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  • 2018/12/27

2018年のロボット業界まとめ、13分野70社超の事例から今後の潮流をつかむ

最近になりロボットブームはいったん落ち着いたという人もいるし、どんどん活発になっていると見ている人もいる。筆者は後者の立場だが、前者の見方もわからなくはない。取りあえずロボットを入れてみようといった、浮ついた感じが減ってきたといったところなのかもしれない。現実として、生産現場はもちろん非製造業分野においてもロボットの活用は増加しているし、大企業においても中小企業においても「使える」ロボットを求める声や、単なる既存機材や人の置き換えではなく現場全体を変革する一部としてロボットを入れる、あるいは「ロボットを使う」前提で現場を見直す動きは広がりつつあると感じている。2018年のロボットシーンを振り返っておこう。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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2018年のロボットシーンを、30本超の動画と合わせ振り返る
(©zapp2photo - Fotolia)


広がり続けるロボットの用途と価値

 最初にまず、全体的な話をしておこう。

 ロボットを使って何を目指すのかは事業者によって異なる。現状の作業の改善、あるいはオートメーションを目指すのか。そうではなくて何か革新的なサービスを実現するためにロボットを使うのか。あるいはその両方、中間なのか。

 ロボットの使われ方が大きく広がり始めているだけに、ユーザーとしてロボットと向き合うときには、そもそも改善すべき自社の事業の価値をどう捉えるかが重要だ。

 当たり前だが、ロボットや人工知能技術を導入すること自体が重要なわけではない。ロボットは目的ではなく手段だ。重要なのは目的であり、ロボットを入れた技術/システム/事業を、何とつなげて、どんな価値を生み出すかが重要なのだ。

 広がり続けるロボットの用途に対して、経済産業省と日本ロボット工業会は、「ロボットシステムインテグレータ(ロボットSIer)」を紹介するWebサイトを開設。中小企業への導入を促す。

 さらに6月には「ロボットSIerスキル標準」に準拠したテキストを作成した。これはロボット関係者なら必読のテキストである。7月には「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」が立ち上がった。また、10月には経済産業省は「World Robot Summit(WRS)2018」を開催。展示会と競技会が行われた。



 いっぽうメーカー、特に起業したばかりのベンチャーやスタートアップのほうはどうかというと、海外からは巨額資金の調達に成功したスタートアップのニュースが相変わらず報じられ続けている。

 たとえば中国のUBTECH Roboticsは今年、テンセントなどから8億2000万ドルもの資金を調達した。日本の商社と海外ロボットベンチャーとの代理店契約締結も進み、じわじわとろロボット導入現場は広がりつつある。

 いっぽう、巨額資金を調達したにも関わらず事業停止してしまうケースもある。投資を集められれば成功するというわけでもないのがロボットビジネスの難しいところだ。



 ロボット技術は適用範囲が広い汎用(はんよう)技術だ。4月には軍事に関連した取り組みを行っているとされた韓国科学技術院(KAIST)に対して各国のロボット研究者約60人が絶交宣言を出すという出来事もあった。程なくKAISTが否定したことでこの騒動は終息したが、ロボット兵器への懸念は依然くすぶっている。

製造

 各分野をざっと見ていこう。産業用ロボットは特に中国市場での需要が伸び続けており、好況だ。1月には日本ロボット工業会が前年比11%増の1兆円の大台にのる見通しと発表した。米国と中国のあいだの貿易問題はあるものの、今後も手堅く伸び続ける可能性が高い。

 協働ロボット市場では2月に協働ロボット「CORO」を販売していたライフロボティクスをファナックが買収した。その後、COROはファナックの品質基準を満たさなかったとされ、ファナック製ロボットに順次交換されている。

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 10月3日、MITのロドニー・ブルックス教授が2008年に創業し「バクスター」「ソウヤー」で知られるRethink Robotics(リシンクロボティクス)が突然、事業停止するという驚きのニュースがあった。



 だが市場自体は変わらず伸び続けているというのが大方の見方だ。10月末にはドイツのHahn(ハーン)グループがRethinkのパテントと商標を全て買い取ったと報じられ、続く11月には、協働ロボット市場で6割のシェアを持つデンマークUniversal Robots(ユニバーサルロボット)が、Rethink Roboticsの従業員を20名以上採用すると発表された。

 Universal Robotsは6月にトルクセンサーを内蔵した新機種「e-Series」を発表。国内でも8月から販売している。また無料eラーニングを提供して協働ロボットSIerを育成しようとしている。なおUR社は累計で2万5000台以上のロボットを販売しているという。



 川崎重工業は扱いやすい点が好評の、人共存型双腕スカラロボット「duAro」の上下方向ストロークを550mmに広げ、さらに可搬質量を3kgに上げた新型「duAro2」を6月に発売した。平面作業以外にも使えるロボットとしてアピールしている。また川崎重工業とABBは2017年に協業しており、6月には協働ロボットのオペレーティングインタフェースを共同開発したと発表した。

 オムロンは5月に台湾の協調ロボットメーカー テックマン・ロボット社(Techman Robot Inc.)と提携したと発表。協働ロボット「TMシリーズ」を10月に発売した。自動搬送モバイルロボット「LDシリーズ」と組み合わせることでピックアンドプレースと工程間での搬送に使える。

