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  • 2019/05/16

「コンタクトレンズ」戦線のゆくえ、国産メーカーを復権へ導く“4つのカギ”

新年度が始まる春先は新入学や新社会人、引っ越しなど多くの人の環境が変化する。そうした中、「気分を一新する」「イメージチェンジをする」という意味合いを込めて、メガネからコンタクトレンズに変える人が多い。春という季節はメガネやコンタクトレンズが1年で最も売れる時期だ。日本のコンタクトレンズ市場は右肩上がりの成長を続けており、「コンタクトレンズ好きな国民」ともいわれていることをご存じだろうか。なぜ、日本人はそれほどコンタクトレンズが好きなのか?同市場の推移やシリコンハイドロゲル、ビューティレンズ、スマートコンタクトレンズなど最新トレンドなどを踏まえて考察してみる。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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コンタクトレンズは令和に入り、どのように変化するのか

(Photo/Getty Images)

世界第2位の市場規模を誇る、日本のコンタクトレンズ市場

 角膜に接触(コンタクト)させて使用するレンズであるコンタクトレンズ。角膜の保護や視力の矯正だけでなく、最近では目の色や模様、形を変えるファッション用途にも用いられている。その発想自体はルネサンス時代までさかのぼるともいわれるほど歴史は古い。日本では1951年に、メニコンの創業者である田中恭一氏が国内初の角膜コンタクトレンズの実用化に成功したとされている。

 メガネよりも自然に近い見え方が得られることや美容的な観点から、コンタクトレンズは若者を中心に広く受け入れられてきた。過去30年間で国内の市場規模が4倍以上に拡大している「平成のロングセラー商品」でもある。

 一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会によると、コンタクトレンズとそのケア用品を合わせた国内市場規模(出荷額)は2009年は2048億円だったが、2017年は2564億円となり、ほぼ右肩上がりで伸び続けている。

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コンタクトレンズとそのケア用品の市場規模の推移
(出典:日本コンタクトレンズ協会)

 コンタクトレンズの世界市場は約1兆円(日本円換算)とされ、日本の市場規模は米国に次ぐ世界第2位となっており、世界シェアのほぼ25%を占める。国内のコンタクトレンズ使用者は、人口が10倍以上もある中国やインドよりも多く、日本人は世界有数の「コンタクト好き国民」だといえる。

使い捨てコンタクトレンズが市場成長をけん引

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 コンタクトレンズは、レンズ素材によって「ハードコンタクトレンズ」「ソフトコンタクトレンズ」に分類される。また、使い捨てコンタクトは、レンズ交換スケジュールによって「1日使い捨て」「2週間使い捨て」「1カ月使い捨て」などにも分けることができる。

 ハードコンタクトレンズは、日本では1970年ごろに普及した最も古いタイプだ。硬質素材を用いており、約2~3年使用できる。その後に登場したソフトコンタクトレンズは、柔らかい素材を採用して約1年~1年半使用できるタイプだ。使い捨てコンタクトレンズは、1990年代に世界的に利用され始めている。

 市場成長のきっかけは、1991年(平成3年)に国内認可された「使い捨てコンタクトレンズ」だといわれている。日本コンタクトレンズ協会の出荷額集計によると、使い捨てコンタクトレンズの金額シェアは2017年には、コンタクトレンズ全体の94%にも達している。特に「1日使い捨て(ワンデー)」タイプは洗浄、消毒など毎日のケアが不要であるため、外出やスポーツの時にだけ使うこともできて手軽で便利だと重宝されている。今や使い捨てタイプの定番商品になっている。

 コンタクトレンズは2005年4月の薬事法改正で、透析器や人工骨、人工呼吸器などと同様の「高度管理医療機器」に指定された。購入の際、眼科医による検査と処方せん(正確には「装着指示書」)の交付は、法律で義務づけられているわけではない。度数が分かっていれば購入できるため2018年時点でインターネット販売の金額構成比(シェア)は27%まで伸びている(GfKジャパン「2018年コンタクトレンズ市場動向」)。ただし、メーカーや販売店の大半が強く推奨していることもあり、初めて装用する人の大部分が検査や処方せんの交付(検査を実施するのは眼科医)を受けている。

