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- 2019/01/16 掲載
手術ロボットとは何か? ダヴィンチらが市場規模を拡大、問題点はどこに
手術ロボットのこれまで
ところが最近、手術ロボットの導入により、手術精度の向上や患者の身体への負担の低減に向けた手術が普及しつつある。こうした手術には、腹腔鏡手術や、患者の回復に要する時間を短縮するために、外科手術の切開を最小限にする低侵襲手術(Minimally Invasive Surgery:MIS)がある。
手術ロボットとは、手術において外科医の動作を一部代替するロボットのことだ。その始まりは、1985年に遡る。
当時、外科医は「PUMA 560」という手術用のロボットアームで末梢神経の組織を検査する神経生検を行った。それと同じ頃に、NASAの研究者による手術ロボットを用いた遠隔手術に関する研究を経て、戦地においても技術を適用できる可能性が注目され、アメリカ軍の関心も得ていたようだ。
最終的に、アメリカ軍向けの手術ロボットに従事していた外科医とエンジニアにより民間向けの企業が立ち上げられ、手術ロボットが民間の外科領域にも導入されたといわれている。
手術ロボットの使い方
先述の通り、手術ロボットにより精度とスピードの大幅な改善が期待されるのは、腹腔鏡手術と低侵襲手術(MIS)である。腹腔鏡手術は開腹手術と異なり、患者のへそに直径30ミリ程度の穴をあけ、内視鏡(腹腔鏡)を挿入し、電気メス、ピンセットなどの腹腔鏡手術専用の器具を、先ほどの穴とは別途あけた穴から挿入し、腹腔鏡下の動作で最終的に傷を3センチから4センチまで開き(開腹手術の場合は20センチから30センチ程度)、対象疾患部位を取り出す。
低侵襲手術は、腹腔鏡手術が代表する「人間の身体への侵襲を最小限にする術式」のことである。腹腔鏡手術以外にも、身体に切開をせず口・鼻・肛門などの体内への「入り口」を介して内視鏡を挿入し、消化管の腫瘍をポリペクトミー(内視鏡的ポリープ切除術)やEndoscopic Mucosal Resection (EMR、内視鏡的粘膜切除術)で切除することが挙げられる。
そこで、ロボット支援手術という新たな技術が生まれ、体内に挿入された機械による精確な動作を執刀医が遠隔で操作し、手術の精度を上げたり執刀医の負担を下げたりする効果をもたらすと言われている。手術ロボットの導入により、感染症リスクの軽減、回復時間および入院期間の短縮などのメリットも挙げられる。画像技術を用い、長時間の手術における外科医の身体的負担を減らす手術ロボットは、MIS手術のメリットを強化できると見られ、外科医に受け入れられてきた。
手術ロボットが革新的といわれる4つの理由
なぜ手術ロボットが医療分野で革新的なものと評価されてきたのか、その理由は4つある。(1)MISにより深く広い切開、大量の失血、広範な縫合など、開腹手術による合併症のリスクおよび患者の身体への負担を軽減できる。それに加え、手術ロボットはヒューマンエラー(執刀医や助手の疲れや不慣れなどに起因するミス・事故)を排除することにより、リスク低減がさらにできるようになる。
(2)手術ロボットは、非常に細かい作業を誤差なく行うことが可能であるため、これまで開腹手術で行われていたものが人間の手での腹腔鏡手術へと進化したが、手術ロボットの導入によりさらに高い成功率で行えるようになる。
(3)高精細な画像技術と組み合わせることで、手術ロボットは、これまでの腹腔鏡手術ではできなかった、機敏な処置と視覚化を可能にする。
(4)手術ロボットは人間には適さない環境でも作業を行うことができ、同時に複数の医療行為を行える可能性も増している(例: 手術ロボットは、処置中にX線の使用を可能にする電離放射線に対する耐性を備える)。
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