 このような協働ロボットをAGVに乗せて動かすロボットもどんどん出てきている。これまで参入が遅れていた日本のメーカーも協働ロボットに参入し商品化を急いでいる。



 ロボット活用事例では、靴メーカーのカワノ、リーバイス、コスメナチュラルズ、品川工業所の自動卵焼機など、これまでとは違った業種での活用が注目された。また、安川電機は食品産業向けロボットの出荷台数を「2021年度に1500台程度と現在の3倍に伸ばす」と日本経済新聞が報じている。ロボットの用途は変わりはじめている。



 11月に開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF)ではビッグサイトの東8ホール丸ごとをブースとしたDMG森精機の取り組みや、CNC旋盤にアームを組み込んだオークマの「ARMROID(アームロイド)」などが話題だった。



 またショールームを開く動きも広がっている。製造関連のロボットだけではなく、物流用途のロボットもショールームで見たり、レンタルしてお試しできるようになりつつある。オリックス・レンテック、SMFLレンタル、東京センチュリーなど各社が力を入れはじめているので、取りあえず使ってみたい企業のハードルは低くなりつつある。

 また北海道立総合研究機構 工業試験場は食品製造業向けに特化したロボット実証拠点「ロボラボ」を11月にオープンした。このような特定分野向けが今後は続々登場するかもしれない。

 産業用ロボットはこれまで高価だったのがネックだったが、UFactoryの「xArm」のような価格破壊のロボットアームも登場し始めている。ただ実際に「使える」ロボットかどうかは、未知数だ。



物流

 物流は本連載当初から述べているように、もっともロボット活用が着実に進んでいる領域だ。GROUNDはトラスコ中山の物流センタープラネット埼玉に「Butler」を導入した。ジョンソン・エンド・ジョンソンは11月に羽田クロノゲート内の拠点にノルウェーの「オートストア」を使ったロボット倉庫を導入。このほか、各所で物流倉庫へのロボット導入は着実に進んでいる。物流ロボットのショウルームも増えている。



 アマゾンの倉庫に代表される、棚自体を移動させるような大型倉庫に使われるタイプの『GTP(Goods-to-Person)』と呼ばれるロボットだけではなく、既存の倉庫内をいじることなくロボットを活用するために、人と一緒に働く『AMR(Autonomous Mobile Robot)』というタイプの導入も進められている。このあたりは本連載のGROUND社・宮田氏のインタビューをご覧いただきたい。



 また、イスラエルのCommonSense Roboticsは食品業界のロジスティクスにフォーカスしているという。Starship Technologiesは10月に自律走行ロボットStarshipを使った商品配送サービスをイギリスとアメリカで開始すると発表している。

小売

 POSシステムで国内シェアトップの東芝テックは、NEDOの「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」の一環として5月にスーパーのオーケーの店舗で棚卸しチェックを行うロボットの実証実験を行った。値札と欠品をチェックする。

 日本ユニシスは11月から、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス傘下のフードスクエアカスミ オリナス錦糸町店でPOPのチェックを行うロボットの運用を開始した。夜間に消灯された店内で稼働する。

建築・土木

 建築分野ではロボット活用が本格化し始めた。大和ハウスは「耐火被覆吹付ロボット」を開発。4月に「ダイワロイネットホテル東京有明」で実証実験を行った。

 清水建設は「シミズスマートサイト」の根幹技術として、資材を搬送する「ロボキャリア」、鉄骨を溶接する「ロボウェルダー」、ボードを貼る「ロボバディー」などを公開した。㎜精度を実現し、省人化を目指す。12月には新大阪駅近くで建設中の「からくさホテルグランデ新大阪タワー」建設現場に本格導入したと発表した。内装多能工ロボットや鉄骨溶接ロボットが活躍中とのこと。

 鹿島もシリコンバレーに拠点をおいて建設機械の完全自動化を開発を目指している。11月には建築の生産プロセスを変革する「鹿島スマート生産ビジョン」を策定して、名古屋の自社ビル工事現場をパイロット現場に選定、施工ロボットその他の実証を行っている。

 住宅施工を行う積水ハウスは2020年を目標として天井ボードの貼り付け作業に使う「Carry」と「Shot」という2種類の協働ロボットをテムザックと共同開発していると5月に発表した。



 竹中工務店も大型パネルハンドリングロボット、既存の台車の下に潜り込ませて使う搬送支援ロボット「クローラTO」、清掃物をかき集めるロボット「TOギャザー」、自動追従台車「かもーん」などのほか、6月からはソフトバンクと共同でBostonDynamicsの「SpotMini」を建設現場の巡回や安全点検に活用する検証を進めていると発表した。2019年夏以降の本格活用を目指すという。



 産業技術総合研究所(産総研)は9月末に新型のヒューマノイド(人間型)ロボット「HRP-5P」を公開。石膏ボードやコンパネを扱えるパワーを持ち、人の役に立つロボットとすることを目指している。いっぽう11月にはGoogleの持ち株会社Alphabetが2013年に買収した日本の二足歩行ロボットベンチャー「SCHAFT」グループを解散すると報じられた。ソフトバンクが買収していなかったことも含めて、業界には驚きをもって受け止められた。



【次ページ】介護・医療・農業・飲食・教育・コミュニケーションなど各種ロボット事例

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