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  • 2019/10/03 掲載

不動産にトークンやスマートコントラクトを応用、海外の不動産×ブロックチェーン事情

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不動産業界はIT化やテクノロジー活用が他業界より遅れていると言われるが、ブロックチェーンに関しては実はそれほど遅れているわけではない。不動産の商習慣や特殊性をこれまでのテクノロジーでは解決できなかったが、ブロックチェーンであれば解決してくれるだろうとの期待もある。本稿では、国外のニュースや事例に注目して不動産×ブロックチェーンの可能性を探る。

リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸

リマールエステート 代表取締役CEO 赤木正幸

リマールエステート株式会社 代表取締役社長CEO。一般社団法人不動産テック協会 代表理事。 森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方特化Jリートの上場に参画。太陽光事業会社CFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。アセットクロージング実績は不動産や太陽光等にて3,500億円以上。2016年に不動産テックのリーディングカンパニーであるリマールエステートを起業。不動産実務のプロが不動産売買DXを実現するために、不動産売買プラットフォーム「キマール」を開発。また、日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに「不動産テック案内所」によって不動産テック情報を発信。不動産テックセミナーやイベントに多数登壇するほか、不動産会社やIT企業に対して不動産DXコンサル、システム開発コンサルを実施。さらに、海外不動産テック企業へのアドバイザリーやパートナーシップ等、活動は日本に留まらない。2018年に一般社団法人不動産テック協会を設立し代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士(MBA)を取得、政治学博士修了。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。

画像
8つのニュース、10の事例から海外の動向を知る
(Photo/Getty Images)


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不動産ブロックチェーン、8つの国外トピックス

 まず、2019年に入って報道された海外での不動産×ブロックチェーンに関する主なトピックスを紹介しよう。

  1. 中国銀行(Bank of China)が不動産ブロックチェーンプラットフォームに参加(2019年2月)
  2.  不動産ディベロッパーである新世界発展(New World Development)と香港応用科学技術研究所(ASTRI)は、共同で住宅購入者向けのブロックチェーンプラットフォームを設立。中国銀行(Bank of China)が銀行で最初のユーザーとなった。このプラットフォームは売買契約書や住宅ローン申請書への署名などの書類業務をデジタル認証に置き換えることを目的としている。

  3. スイスで初めてブロックチェーンを使った不動産取引を完了(2019年3月)
  4.  ブロックチェーン不動産取引プラットフォームのブロッキモ(blockimmo)は、ほか2社と共同でブロックチェーンを用いた不動産取引を完了した。住居18件とレストラン1件の300万スイスフランの不動産取引を、トークン化したうえでブロックチェーンベースで実施。

  5. 世界初の仮想通貨決済によるオンライン不動産オークションが開催(2019年4月)
  6.  ジェームズプラットオークション(James Pratt Auctions)によって、ビットコインとバイナンスコインで支払いが可能な不動産オークションが開催され、東オーストラリアのリゾート施設が競売にかけられた。参加者は、アジア、米国、中国にいたった。

  7. イギリスの2大銀行であるバークレイズ銀行とスコットランド王立銀行が、ブロックチェーンを用いた不動産購入実験に参加(2019年4月)
  8.  バークレイズ銀行(Barclays)とスコットランド王立銀行(RBS)は、ブロックチェーンを用いた不動産購入の合理化実験に参加。ブロックチェーンが、顧客にとって不動産購入が複雑で困難な手続きであることを変え、安価で透明性の高いものにすると考えている。

  9. ブロックチェーンを活用した住宅ローンサービスの提供が開始(2019年5月)
  10.  Fintechスタートアップ、フルイディティ(Fluidity)は、ニューヨークとカリフォルニアで、ブロックチェーンを用いた住宅ローンサービスを展開する。不動産をトークン化して担保とし、リーズナブルな金利でローンを貸し出す。

  11. 全米不動産業者協会がブロックチェーン不動産プラットフォーム開発会社のPROPYに出資(2019年6月)
  12.  全米不動産業者協会はセコンド・センチュリー・ベンチャーズ(Second Century Ventures)を通じて、2019年2月に立ちあがった事業用不動産向けのアクセラレータプログラムであるREachの一環としてプロピー(PROPY)に出資。プロピーはブロックチェーンを活用し不動産のスマートコントラクト化を進める企業である。

  13. ドバイ国土庁と、アラブ首長国連邦最大の通信会社が、不動産分野へのブロックチェーン技術活用に向けた覚書に調印(2019年6月)
  14.  スマート政府としてペーパーレス管理とデジタル契約を導入し、ドバイ国土庁のEjariという賃借権利関係を登録するアプリケーションにエミレーツ・テレコミュニケーションズ(Etisalat)を接続しブロックチェーン戦略を展開することを目指す。登録と検証のプロセスを改善し、関係者全員の安全を守りながら取引をスピードアップする目標を掲げている。

  15. マルタ共和国で不動産賃貸契約のブロックチェーン管理を法制化(2019年6月)
  16.  ブロックチェーン島として知られているマルタで、Joseph Muscat首相が、「国内の賃貸借法を改正し、すべての不動産賃貸契約をブロックチェーンに記録する」と発表した。

