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  • 2018/10/05

原油増進回収法(EOR)とは何か? 既存の原油を効率的に回収するための技術動向

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石油の回収量を上げるのに最も効果的なのは新油田を発見することだが、そう簡単に見つかるものではない。そのため、大手石油メジャーが80年代から既存油田を活かすべく力を入れてきたのが、原油を効率的に回収するための手法である「原油増進回収法(Enhanced Oil Recovery:EOR)」だ。あまりなじみのない領域かもしれないが、日々その技術は洗練されている。最新の技術動向と原油採取の現状、ならびに今後の展開について、フロスト&サリバンジャパン成長戦略シニアマネージャーの伊藤祐氏が解説する。

フロスト&サリバン ジャパン 伊藤 祐、ニコラス・ウォン(執筆アシスタント)

フロスト&サリバン ジャパン 伊藤 祐、ニコラス・ウォン(執筆アシスタント)

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原油関係のニュースはよく聞いても、その産出方法は以外と知らないのではないだろうか?
(出典:フロスト&サリバン)

原油増進回収法(EOR)とは?IORとどう違うのか?

 原油を油層から採取する方法は、一次採取法、二次採取法、三次採取法と3種類に分けられる。以下の図にあるように、原油増進回収法は、三次採取法の一種である。そして、増進回収法は英語で表記すると「Enhanced Oil Recovery (EOR)」となっており、改良型回収法の「Improved Oil Recovery (IOR)」と混同されることが多いが、IORは原油採取の二次および三次採取法を指しているのに対し、EORは三次採取法だけを意味している。

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原油を油層から採取する方法
(出典:フロスト&サリバン)

 一次採取法において、原油の採取は主に油層間の圧力差による自然のエネルギーによって行われる。特に新油田では、原油は自然に地上に噴出する。自噴採油だけでは十分な生産量に至らない場合に、採油ポンプを坑内に挿入して原油をくみ上げることもできる。しかし、一次採取法を使った原油採取率はあまり高くなく、だいたい10%から25%である。

 原油が採取されるにつれて、油層内の自然排油が徐々に減少していく。そこで、水または天然ガスを油層に入れて、油層圧を維持する。この段階で行われる原油の採取方法は二次採取法と呼ばれる。

 二次採取法には、主に水攻法と油層圧維持法との2つがある。水攻法は油層圧が低下したときに水を坑内に入れるのに対し、油層圧維持法は生産開始時から水や天然ガスを坑内に入れて油層圧を普段より高く維持する。原油採取において、二次採取法は現在最もよく使われているが、原油採取率はおよそ10%から20%だ。

 そのため、一次と二次採取法を使った原油採取だと、50%以上の原油を坑内に残してしまう。あまりにももったいない話のように思えるが、二次採取の後に坑内に残っている原油は硬度と粘度が非常に高く、坑内の圧力差を維持しても生産率はあまり上昇しないという課題がある。そのため、さらに原油を採取するためには、原油自体の性状を変化させる必要がある。

 この段階において使われるさまざまな採取法を、まとめて三次採取法、またの名を「原油増進回収法」と呼ぶ。具体的には、ガス圧入法、熱攻法、ケミカル攻法と微生物攻法といった方法がある。

 三次採取法は一次と二次採取法に比べるとコストがかかるが、油層の状態によって原油採取率は55%から80%まで上がることもある。以下では、主な方法として、ガス圧入法、熱攻法、ケミカル攻法の3つの技術を見ていく。

原油増進回収法を構成する主要技術

1.ガス圧入法
 ガス圧入法は、油層に天然ガスを挿入して採取率を上げる技術だ。天然ガスが油層に融け込むか否かによって、採取率の上昇率は変化する。油層に溶け込まない場合、挿入される天然ガスは単に坑内の圧力差を維持する役割を果たす。油層に溶け込む場合、挿入される天然ガスは油層の性状を変化させ、原油自体をより流れやすくする。

 油層から採取されたガスをそのまま再利用できるため、ガス圧入法は世界中で最も使われている増進回収法である。また、天然ガスの代わりに二酸化炭素を油層に圧入する研究が進んでいる。この技術は、原油採取率を上げながら、地球温暖化対策にも貢献できるという一石二鳥の効果を上げられるため、昨今、注目されている技術である。

2.熱攻法
 熱攻法とは、油層に熱エネルギーを与えて採取率を上げる技術の総称である。特によく使われている技術は水蒸気圧入法であるが、水蒸気の代わりに熱水を入れる熱水攻法という方法もある。

 熱エネルギーを通して、原油の粘度および水蒸気や熱水などの流体と油層間の界面張力を下げて、原油をより流れやすくする。また、流体を通して油層に圧力をかけて、原油を生産井の方向に流すという効果もある。

 熱攻法は、ガス圧入法に次いで世界で2番目によく使われている増進回収法である。特に北米において、熱攻法は原油総生産量の50%以上、増進回収市場の総売上高の70%以上を占めている。

3.ケミカル攻法
 ケミカル攻法とは、化学薬剤などを油層に圧入して採取率を上げる技術である。アルカリ攻法、ポリマー攻法、界面活性剤攻法などが挙げられる。化学薬剤によって油層と流体間の界面張力を低下させ、原油自体の流動性を向上させることが共通している原理である。

 ケミカル攻法は、化学薬剤の開発所要時間が長い、かつ開発されていた化学薬剤の耐熱性が低すぎるなどの問題に直面し、現在ではあまり使われなくなった。北米における割合は約1.9%ほどしかない。
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北米原油増進回収市場 技術別売上高の割合
(出典:フロスト&サリバン)

 注目すべきキープレイヤーは海外拠点をたくさん持ち、かつ増進回収技術をインハウスで研究・開発できる石油会社である。注目すべき会社としては、エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP、中国石油化工集団公司、シェブロン・フィリップスとルクオイルなどが挙げられる。

【次ページ】石油増進回収法のトレンドと促進/抑制要因

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