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  • 2018/07/23

人材過剰で弁護士がワープア転落も 法科大学院の撤退が止まらない

司法制度改革の目玉として設置された法科大学院の撤退が相次いでいる。志願者の減少に歯止めがかからず、全国に74校あった法科大学院のうち、近畿大など38校が既に撤退や募集停止に踏み切った。新たに導入された予備試験に人材が流れ、法科大学院が法曹界を目指す学生の選択肢から外れつつある一方、大学側が実務家養成に舵を切ったことで法学研究者養成機能の低下も指摘されている。早稲田大法学学術院の上村達男教授(会社法)は「政府は法化社会の到来という言葉を使い、金融資本市場の変化などから法曹需要の増加を予測していたが、理念倒れに終わった」と厳しい見方を示している。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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2019年度から学生募集を停止する大阪府東大阪市の近畿大法科大学院。これで全国に74校あった法科大学院のうち、学生募集の停止や撤退は38校に達した
(写真:著者撮影)

法科大学院を取り巻く状況が一変

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 大阪府東大阪市にある近畿大。関西きってのマンモス私立大として知られ、私大一般入試の志願者数で5年連続全国1位となるなど注目を集める存在だが、法科大学院の学生募集を2019年度から停止することになった。

 近畿大法科大学院は2004年度の開設から2017年度までに211人が修了し、うち56人が司法試験に合格した。初年度は60人の定員に対し、641人の志願者があったものの、近年は減少の一途をたどり、定員割れが続いている。2018年度は定員を20人まで減らしたが、入学者は過去最低の5人にとどまり、今後も増加を見込めないと判断した。

 在籍中の学生23人が修了するまで現在の指導体制を維持し、廃止する。今後は法学部で司法試験合格を目指す課外講座に力を入れるという。近畿大は「法科大学院を取り巻く状況が一変した。募集停止は非常に残念」と悔しさをにじませた。

 福岡市を代表する名門私大の西南学院大も2019年度から募集を停止する。これまでに65人の司法試験合格者を出してきたが、2008年度から定員割れ状態に陥っており、2018年度の入学者は定員20人に対して6人にとどまった。

 法科大学院の累積赤字は約20億円。志願者の減少とともに、財政面への影響も考慮し、募集停止の結論に達した。西南学院大は「残念だが、総合的に判断するとやむを得ない」と肩を落とす。

私大だけでなく国立大学でも「苦渋の決断」

 撤退の動きは私大だけにとどまらない。横浜市の横浜国立大は2019年度から募集を停止する。これまで新潟大、島根大など地方の国立大で募集停止の例はあるが、首都圏の国立大では初めてだ。

廃止、募集停止を決めた法科大学院
北海学園大、東北学院大、白鴎大、大宮法科大、独協大、青山学院大、国学院大、駿河台大、大東文化大、成蹊大、東海大、東洋大、明治学院大、立教大、桐蔭横浜大、神奈川大、横浜国立大、関東学院大、新潟大、信州大、山梨学院大、静岡大、愛知学院大、名城大、中京大、龍谷大、京都産業大、近畿大、大阪学院大、神戸学院大、姫路独協大、島根大、広島修道大、香川大、西南学院大、久留米大、熊本大、鹿児島大
(出典:各大学ニュースリリースなどから筆者作成)


 横国大には法学部がない。そこで、地元の弁護士会から講師を受け入れるなど地域連携型の法科大学院を目指し、これまでに169人の司法試験合格者を出してきた。うち、51人は神奈川県内を拠点に弁護士活動をしている。

 開設当初こそ志願者が殺到したが、2013年度から定員割れ状態に陥った。2018年度は定員25人に対し、入学者は9人だけ。横国大は「状況の改善が見込めず、苦渋の決断をせざるを得ない」としている。

 法科大学院は全国的に見ても厳しい状態が続いている。文部科学省によると、志願者は制度が創設された2004年度の7万2,800人をピークに減少する一方。2018年度は8,058人とピーク時の9分の1まで減り、過去最低を更新した。

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法科大学院志願者数の推移
(出典:文部科学省資料から筆者作成)
 多くの法科大学院が定員を削減してきたが、2018年度は総定員2,330人に対し、入学者総数は1,621人。学生募集した39校のうち、定員を満たしたのは一橋大、筑波大、明治大、甲南大の4校しかなかった。

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