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「不動産のトークン化」5つの海外事例

 不動産のトークン化とは、不動産の所有権となるトークン(独自仮想通貨)をブロックチェーン上に発行することを指す。不動産ブロックチェーンにおいては、不動産を小口化しそれぞれの小口所有権をブロックチェーンによって証明するトークンを発行することが多い。

 不動産をトークン化することのメリットとして、まず小口化によって最低購入価格が下がり不動産取引が行いやすくなるという流動性の向上がある。また、取引自体がブロックチェーンに記録され改ざんリスクを削減でき不正防止のための監査コストや信用を担保するための中間業者を排除し、取引コストを削減することもできる。

 現状の不動産トークン化においては、不動産のトークン化を実現できるプラットフォームを提供することで、新しい時代の不動産取引の中心軸になることを目指すものが多い。

  1. Harbor
  2. 会社名:ハーバープラットフォーム
    本社場所:米国(サンフランシスコ)
    設立年:2017年

     実物不動産や不動産投資信託をセキュリティトークン化し、流通させるプラットフォームを提供する。流動性が低く流通のために不動産業者の手を介する必要のあった不動産を、ブロックチェーンの技術によって流動性と透明性を高めようとしている。

     イーサリアムのERC20プロトコルを使い、スマートコントラクト機能を実装したR-Tokenを開発し、このトークンに不動産の契約情報や所有権等を載せて流通させる。すでに販売されたセキュリティトークンとしては、サウスカロライナ大学の学生寮をトークン化している。

     ユーザーが簡単に不動産関連のセキュリティトークンを発行できるプラットフォームも開発提供しており、オンラインでトークン情報を管理できる。米国証券取引委員会の基準を満たした証券とすることを目指しているが、このようなトークン化された不動産証券を売買することに関する法制度が存在しないため、当局を交えた調整が行われている。

    https://harbor.com

  3. ATLANT
  4. 会社名:テンシグマ
    本社場所:イギリス
    設立年:2017年


     不動産所有権と不動産賃借権のトークン化と、不動産賃貸のスマートコントラクト化を目指している。

     ユーザーが不動産を登録すると、ATLANTサイドで物件がトークン化条件を満たしているかを確認するとともに、弁護士等の専門家が不動産と抵当権の状況を確認する。

     トークン化してプロパティトークンオファリング(PTO)によって世界中の投資家に販売し、不動産所有者は販売代金を取得することも可能となる。トークン保有者は所有割合に応じて賃貸収入に基づく配当を取得。トークンの価格は不動産価格に連動して変わる。

     不動産賃貸のP2P取引プラットフォームを構築し、不動産オーナーとテナントが、不動産業者の仲介を不要とする賃貸取引を提供している。仲介手数料を低く抑えるとともに、スマートコントラクトも可能とする。

    https://atlant.io

  5. Meridio
  6. 会社名:コンセンシス
    会社場所:米国(ニューヨーク)
    設立年:2016年


     事業用不動産の所有者が、ブロックチェーンで不動産を小口化し、トークン化した不動産持ち分を売却できるプラットフォームを提供している。

     Ethereumブロックチェーン上に構築されたプラットフォームが契約を自動化し、スマートコントラクトによって投資家と資産所有者をシームレスに結びつけて、投資と取引を実現する。配当金の支払いもブロックチェーンに記録され、会計や税金等の処理が会計ツールを使用して自動化できる。

     実際に、ニューヨークブルックリンの家をトークン化し複数の投資家に売却した。ブロックチェーンコミュニティ、Crypto NYCとの提携により、ブロックチェーン不動産リースサービスであるreLeaseを提供し、誰でも簡単にワークスペースを収益化でき、予約と同時にイーサリアムで支払われる。

    https://www.meridio.co

  7. BitOfProperty
  8. 会社名: ビットオブプロパティー
    本社場所:シンガポール
    設立年:2017年


     ブロックチェーンベースの不動産投資プラットフォームを提供するとともに、不動産の所有権をトークン化している。これにより、国際投資の透明性と流動性が高まり、不動産市場の分散化が進む。

     投資家は、クラウドファンディングによって収益不動産の所有権を表すBITSを購入することで不動産に投資することができ、毎月の家賃収入を得るとともに、投資金額に比例して不動産価格の上昇利益を得る。

     不動産小口投資のプラットフォームを構築し、投資物件のソーシングから物件管理業務、投資家に対するレポート業務までを一気通貫で行うことが可能となる。2018年5月にライフル(LIFULL)が出資している。

    https://www.bitofproperty.com

  9. Blocksquare
  10. 会社名:ブロックスクエア
    本社場所:スロベニア
    設立年:2017年

     ブロックチェーンを活用した事業用不動産のトークン化によって、個人投資家にも投資機会を提供している。

     不動産会社は、トークン化された不動産投資取引をWebサイトで直接作成して提供することが可能であり、最大100人の購入者に不動産資産を販売できる。

     スマートコントラクトによって、登記情報を記録し所有権を安全に記録するとともに、トークン保有者は家賃を配当として受け取ることができる。

     ブロックスクエアはヨーロッパのTOP50 PropTechスタートアップ企業に選出されている。


https://blocksquare.io/

【次ページ】「不動産取引のスマートコントラクト化」5つの海外事例

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