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- 2019/07/04 掲載
ローコードや高耐久性デバイスなど、ガートナーが選ぶ重要モバイル技術10選
この先3年はエンドポイント技術が重要になる
シルバ氏は最初に、「あらゆる企業に10の技術すべてが重要かというと、そうではないかもしれない。ただ、これら10の技術によって、今後、ユーザーとITのインタラクションや仕事の仕方が変わってくるはずだ」と話した。ガートナーは、2023年までに新規デバイス/ウェアラブルへの投資の40%が、デジタル・ビジネスの成果に向けて推進されるようになると予測している。「中でもエンドポイント技術がかなり重要」とシルバ氏は強調した。
10の技術は、その性格から「基盤的」「漸増的」「変革的」の3つにカテゴライズされる。「基盤的」な技術とは、ビジネスがデジタルの未来へと移行する上で基盤となる技術のことで、ほとんどの企業に何らかの影響を及ぼすと考えられる。
「漸増的」な技術とは、すでに行っている業務・タスクをより効率よくできるようにする技術のことだ。そして「変革的」な技術とは、これまでの延長線上にないまったく新しい技術のこと。ただし、遠い将来ではなく、早ければ1~5年後には企業のビジネスにも影響を及ぼしうる技術である。
基盤的 | ローコード/ノーコードのモバイル・アプリケーション開発ツール 接続性の向上と標準化 モバイル・セキュリティの複雑化 |
漸増的 | イメージ/ビデオ処理 ウェアラブル・テクノロジーの成熟 モバイル・アナリティクス/評価指標/モニタリング 次世代の高耐久性デバイス |
変革的 | 高度なモバイルUX設計 拡張現実/仮想現実 現場スタッフ向けのテクノロジー |
基盤的技術
(1)モバイル・セキュリティの複雑化これまでのセキュリティは、デバイスの設定(コンフィギュレーション)、ユーザーは誰か、ネットワークにどうつながっているのか、デバイス上のアプリケーションの状態までもが把握され、確実にコントロールできる前提で運用されてきた。セキュリティポリシーを設定し、承認された者だけが使えるようにしていたからだ。
しかし、モバイルデバイスやプラットフォームが増え、複数の標準に準拠するIoTが台頭してきた現在、エンドポイントは多様化し、セキュリティの定義、もしくはコントロールの定義の再考が迫られている。
そこで最近は、セキュリティのためのコントロール対象が「ハードウェア」から「振る舞い」にシフトしつつある。ネットワーク上のハードウェア、アプリケーション間の境界がなくなっている現実に対し、不正な振る舞いを阻止するプロアクティブなセキュリティツールが求められている。
(2)ローコード/ノーコードのモバイル・アプリケーション開発ツール
これまでIT部門は、プロジェクトの優先順位や予算・リソースの配分を議論してきた。しかし、ローコード/ノーコード開発ツールの採用により、IT部門は基本的なプロダクトを開発して渡した後は、ビジネス部門の現場が自ら機能を拡張することが可能になる。
ガートナーでは、ローコードアプリケーション開発は、2024年までにアプリケーション開発全体の65%以上を占めると予測している。
開発するアプリケーションが大規模で複雑になるほど、ローコード/ノーコードの開発ツールは適さないが、ワークグループレベルで現場社員ごとの状況に合わせて作るアプリケーションの開発は、そのグループメンバー自身が行うほうがよい。そのような環境ではローコード/ノーコードの開発ツールが力を発揮するはずだ。
(3)接続性の向上と標準化
5Gは、一般向けメディア報道でも持ちきりだ。しかし5Gも含め、新しいワイヤレスLANの標準規格802.11AC Wave 2や802.11az、NB(ナローバンド)IoTのような技術は、IT部門が所有し、理解しなければならない部分である。ただ、これらの相互接続性を改善するためには、一段上のレイヤーでネットワークの標準化が求められるところであり、そのほうがコストも下がるし、ユーザーに対しても柔軟性を提供できる。
ガートナーの予測では、2022年までにモバイル・データの代替標準または非標準の周波数帯域で始められたIoTイニシアティブの50%は、コストや信頼性の問題が原因で、標準周波数を使用するNB-IoTのイニシアティブに置き替わるとしている。標準周波数を利用するほうがスケールメリットが生まれ、持続性のあるエコシステムができるからだ。
「ただし、この標準化の進捗はガートナーの予測よりも遅れている。接続性の需要のほうが標準化の需要よりも大きく早いのだろう。あるいは、標準化されていないものを使うほうが、ビジネス観点では正当化できるのかもしれない」とシルバ氏は補足した。
漸増的技術
(1)モバイル・アナリティクス/評価指標/モニタリングほとんどの企業はモバイルデバイス管理(MDM)ツールなどを使ってデバイスの動きを追跡し、毎秒さまざまなデータを集めている。しかし、マイニングがまったくされていないとシルバ氏は指摘する。
モバイルデバイスから集めたデータのアナリティクスには、主に3つの用途がある。1つ目は、ユーザーの位置情報や特性、いつどこで何に対するニーズが生じているかを探る「市場アナリティクス」。2つ目は、デバイスやアプリケーション自体がどのように、あるいはどの程度使われているかといった「挙動アナリティクス」。3つ目は、デバイスやアプリケーションの性能が発揮できているかを測るための「運用アナリティクス」だ。
データをただ集めただけでは宝の持ち腐れだ。アナリティクスがあってこそ、ビジネス面でも開発面でも、次の投資が決められる。有用かつ専門性の高いモバイル・アナリティクスツールの登場が待たれるところだ。
【次ページ】ウェアラブル、高耐久性デバイス、高度なモバイルUX設計など
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