国産メーカーを復権へと導く4つのカギ

 使い捨てコンタクトレンズは、ボシュロム、J&J(ジョンソン&ジョンソン)などの海外メーカー勢が日本市場に投入したことで普及した。市場規模の拡大のきっかけをつくったが、使い捨てタイプのシェアがどんどん拡大するにつれて、海外メーカーの市場シェアは拡大傾向となり、日本のコンタクト産業は「約1600億円の“輸入超過産業”」になった。

 国産メーカーのシードが矢野経済研究所の調査を基に推計したメーカー別国内シェアによると、国産勢のシェアは1992年には81%を占めていた。しかし、2016年には35%まで低下している。現在トップシェアのJ&Jと、アルコン(日本アルコン)、クーパービジョン、ボシュロムという世界的にも主要な4社のシェアは実に62%にも及ぶ。

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国内コンタクトレンズ市場メーカー別シェア/1992年、2016年

(出典:矢野経済研究所ベース、シード推計)

 それでも国産メーカーのシェアは20%前後から回復を見せている。新商品開発や新市場開拓の努力が功を奏し始めたことがその理由だ。具体的には、4つの要因が海外メーカーの高いシェアを押し戻す「国産メーカー復権」に寄与している。それぞれについて、以下で詳しく見ていこう。

(1)使い捨てタイプ「シリコンハイドロゲルレンズ」の戦略的展開

 シリコンハイドロゲルレンズとは、次世代素材「シリコンハイドロゲル」を採用した使い捨てコンタクトレンズのことだ。従来の使い捨てコンタクトより酸素透過性が高く、目にかかる負担が小さくなる、いわゆる「目に優しい」という特徴がある。価格は従来型より高いものの、GfKジャパンの「2018年コンタクトレンズ市場動向」によると、日本市場でのシリコンハイドロゲルレンズの市場規模は、2017年から2018年にかけて金額ベースで11%増と2桁成長を見せている。

 同調査によると、シリコンハイドロゲルレンズはすでに国内シェアで38%を占め、「2週間交換」タイプでは77%、「1日使い捨て」タイプでも25%のシェアを取っている。

 このシリコンハイドロゲルレンズ分野で実績を積んでいるのが、かつては国内市場の3分の1のシェアを誇り、現在はJ&J(33%)に次ぐ第2位のシェア(19%)を有するメニコンである。

 同社の主力商品はハード、ソフトの長期使用型コンタクトとそのケア用品だった。使い捨てコンタクトはシンガポールで生産していたものの、海外メーカーに対して完全に出遅れていた。

 そこで2015年12月、稼働を開始した岐阜県の各務原新工場では生産品目を「シリコンハイドロゲルの使い捨てタイプ」に絞って、新ブランド「プレミオ」を立ち上げた。その生産ラインを増設して年間産能力を4000万枚、8000万枚、1億2000万枚と逐次増強している。

 この生産増強投資によって、シリコンハイドロゲルの使い捨てコンタクトは今や同社の主力商品の一つになった。各務原工場では2020年春までに生産ラインを3本から15本に増設し、輸出も想定して使い捨てタイプの生産能力を年産5億枚以上に引き上げるという新たな増産投資が始まっている。

 また販売面でも、2001年に開始した月額定額制サービス「メルスプラン」が順調に会員を伸ばしている。このサービスは顧客の長期囲い込みで業績に貢献しているといい、現在の会員数は130万人以上だ。

 メルスプランは入会金や月会費、ケア用品代などで構成され、コンタクトレンズが汚れたり破損したら何枚でも取り換えができるという、最近注目の「サブスクリプション・サービス」形態だ。もともとハード、ソフトの長期使用タイプを想定して始めたが、1日使い捨てタイプも入会金3,000円、月会費5,000円で利用でき、その会員数を伸ばしている。

【次ページ】ビューティー、ペット用、高齢者用、さらにIoTにも対応?

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