「7つのムダ」(加工・在庫・つくりすぎ・手持ち・動作・運搬・不良/手直しのムダ)があるとされますが、間接部門などにも同様のムダがあると考えています。こうしたムダを省くことを「ムダどり」というのです。

【次ページ】トヨタ生産方式の基本理念、「ものづくりは人づくり」

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