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  • 2019/03/27

これからずっと選ばれ続けるロボットの条件とは ロボットサービス事業を問い直す

Robotics as a Service、通称RaaSと呼ばれるビジネスモデルが注目されはじめている。これまではあまり考えていなかった人たちも、RaaS型ビジネスモデルについて考えざるを得ないと思い始めているようだ。RaaSはサービスとしてロボティクスを提供することだが、それだけにほかのサービスに乗り換えられやすいという課題もある。ずっと使い続けてもらうためには、ユーザーにメリットが積み重なっていくような仕組みをソリューションパッケージのなかに入れ込む必要がある。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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RaaS型ビジネスモデルについて、改めて考える
(©Coloures-Pic - Fotolia)


「RaaS」にどのように向き合うか

 「サービスとしての◯◯」という意味の「XaaS(X as a Service)」が注目されつつある。これまでインストール型パッケージとして提供されていたソフトウェアをネット経由で提供するサービスは「SaaS」。モビリティの場合は「MaaS」。そして、ロボットの場合は「RaaS」だ。

 メーカーは単にモノを作って終わりの売り切りで商売をするのではなく、「サービス」を提供する。ユーザーはサービスを利用したぶんの料金を払う。そのための情報処理はエッジ側でリアルタイム処理を行わなければならないようなものを除けば、パブリックかオンプレミスかは置いておいて、とにかくクラウド上のサーバで行われる。

 ユーザーは自分でハードウェア資産を持ったり保守をしたりする必要がない。「XaaS」の世界ではハードウェアはサービスを提供する器のようなものになる。ハードウェアそれ自体に価値があるわけではないというわけだ。ドリルを買いに来る客は穴が欲しいのであって本当に欲しいのはドリルではない、といった言い方があるが、それとも似ている。

 ロボットの場合は、必要なときに必要なぶんだけ顧客はロボットを使って、そのぶんの料金だけを支払う。人間の作業員の場合も繁忙期は増員するが、それと同様に、余分にロボットが必要な時期はその分を増員する。従来の固定設備としてのロボットメーカーの考え方とはだいぶ違う。最近の「協働ロボット」メーカーも基本的には固定設備的なメーカーの考え方を引きずっているので、このような方向へ頭を切り替えることは、なかなか難しいと感じている方々は少なくないだろう。

 そもそもロボットメーカーの場合は、独自のハードウェア機構や設計に強みを持っていると考えている人たちも多いだけに、なおさらだ。こんなことを言うと「いやいやロボットの核心は制御ソフトウェアですよ」という人たちの声が聞こえてくるが、そういう話ではない。「RaaS」の話は単体の先のビジネスのレイヤーの話なので、それとはまた別だ。

 「XaaS」というのはつまるところ、提供サービスを基準として、顧客に選ばれるにはどうすればいいかという話だと思う。この「XaaS」というものをどう捉えればいいのか、私自身もまだ、自分のなかでちゃんとした答えを持っていない。ただ言えるのは、単に一回だけ選ばれればいいという話ではない。それだけは確実だ。

 「XaaS」ではサービス提供が主体であって、ハードウェアはそのための手段だ。つまり、使い勝手の悪い「サービス」しか提供できないハードウェアなら、二度目は選ばれず、ほかのサービスにパッと乗り変えられてしまう。そもそもハードウェア自体も顧客は購入しないのだから、乗り換えの敷居も低い。ということは、選ばれ続けるサービスを提供することこそが、「XaaS」の世界においては何よりも重要だということになる。

顧客利益を積み重ねることができるサービスだけが選ばれ続ける

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 ではロボットを活用する「RaaS」において、選ばれ続けるサービスとはどういうものだろうか。どう考えればいいのだろうか。おそらくその答えは、一言でいうと「積み重なる」ことにあると思う。使い続けることで、どんどんユーザーの利益が積み重なり、結果的に、そのサービスから離脱できなくなる──。そんなサービスだ。

 一番わかりやすい例は、アマゾンの倉庫ロボットだ。棚の下に潜り込んで持ち上げ、棚ごと移動させるオレンジ色のロボットだ。アマゾンが2012年に7億7500万ドルで買収したKivaという会社のロボットである。

 アマゾンの物流ロボットは、モノを作業員の前に持ってくるロボットである。ロボットが持って来るので、作業員は目の前の棚から指示されるものを取ればいい。その結果、作業員は倉庫のなかを歩き回る必要がなくなり、作業員の作業は(少なくとも経営者から見れば)最適化された。アマゾンのロボットは並列で働き、ピックアップする作業員はそれぞれ独立で動いている。コンベヤーのように直列で作業しているわけではないので、どこかが止まったところで詰まることはない。ここまでがよく言われている話だが、これだけがあのロボットの価値ではない。

 一番の特徴は、倉庫であのロボットを動かせば動かすほど、在庫がソートされ、最適化されるという点にある。よく出るものは手前に、あまり出ないものは奥に。さらにこの仕組みはスケーラブルで、大きくしても問題なく働く。群ロボットによるこの恩恵が、単体ロボットの単純な機能の上に積み重なっている。

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 以前も紹介したが、この話は、「TED」の講演でKiva創業者のミック・マウンツ氏自身がコンパクトにまとめて話しているのでそちらをご覧いただきたい。

 似たロボットシステムは、今あちこちの倉庫で使われはじめている。いずれもポイントはロボットを群で使い、業務を最適化するための管理ソフトウェアにある。このようなロボットを使い始めると、顧客はもう、ロボットを使わなかったときのやり方には戻れなくなる。単に、日々の便利が積み重なるだけではなくて、使えば使うほど業務が最適化していくからだ。しかもその結果は、もちろん、経営判断にも用いることができる貴重なデータでもある。

 物理空間で活動するロボットは作業するワーカーであると同時にデータを集めるセンサーでもある。それを上位の制御ソフトウェアでまとめることで、本当に価値のあるシステムとなる。たぶん、RaaSとはこういうものではないかと思う。

 もちろん、物流倉庫だけではない。たとえば掃除ロボットならば、掃除ロボットを日々動かすことで清掃品質を定量化できる。やがて、どこが汚れやすいのか、あるいは逆にどこはそんなに大して汚れないのかがわかって来る。それは何故なのかと考えることもできるし、それを元に人の動線を考え直すこともできるだろう。空調機器と連携させたりすることで、エネルギー消費を最適化することもできるかもしれない。

 あるいは昨今、徐々に注目されている調理ロボットなど厨房で動くロボットもそうだ。稼働させるに連れて、従来はとれていなかったデータが取得できるようになるだろうし、来客する前に、自動で仕込み始めるといったようなことも将来は可能になるだろう。また客側からもロボットの稼働状況などをネット越しに見られるようになれば、そこからどの程度店が混んでいるかといったこともわかるようになるだろう。

 また、農業ロボットなども同じだろう。今はまだ夢物語だが、本当にさまざまな機器が連携し始める時代になれば、さまざまな変化が考えられる。将来を考えたいのであれば、ある程度は考え始めておく必要がある。

【次ページ】今のサービスロボットの多くに“決定的に”欠けている価値

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