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  • 2019/04/11

材料開発を超高速化する「マテリアルズ・インフォマティクス」とは何か?

これまで材料開発の現場は、主に実験と理論計算によって支えられてきた。近年、その現場に「情報科学(インフォマティクス)」のアプローチが加わることで、材料開発のスピードや効率が飛躍的に改善されつつある。ここでは、こうした取り組み「マテリアルズ・インフォマティクス」について基礎から詳しく解説していく。

フロスト&サリバン ジャパン 伊藤 祐、陳 宇鴻(執筆アシスタント)

フロスト&サリバン ジャパン 伊藤 祐、陳 宇鴻(執筆アシスタント)

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マテリアルズ・インフォマティクスの基本を解説する
(© motortion - Fotolia)

マテリアルズ・インフォマティクスとは?

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 近年の材料開発の現場では、情報科学分野のさまざまなアルゴリズムが重要な役割を担うようになってきている。たとえば、過去の材料実験・シミュレーションデータを利用した効率的な探索アルゴリズムによって、よりスピーディーに新素材を開発・商品化することが可能になっている。

 このような材料開発における新しい取り組みを総称して「マテリアルズ・インフォマティクス」と呼ぶ。特に積極的なのは各国政府である。米国の前オバマ政権は、2011年に発表した「Materials Genome Initiative(MGI)」においてマテリアルズ・インフォマティクスの推進を打ち出している。その予算総額は2億ドルに上る。

 それに呼応するかのように、欧州では「Novel Material Discovery Laboratory(通称:NoMaD)」が2015年に、中国では「北京マテリアルズ・ゲノム・エンジニアリング・イノベーション連盟」が2016年に設立された。さらに日本でも2015年には物質・材料研究機構に材料統合型物質・材料研究拠点が創設され、多くの研究成果が生み出されている。

マテリアルズ・インフォマティクスと従来の材料開発の違い

 従来の材料開発とマテリアルズ・インフォマティクスを活用した材料開発との違いとは何だろうか。

 従来の材料開発のメインプロセスは、「実験」と「理論計算」の2つである。理論計算をしては実験を繰り返すことが、新素材を開発する手段となっていた。これらのプロセスは一部自動化が進んでいるとはいえ、実験方針の意思決定や理論計算については、研究者の直観と経験による部分が大きかった。

 たとえば、トーマス・エジソンは電球を開発した超一級の研究者である。しかし、彼は電球のフィラメント材料の研究において数えきれないほど失敗した。エジソンに限らず、数々の研究者が材料の探索や発見に対して多大な時間とコストをかけてきた。

 実験においては人間の手で行われていたものが疲れ知らずの機械の手に代わりつつあるが、実験方針の意思決定や理論計算は、研究者の直観と経験による部分が依然大きい。現代の高度化した実験手法や理論計算でも、時間や精度の質が高まらないという問題は存在するのだ。

 これらを解決するソリューションとして期待されているのが、マテリアルズ・インフォマティクスだ。その中でも特に「データを活用した探索アルゴリズム」が注目されている。アルゴリズムにより、実験と理論計算のプロセスを効率化し、短時間で高品質なアウトプットを出せるようになる。

 マテリアルズ・インフォマティクスにおける探索アルゴリズムは、難破船の探索プロセスに似ている。仮に船が難破したとき、データが手元にまったくない状態ではすべての海域で等しく船が沈んでいる可能性がある。ここに天候・運行経路・海域の地理データが追加されていくことで、それぞれの海域に船が沈んでいる確率には変化が生じ、探索における優先順位が明確になる。

   これと同様、マテリアルズ・インフォマティクスにおける探索アルゴリズムはさまざまなデータを駆使し、「適切そうな材料」に人間を導くのだ。

【次ページ】マテリアルズ・インフォマティクスで何が変わるのか?

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