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  • 2018/05/22

「スマートシティ」日米で圧倒的な差がついたワケ、日本に欠けている2つの視点

連載:シリコンバレー発 米テックレポート

アメリカやカナダ、世界各国で今なお注目を集め続けるスマートシティプロジェクト。今年からCESでも新カテゴリに加えられ、カナダでは政府が巨額の資金を投資し、トロントではIT企業らによる大規模なスマートシティプロジェクトが進行中だ。だが一方の日本では、スマートシティは色あせつつある。何が両者の違いを生んでいるのか。

ITテック/知財リサーチャー 山田 世智

ITテック/知財リサーチャー 山田 世智

早稲田大学法学部卒。富士通株式会社に入社し、テクノロジーソリューション分野における知的財産マネジメント・契約業務に従事。特許出願動向調査に関連して、変化が速い最新テクノロジートレンドの調査も担当。現在は世界的なイノベーションの発信地の一つであるアメリカ、シリコンバレーにある富士通グループの研究所、Fujitsu Laboratories of America, Inc.に赴任。次の世界的イノベーションの種やその誕生プロセスを捉えて、将来の機会に変えるべく日々活動中。これまでのレポーティング業務による、半導体からAI、クラウド、3Dプリンタ、サイバーセキュリティ、量子コンピュータなど幅広いテクノロジートレンドの動向把握と、特許視点での調査分析が強み。表面のトレンドやメッセージの裏にある、「本質を捉える」ことをつねに重視する。

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アメリカとカナダでは各都市ごとに積極的なスマートシティ化が進められている。一方の日本に足りなかったものは何だったのか
(©chombosan - Fotolia)

拡大する「スマートシティ」投資、カナダとアメリカで顕著

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 スマートシティへの取り組みは熱狂的とは言わないまでも、今も世界規模で続いている。関心が高いのは欧米のみならず、アジアや中東圏においても同様だ。世界のスマートシティに関する投資は2015年時点の約150億ドルから、2020年には340億ドルにまで成長するといわれている。

 特にスマートシティへの取り組みに熱心なのはカナダとアメリカだ。

 カナダ政府は2017年予算でImpact Canada Initiativeという成長戦略を打ち出し、その中の1つにSmart City Challengeを掲げ、11年間で3億ドルの投資開発を行うと宣言した。都市やコミュニティの規模を問わず、イノベーションがあり、データ分析と、コネクテッドテクノロジーを用いて、人々の生活を豊かにすることなどを基本要素に挙げている。このほかにも、政府系のスマートシティファンドが立ち上がっていて、民間からの資金も入り、15億ドルが投資可能とのこと。

 また、米グーグルの親会社、米アルファベットは、サイドウォークラボ(Sidewalk Labs)という最新テクノロジーを用いてスマートシティの実現を目指す会社を創設。同社は2017年、カナダ政府、オンタリオ州政府、トロント市による、同市のウオーターフロント再開発計画事業「ウオーターフロント・トロント」のパートナーとなり、「サイドウォーク・トロント」という共同事業体を発足させた。このプロジェクト費としては、5000万ドルが投資された。

 一方、アメリカでは、まずテキサス州のダラス市が2016年からダラス・イノベーション・アライアンス(DIA)と呼ばれるスマートシティプログラムを始めている。今年は、AT&Tとトヨタ自動車を中心に、都市監視や水のマネジメント、パーキングなど5つの新しい取り組みを行うと発表。

 また米ウーバーも、オハイオ州のシンシナティ市とモビリティにおけるスマートシティ実現のため、パートナーシップを結び、現地にモビリティ研究所を設置した。

 さらに、オハイオ州のコロンバス市では、スマートシティの頭脳になるOS、それを構築し学習し続けるためのデータ共有・分析プラットフォームの構築に250万ドルの投資を決めた。

 象徴的といえるのは、今年の1月にアメリカのラスベガスで行われた世界最大の家電見本市「CES2018」では、初めて「スマートシティ」のカテゴリが新設されたことだ。加えて、2018年だけでもアメリカではすでに10ものスマートシティに関するカンファレンス・イベントが予定されている。

米がスマートシティに本気で取り組む理由とは

 かつての日本で注目を浴びた「スマートシティ」は、パナソニックなどの家電メーカーによる「家まるごと」「施設まるごと」とうたわれるような、太陽光などの自然エネルギーや省エネ装備を一式そろえた建物などのソリューションだったり、低炭素社会実現をうたったBEMS(ビル内エネルギー管理システム)やHEMS(家庭内エネルギー管理システム)などのエネルギーマネジメントなど、消費電力の節約に関するものが主だった。

 これはスマートシティの日本における一形態であって、世界共通のスマートシティの在り方というわけではない。スマートシティの定義は諸説あり、都市ごとにあるといってもいい。そもそも、都市機能自体が非常に複雑だ。それぞれの都市が解決したい問題や、地場の企業が何が得意かによって、多様な定義がされていくだろう。

 スマートシティへの投資が盛んなアメリカにおける話をすると、多くの大都市において共通の課題がある。

 運輸省が2016年に5000万ドルを投資した大規模なスマートシティ実験「Smart City Challenge」で発行されたペーパーには各都市のスマートシティの提案に際して、次のような課題が共通していたと書かれている。

 ・職場通勤の交通渋滞を防ぐためのファーストマイル、ラスト1マイルの交通サービス
・公開されている公共交通機関のデータの集約・分析プラットフォーム化
・電気自動車などによるCO2の削減
・物流配送トラックのストップ&ゴーによる燃料の無駄
・交通流の最適マネジメント
・都市部のスムーズなパーキング探し

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アメリカの都市にはいくつもの共通の課題がある
(出典:SMART CITY CHALLENGE)
 上記を見るとわかるように、課題のほとんどが「交通の最適化」で占められる。アメリカの移動は車が基本だが、サンフランシスコのような大都市に自動車で行くとなると移動するにも車を停めるにも、相当な苦労が伴う。この課題はアメリカのみならず、世界各国の大都市であれば、どこでも共通している課題ではなかろうか。

 また、スマートシティの大きな潮流を見ると、その在り方や提案はいまだに1つの定義には落ち着かないものの、大企業によるソリューション主導からスタートアップとエコシステム主導へ、ハードウェア中心のアプローチからサービス・ソフトウェア中心のアプローチへ、エネルギーのスマート化から交通モビリティのスマート化へ、大きな変化を見せている。 

【次ページ】日本の「スマートシティ」戦略に足りない2つの視点

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