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- 2020/08/05 掲載
「うまいプロが10万人教えたほうがいい」、N高 夏野剛氏らが語るデジタル教育の未来
東大・京大にも合格! 学校制度の在り方に一石を投じるN高の存在
N高はドワンゴが2016年に創立し、ネットと通信制度を活用したユニークな高校として注目を集めている。わずか4年で1万5000人もの学生を集め、今年はついに東大1名と京大3名の合格者を出した。オンラインセミナー「【六本木会議オンライン#3】 デジタル教育の現在と未来を考える」(主催:GLOCOM)に登壇した角川ドワンゴ学園理事の夏野剛氏は「日本には、いまの画一的な教育に肌が合わず、学校にいけない高校生が30万人もいます。そういう子供たちがN高にやってくるのです」と説明する。
N高の生徒は実に多様だ。不登校の生徒もいれば、フィギュアスケートの紀平梨花さんや、ウインブルドン・ジュニアで優勝した望月慎太郎さんのように、スポーツ界の大スタープレイヤーも一緒に学んでいる。彼らは普段は厳しい練習があり、海外遠征で学校を休むことも多く、普通の高校では学べないからだ。
N高の教育では「ベーシックプログラム」と「アドバンストプログラム」が用意されている。前者のベーシックは、文字どおり基礎を学ぶプログラムで、高卒資格を取得するためのネット授業だ。同校が大変ユニークな点は、教え方がうまい予備校の実力派講師が授業を担当していること。中学の学習に不安があっても、しっかりサポートしてくれる。
また後者のアドバンストは、将来へつながるプロ人材を育成する専門的な授業が盛りだくさんのプログラムになっている。プログラミング学習から、小説、漫画、ファッション、パティシエなどを選べる。これらは、すべてオリジナル授業で、本人が伸ばしたい分野の勉強を自由に組み合わせ、どんどん先に進められる。
N高には、ユニークな職業体験プログラムがあることも大きな特徴だ。佐賀県のイカ釣り漁船に5日間乗り込む、北海道稚内で1週間の酪農を体験する、仏教の聖地・高野山で僧侶と1週間ほど過ごす、鍛冶屋で刀の作り方を学ぶ、マタギとともに狩りに行くなどなど、どこにもないような面白いプログラムを1年間に40~50ほど開催している。
「これらの職業体験プログラムは自由参加ですが、大好評ですぐ満員になってしまいます。自分が知らない世界を発見するチャンスになり、コミュニケーション能力も高められます。我々は、教育の基本は教えることではなく、機会を提供することだと思っています」(夏野氏)
ネットにはネットのやり方がある! 東京通信大学のノウハウとは?
一方、前川 徹氏が教鞭をとる東京通信大学も、2018年に始まったばかりの新しい学校だ。時間や場所の制約を受けずに、社会人を含めた、あらゆる人々に学びの機会を提供することを目的に開校された。同氏は「東京通信大学では現在2600名が学んでいます。N高より規模は小さいのですが、私も4つほど授業を持ち、合計1000人以上の方が授業を受けています。できるだけ多くの人に、いつでもどこでも学べる環境を作ることが我々のミッション。そういう意味では、都市部と地方との教育格差を縮める仕事をしていると思っています」と語る。
同校の授業は15分くらいの講義を4つ組み合わせて1回分とし、それを8回ほどオンラインで実施して、試験に合格すると1単位がもらえる仕組み。リアルな大学との違いは、通信大学は授業を1回収録してしまえば、数年間は同じコンテンツでも(状況によって内容が大きく変わらない限り)、同じものを数年繰り返して利用できることだ。
ただし、そうは言っても、実際のコンテンツ作りは大変だ。東京通信大学もコンテンツ作りに多大な投資をしているという。同校はグリーンバックの専用スタジオを持ち、そこで収録しているそうだ。
当然だが、オンライン授業は、やはり対面の場合とは勝手が違う。それなりの工夫とノウハウも求められる。実は今回のコロナ騒動でも、そういった課題が浮き彫りになった。4月からオンライン授業や家庭学習が始まり、普通の学校はかなり影響を受けたのだ。
前川氏は「学生だけでなく、先生も大変だったと聞いています。リアルな対面授業を、そのまま流すのはよくありません。90分も講義をオンラインで流すと、学生の集中力が続かないからです。我々が細切れに約15分間の授業を流すのも、やはりネットにはネットなりの方法があると考えているからです。それを知らないまま、オンライン授業を実施した学校は大変だったようです」と指摘する。
【次ページ】電話回線の空き待ち、結局私物活用だった小学校の現場
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