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- 2018/08/06 掲載
ソニーが「スポーツテック」で天下を取れるワケ、子会社ホークアイは何がヤバいのか?
64試合で17回の判定が覆ったVARの“真実”
サッカーの歴史では、判定が勝負の行方に大きな影響を与えてきた。1986年のワールドカップでアルゼンチンの伝説的選手マラドーナが手に触れながらゴール判定された「神の手ゴール」、2010年ワールドカップでイングランド代表ランパードのシュートがゴールを割っていないとされた場面など、ファンの間では有名なエピソードだ。
2018年のワールドカップではVARの導入で試合に変化があった。ブラジル代表ネイマールが反則を受けたと判定されたコスタリカ戦では、VARの精査により、反則がなかったとして判定が覆っている。注目を集めた決勝戦では、クロアチア代表ペリシッチが手でボールを扱ったとして反則と判断され、フランスの追加点につながった。
VARの導入により、守備側は反則がないように守らなければならない一方で、攻撃側も、あたかも反則されたかのように振る舞って誤審を誘うようなプレーが難しくなったのだ。
FIFAの発表では、64試合のうち、すべてのゴール場面を含め、455のプレーがVARによって確認された。そのうち、試合中に審判によってビデオによる確認が行われたのが20回、さらに判定が覆ったのが17回だった。VARを使用した際の判定の精度は99.3%に上ったとされる。ちなみに、ゴール前での反則に与えられるペナルティキックは2018年大会では29回与えられ、前回大会より16回も多い。
ワールドカップでのVAR活用実績の中身
2018年のワールドカップではVARのために33台のカメラが使用された。このカメラによって長さ110メートル、幅75メートル程度のサッカー場を網羅する。そのうち、8台はスーパースローカメラ、さらに4台はウルトラハイスピードカメラで高速度撮影を行う。スロー再生は接触プレーや、反則が起きた選手の位置を確認するのに有効だ。ゴール判定はゴール・ライン・テクノロジー(GLT)と呼ばれるシステムが設置され、判定を支援する。サッカーではボールがすべて線を越えなければ、ゴールと判定されない。ホークアイはリアルタイムにボールの位置を判定し、ゴールが認められた際に、1秒以内で主審へ通知する仕組みをとっている。
試合中の映像はモスクワにある国際放送センター(IBC)で確認される。12会場を光回線でつなぎ、リアルタイムで映像をやり取りする。 映像を確認するのは、13人の国際審判によって構成されるVARチームだ。
VARの対象となるのは「得点」「ペナルティキック」「退場」「退場・警告の選手取り違え」の4種類ある。会場に設営されたレビューエリアで主審は映像のリプレーが確認できる。
当初は試合の流れを止めてしまうと懸念されたVARだが、実際は平均して80秒程度しかかかっておらず、試合時間に大きな影響はなかったとされる。 ワールドカップでのVARを踏まえ、今後、更なる利用方法の検証は進んでいくだろう。
すでに20競技で導入・活用実績アリ
VARシステムを開発したのはホークアイ・イノベーションズという英国の会社だ。1999年に設立された同社は、映像処理・再生や映像配信に強みを持ち、サッカーにかぎらず、テニス・クリケット・野球・アイスホッケー・バレーボール・ラグビー・バドミントン・競馬を含む20種類の競技で、映像解析ソリューションを提供している。ホークアイの技術は2006年にテニス、2009年にクリケットで導入された。さらに、サッカーでは、2013年にイングランド、2015年にはドイツで利用されるようになった。
【次ページ】ホークアイが注目されたきっかけ
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